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このページは、アストリッド・リンドグレーンの本の感想のページです。

「長くつ下のピッピ-世界一つよい女の子」岩波少年文庫(2009年10月再読)★★★★★

スウェーデンの小さな町のはずれの草ぼうぼうの古い庭に、「ごたごた荘」という名前の古い家が建っていました。その家に住んでいるのは、ピッピ・ナガクツシタという名前の女の子。9歳なのにお父さんもお母さんもなく、たった一人で住んでいるのです。一緒に住んでいるのは、船乗りだったお父さんにもらったサルの「ニルソン氏」、そしてこの家に来てすぐ金貨で買った馬一頭。ごたごた荘の隣の家には、トミーとアンニカという男の子と女の子が住んでおり、3人はすぐに仲良くなります。(「PIPPI LANGSTRUMP」大塚勇三訳)

子供の頃でも、ピッピのような破天荒な女の子が実際にいたらさぞかし大変だろうと思いながら読んでいた覚えがあるので、大人になった今読み返したら、おそらくピッピに苦笑させられてしまうのではないか、それどころかピッピが痛々しく感じられてしまうかもしれないと心配していたのですが、杞憂でした。ピッピは子供の頃に読んだ時と同じく、明るく楽しく可愛くて、むしろ大人になった今の方が楽しめたような気がします。ピッピが生み出す様々な遊びも本当に楽しそう。「もの発見家」になるのも、木の上でお茶をして、その木の大きなうろの中に入ってみたりするのも、読んでいるだけでワクワクしてきますし、遠足やパーティーで出てくるピッピの手作りのご馳走も美味しそう。床の上にショウガ入りクッキーの生地を伸ばすのや、誕生日のパーティのテーブルの上をテーブルクロスごと片付けてしまうのは、冷静に考えればかなり困った状態になるはずなのですが、それでもやはり魅力的。
何者にも束縛されずに自由気儘に生き、「大人」が象徴する体制的な社会に反抗しながら生きているピッピですが、それは自分で自分に責任を持って毎日を送っているからこそです。もちろんその基本となっているのは、ピッピのお父さんが残してくれた家と金貨であり、ピッピだけの力で生きているというわけではないのですが…。
私自身が子供の頃にこの本を読んでいた時、羨ましかったのはピッピ自身よりもアンニカ。気質的にもアンニカに一番近かったですし、何といってもアンニカなら、ピッピの近くの一番いい位置でトミーと一緒に楽しんでいられます。常識的で少し臆病なところもあるアンニカにとって、ピッピは新しい世界に通じる扉のようなものだったはず。そして子供の頃に一番羨ましかったのは、ピッピの家の居間にある大きなタンス。このタンスには小さな引き出しが沢山あり、その引き出しにはピッピがお父さんと一緒に世界中をまわった時に買った宝物が沢山詰まっているのです。何かの折にピッピがトミーとアンニカにプレゼントする物もとても素敵で羨ましくて仕方なかったものですが、今読んでもやはり羨ましくなってしまいます。


「ピッピ船にのる」岩波少年文庫(2009年10月再読)★★★★

ある春の日のこと、トミーとアンニカに起こされたピッピは2人と一緒に町へ出かけることに。ピッピはスーツケースの中から金貨をひとつかみ握り取ると、前掛けの前についているポケットに突っ込み、用意ができると早速出発します。(「PIPPI LANGSTRUMP GAR OMBORD」大塚勇三訳)

長くつ下のピッピのシリーズ第2弾。
いつでも力強いピッピですが、今回はいじめっ子や乱暴者をやっつける「弱きを助け強きをくじく」ピッピ像が強調されているようです。「長くつ下のピッピ」でも火事の家から子供たちを救いだして英雄になっていますが、この時のピッピは火事の恐ろしさ、少なくとも燃えている家に取り残された子供たちの感じている恐ろしさを実感しているわけではなく、ただ助けた方がいいと分かったから助けているだけ。トミーとアンニカに色々と贈り物をしていますが、その他の子供たちとはほとんど交渉がありませんでしたし、トミーとアンニカ以外の人間の気持ちを推し量ることもなかったように思います。しかし今回は2人以外の人々の気持ちを推し量ったり、ある程度周囲に気を使うことを覚えてきたようで、トミーとアンニカと難船した日も、実は2人の家に置手紙を残していますし、町に出かけた時も子供たちを喜ばせているのです。嘘ばかりついていたのに、それもある程度加減を覚えたよう。破天荒なピッピ像から、もっと多くの人に受け入れられやすいヒロイン像へと変化したのでしょうか。それともピッピ自身が成長したということなのでしょうか。


「ピッピ南の島へ」岩波少年文庫(2009年10月読了)★★★★

見物するような名所は民族博物館と古墳しかない小さな町。しかしその2つの名所への道しるべと一緒に「ごたごた荘へ」という道しるべも立てられていました。最近になってごたごた荘への道を聞く人がとても増えて、民族博物館や古墳への道を聞く人よりも多くなっていたのです。そしてある夏の日のこと、自動車を運転してこの町にやって来た1人の紳士が、道しるべを見てごたごた荘へ行ってみようと考えます。家を買いたい人に対する道案内のために立ててあるのだと考えたのです。(「PIPPI LANGSTRUMP I SODERHAVET」大塚勇三訳)

長くつ下のピッピのシリーズ第3弾。
「ピッピ船にのる」で徐々にいい人ぶりを見せ始めたピッピ。今回もまた少し変化しています。相変わらず破天荒なことをやり、ほら話ばかり話しているようでいて、実はラウラおばさんを励ますことができたのはピッピですし、トミーとアンニカのお母さんの信頼もいつの間にか勝ち得ています。そして自然体のピッピは、スウェーデンにいても、お父さんが王様をしているクレクレッド島にいても、いつも同じ。いつでもみんなの心を捕えて人気者になってしまいます。
しかしこの「南の島へ」は、一抹の寂しさを感じさせる幕引き。3人は永遠に子供時代が続くことを願って生命の丸薬を呑むのですが、やはりどこかで今のこの楽しい時代が終わりを告げようとしているのを感じとっているのですね。アンニカの「ピッピは、…ピッピは、なんだかさびしそうにみえるわね」という言葉、そして、ごたごた荘での楽しい計画を思い描きつつ、ピッピが自分たちの方を見ることを期待した2人の目の前で、ピッピはふっと火を消して…。楽しい冒険物語のラストとしては驚くような落差ですが、それもまたピッピたちの楽しい子供時代の終わりの予感を表しているのでしょうね。


「やかまし村の子どもたち」岩波少年文庫(2009年10月読了)★★★★

リーサはもうじき8つになる女の子。お父さんとお母さん、そして9歳のラッセと8歳のボッセという2人の兄さんがいます。リーサの住んでいる家は、やかまし村の中屋敷。やかまし村には他に北屋敷と南屋敷があり、北屋敷には9歳のブリッタと7歳のアンナという2人の女の子、そして南屋敷にはオッレという8歳の男の子がいます。(「ALLA VI BARN I BULIERBYN」大塚勇三訳)

やかまし村のシリーズ第1弾。
ほのぼのとした小さな農村を舞台にした、リーサとブリッタとアンナ、ラッセとボッセとオッレという6人の子供たちの物語が、リーサの視点で語られていきます。男の子と女の子の3人ずつに分かれることはあっても、6人の子供たちはいつでも一緒。ほとんどの出来事はやかまし村の中で起こりますし、そうでなければ学校のある大村。学校に通うのも6人一緒ですし、学校のない休みの間は、それこそ一日中一緒にいると言っていいほど。ラッセとボッセの部屋とオッレの部屋は菩提樹伝いに移動できるほどですし、女の子たちの部屋もお互いの部屋にかけ渡した紐にタバコの箱を伝わらせて、その中に手紙を入れてやりとりできるほどの近さ。ここにいるのは3つの家族ですが、親同士も仲が良いようですし、6人の子供たちはほとんど実の兄弟姉妹と言っていいほどです。一緒に秘密の隠れ家を作ってみたり、自分たちにしか分からない言葉で話してみたり、インディアンごっこをしてみたり… そんな日常の遊びの中に、カブラ抜きをしたり鶏の卵を集めたり、動物たちに餌をやったり、干し草の取り入れをしたりという家のお手伝いも入ってくるのですが、みんなでやればどれも楽しくて、遊びの延長といった感覚でしょうか。電話もテレビもない生活ですが、和やかなゆったりした空気が流れているのがとても心地よく感じられますし、本当にしみじみと幸せな日々です。
大人はほとんど登場しませが、北屋敷の「おじいさん」と学校の女の先生がとても素敵です。それ以外の大人たちも、子供たちを常に温かいまなざしで見守っています。ちょっぴり意地悪な靴屋のスネルさんですら、吹雪の日は当然のように子供たちを家に入れてくれるのですから。こんな温かい環境で育つ子供たちは、心の中まで豊かになるはず。本当に幸せ者だと思いますね。


「やかまし村の春・夏・秋・冬」岩波少年文庫(2009年10月読了)★★★★

やかまし村にいるのは、6人の子供たちとそのお父さんとお母さん、北屋敷の「おじいさん」と作男のカッレ、中屋敷の女中のアグダと作男のオスカル、そして南屋敷で数ヶ月前生まれたオッレの小さな妹。そしてオッレの犬のスヴィップや、猫のマルコルムとムッレとセッサン、ボッセのめんどりのアルベルティーナ、そして牛や馬、羊や豚、ウサギたちが沢山います。さて、やかまし村にクリスマスがやってくるのは、リーサたちがショウガ入りクッキーを焼く日。リーサとラッセとボッセは3人ともクッキー用のこね粉をひと山ずつもらい、それぞれのクッキーと、残ったこね粉を集めて優勝クッキーを1つ作ります。その優勝クッキーは、びんに詰めたエンドウ豆の数を一番うまく当てた人がもらえるのです。(「MERA OM OSS BARN I BULLERBYN」大塚勇三訳)

やかまし村のシリーズ第2弾。
やかまし村のクリスマスの準備に始まり、クリスマス、新年、そり遊びや湖でのスケート、雪合戦。春は四月のエイプリルフールや復活祭、そしてオッレの妹の誕生。そうこうするうちに夏になり、秋へ。その間、子供たちだけでお買いものに行ったり、夜こっそり家を抜け出して水の精を見に行ったり、宝探しをしたり、誰かを幸せにしようと頑張ってみたり。特に大事件が起きるわけではないのですが、相変わらずのほのぼのぶりで、読んでいるとこちらまで幸せになってしまうような物語。そしてこんな風に自然と一体になって、四季折々の季節の変化を思う存分に楽しみたくなってしまいます。
最後は、女の子の方がやはり精神的な成長が早いということなのかと思いましたが、どうなるのでしょうね。そしておじいさんには、まだまだ長生きしてもらいたいものです。


「やかまし村はいつもにぎやか」岩波少年文庫(2009年10月読了)★★★★

やかまし村に住むリーサは9歳。リーサのお母さんは、この村が「やかまし村」という名前になったのは、6人の子供たちがたった6人とは思えないほどの大騒ぎをするからだと言います。険しい坂道をいくつも上ったとても高いところにあるやかまし村からの眺めはとても素敵。辺りには広い広い森が広がっています。そしてこの森を眺めるためにやかまし村にやって来る人たちもいるのです。(「BARA ROLIGT I BULLERBYN」大塚勇三訳)

やかまし村のシリーズ第3弾。
ピッピのシリーズのあとがきでは、子供たちは小さな大人のようにきちんと躾けられているべきだという風潮があったと書かれていましたが、こちらの作品で会えるのは、本当に気持ち良いほど伸び伸びと育っている子供たち。怒られる場面がほとんど書かれていないからでしょうか。アンナとリーサがオッレの小さな妹・ケルスティンの世話をする時に「子どものせわなんて、ちっともむずかしくないわ。いつでも、やさしく、したしげにはなしてやるのを、わすれなけりゃいいの。そうすりゃ、子どもはいうことをきくのよ。このまえ、新聞にそう書いてあったわ」「ええ。やさしく、したしげにはなすなんて、あたりまえじゃないの」という会話をしています。「ところがね、子どもをしかりつけるっていうひとが、いるのよ。」「でも、そういうひとの子は、ほんとにひねくれちゃって、ちっともいうことをきかなくなるの。新聞には、そうでてたのよ!」…結局自分のやりたい放題にするケルスティン相手に、2人は相当の忍耐力を試されることになるのですが。やはりこの場合、大人側の包容力の大きさというのも大いにものを言いますね。6人の子供たちがどれほど騒いでも、どれほど悪戯をしても、どれほど遊んでばかりいても、細かいことにいちいち目くじらを立てずに、大きな心で見守っていてくれるからこそ、6人も真っ直ぐすくすくと大きくなっているのでしょう。
このシリーズはここで終わりですが、6人のその後を想像するのも楽しいです。女の子たちは自分の将来をすっかり決めていたようですが、果たしてこの中でカップルは誕生したのでしょうか。いずれにせよ、きっとそれぞれに自分たちが育ったような素敵な家庭を築いていったのでしょうね。素敵ですね。


「名探偵カッレくん」岩波少年文庫(2009年10月再読)★★★★★お気に入り

14歳のカッレ・ブルムクヴィストは名探偵に憧れ、ロンドンの貧民窟やシカゴの暗黒街に生まれたかったと思っている少年。日々怪しい人物をチェックし、町の治安を守るために 見回りを欠かさず、空想の中で「探偵ブルムクヴィスト」になっては、いっぱしの名探偵ぶって「架空の聞き手」相手に捜査や推理の基本を語ってきかせています。しかし実際には、カッレは小さな町の食料品店の1人息子。カッレが住む平和な町では、せいぜい土曜日の晩に酔っぱらった「足のフリードリク」が警察の檻の中で過ごす程度。殺人事件など望むべくもないのです。そして夏休み。遊び仲間の靴屋の息子のアンデスと、パン屋の娘のエーヴァ・ロッタと一緒に毎日のように遊びまわっているカッレの前に現れたのは、エーヴァ・ロッタのお母さんの弟だというエイナルおじさん。エイナルおじさんはエーヴァ・ロッタの家にしばらく滞在することになり、何かといえばカッレたち3人につきまとうようになるのですが...。(「MASTERDETEKTIVEN BLOMKVIST」尾崎義訳)

名探偵カッレくんのシリーズ第1弾。
子供の頃の私にとって、リンドグレーンといえば、まずこのカッレくんのシリーズ。もう何度読んだか分からないぐらい大好きなシリーズでした。ピッピのシリーズも確かに楽しいのですが、破天荒で突拍子のないことをしてばかりのピッピよりも、この3人の方が好き。こちらの物語の方が現実味があり、身近な存在に感じられたからかもしれません。このシリーズを最初に読んだのは、多分小学校3年生の頃なので、14歳のカッレたち3人の方が、9歳のピッピよりも大人っぽく感じられたというのも大きいかもしれません。
ケストナーの「エーミールと探偵たち」はもう読んでたかもしれないのですが、この作品を初めて読んだのは、ホームズやルパンを読むようになる前。「探偵」という存在にもあまり馴染んでいなかった頃。カッレくんが憧れるエルキュール・ポワロやピーター・ウィムジィ卿の存在も知らなかったですし(アスビョーン・クラーグは未だに知らないのですが)、バラ戦争ももちろん初耳。しかしカッレたち3人の「白バラ軍」と、それに敵対する「赤バラ軍」のバラ戦争にも、「いく千いく万の人命は、死と死の暗夜に落ちてゆくであろう」という言葉にも本当にワクワクしましたし(この言葉は、今読んでも本当にかっこいいです)、昼間の冒険はもちろんのこと、夜中にこっそり家を抜け出しての冒険にもドキドキしたものです。そしてエーヴァ・ロッタのパパがくれる甘パンの美味しそうなことといったら!
今回久しぶりにこの本を手に取ってみて、やはりとても面白かったです。このシリーズはやはり大好き。何度も読んだせいで展開も何もかも全て覚えてるというのに、童心に 戻ってワクワクしてしまいます。しかしそんな風にワクワクしつつも、早く名探偵になりたくて背伸びしてるカッレくんが、たまらなく可愛く感じられたりも…。自分が年を重ねた分、この辺りで受ける印象が少し変わりますね。大人たちが子供たちを見つめる温かいまなざしには子供時代にも気づいていましたが、今は一層そういった描写が目につくようです。一緒に白バラ軍に入って活躍したい(というかエーヴァ・ロッタになりたかった)と思っていた子供の頃とは違い、温かい目で見守る側になってる自分を再認識してしまいます。そして3人が現実の事件に触れることによって大人の世界を垣間見る場面では、ああ、1日でも長くこの幸せな時間を過ごさせてあげたい、などと思ってしまいます。


「カッレくんの冒険」岩波少年文庫(2009年11月再読)★★★★★お気に入り

赤バラ軍から宣戦布告状が届き、アンデスとエーヴァ・ロッタがカッレを迎えにやって来ます。探偵という職業に対してこれっぽっちも尊敬の念を払わない2人に溜息をつきながらも、カッレは2人と一緒に「大平原」へと繰り出します。しかし地主屋敷でカッレはエーヴァ・ロッタと部屋に閉じ込められ、アンデスは赤バラ軍に拉致されることに。(「MASTERDETEKTIVEN BLOMKVIST LEVER FARLIGT」尾崎義訳)

名探偵カッレくんのシリーズ第2弾。
1冊目ではそれほど前面に出て来てはいなかったバラ戦争ですが、この2冊目ではそれがまさに物語の中心となっています。仲がとてもいいのか、それとも犬猿の仲なのか掴み切れなかった赤バラ軍の3人が、白バラ軍の3人にとってとても大切な存在であることもよく分かる1冊。シックステンもベンカもユンテも、本当に気持ち良い男の子たちです。そしてバラ戦争に忙しい子供たちのすぐそばで起きた、現実の殺人事件。1冊目で宝石窃盗団の事件を解決しているカッレですが、まだまだ普通の少年。事件が起きて現場に行ってもビョルク巡査にまるで相手にされませんし、殺人事件の目撃者となり、ショックを受けて寝込んでしまったエーヴァ・ロッタの姿を見て、まだまだ子供にすぎないということを痛感させられます。
聖像という子供たちのごっこ遊びの道具が、一度ならず事件解決の思わぬ鍵となってしまうところも楽しいですし、現実の事件の合間には子供たちの冒険が盛りだくさん。カッレの探偵としての知識は、本物の事件でもバラ戦争でも活躍。そういうところも楽しいポイントですね。


「名探偵カッレとスパイ団」岩波少年文庫(2009年11月再読)★★★★★

赤バラ軍との戦争の真っ最中に白バラ軍の3人が出会ったのはラスムスという名前の5歳の男の子。ラスムスのお母さんは入院中で、お父さんは大学の先生。実は防弾軽金属という軍需工業の革命的な発明をしたスウェーデンの高名な学者でした。その晩、赤バラ軍との戦いの帰り道、3人はラスムス親子を何者かが拉致しようとしているのを目撃。エーヴァ・ロッタは誘拐犯の自動車にもぐり込み、カッレとアンデスはその自動車をバイクで追いかけます。(「KALLE BLOMKVIST OCH RASMUS」尾崎義訳)

名探偵カッレくんのシリーズ第3弾。
今回もバラ戦争から物語は始まるのですが、どちらかといえば、白バラ赤バラの面々よりも、エーヴァ・ロッタが見かけて話しかけたラスムスという5歳の男の子が中心。このラスムスのお父さんがとても重要な発明をしたため、産業スパイに狙われるという物語なのです。誘拐された彼らを助けようと奮闘する白バラ軍の面々ですが、ラスムスと人さらいの一味のニッケの友情物語となってしまっていることもありますし、赤バラ軍が活躍する余地があまりなかったというのも、残念な一因となっているのでしょうね。しかし、詳しく語られていないニッケのこれまでの人生をも思わず想像させてしまうリンドグレーンの筆力はさすがと言うべきでしょう。

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