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このページは、カミーユ・ロランスの本の感想のページです。

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「その腕のなかで」新潮クレスト・ブックス(2009年3月読了)★★★

カフェで見かけた男に運命を感じて、思わずその男の後をつけるカミーユ。男はある建物のポーチをくぐって姿を消し、カミーユが慌てて重々しいドアを押すと、もうアパルトマンのひとつに入った後でした。それは4階建ての瀟洒な建物。弁護士が1人いるほかは医療関係者ばかり。長女が最近しつこい風邪をひいたこともあり、カミーユはその中の小児科医・アマン・ドンブルの電話番号をメモし、1時間ほどその場で待った後、編集者との打ち合わせの場へと向かうことに。(「DANS CES BRAS-LA」吉田花子訳)

ある精神科医に言い寄りたくなった彼女がしたのは、人生で出会ったありとあらゆる男性のことを語ること…。103の断章で語られるのは、夫のことや父親のこと、母の愛人、歌手、祖父や大叔父、そしてこれまで出会った恋人たちのこと。今まで出会った男性のことをひたすら語り、そして小説に書き綴っていくうちに、語り手である女性の姿が浮き彫りになっていくという仕掛けのようです。この語り手はカミーユ・ロランスその人とは違うと序盤で書かれているのですが、やはりカミーユという名前の作家。フランスではオートフィクション(自伝風創作)が文芸の一ジャンルとして注目を集めているようで、これもそんな作品の1つなのですね。同種の作品の中でも、この作品は別格の高い評価を得ているそうなのですが… 男性のことだけでこれほどまでに語り続けられるのはすごいと思いますし、日記に書いたことを留守中に読まれるのを警戒して、小説や手紙、詩を写している体裁にするという部分のように面白く感じられた部分はあったものの、103の断章がまるで金太郎飴のように感じられてしまって、あまり面白く感じられなかったのが残念でした。

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