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このページは、マリア・ケンジョジーナの本の感想のページです。

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「美しいハンナ姫」岩波少年文庫(2009年6月読了)★★★★

【美しいハンナ姫】…優しくて賢くて逞しいハヌシ王子は、7つの山と7つの川を越えた向こうに世界で一番美しい姫がいると聞いて、早速求婚に向かうのですが、ハンナ姫は世界中の王子が求婚に訪れても顔をちらりと見るだけで、誰も気に入らなかったのです。
【盗人のクーバ】…お城の馬の番をしているコニャーレックは、6人の子持ち。王様が戦争に出かけてしまった後、世話する馬もなく、これ以上ないほど貧乏になってしまいます。
【王女さまの手箱】…お城で生まれた王女さまのために国中の人々が贈り物を持って城に向かいます。その中に1人立派な手箱を持ってきた人がいました。中には宝石がぎっしり入っていたのです。
【ヴォイテックの冬作物】…なまけもののヴォイテックは、両親からまあまあの家とかなりの畑を譲られるものの、まるで働こうとせず、何もかもをはした金で売って旅に出ることに。
【若かったわたし】…美しい村の美しい家々に挟まれた貧しい家にはペプルーラと呼ばれる後家が片足を引きずる犬のクシティックと住み、人々の親切を頼って生きていました。
【クーメリックの息子】…森の手前にある旅籠屋では、主人のクーメリックが色々な人1人1人を自分で出迎え、もてなしていました。そこに偉そうな司令官がやって来ます。(「ZA SIODMA GORA, ZA SIODMA RZEKA」足達和子訳)

ポーランドに古くから伝わる民話をモチーフにしたという6編の物語。
民話を元にしてるだけあり、どこかで読んだことがあるようなお話が多いのですが、どれも神を信じて地道に正直に日々働く人間が、最後に幸せになるというところで共通しています。そして生まれ持った性質や育ちがどうであれ、そういった人間に生まれ変わることは可能ということも共通していますね。美しいけどわがままなハンナ姫はもちろん(この話はグリムの「つぐみのひげの王さま」に似たような展開です)、いくらみんなに言われても全然働こうとせず、自分の馬に餌をやることも知らなかったヴォイテックも同様。若い頃に遊ぶことしか知らなかったペプルーラは、すっかり年を取ってしまった後に若い頃の怠け者の自分を目の当たりにさせられることになります。「ヘイ、若かったわたしは ヘイ、どこへ行った? ヘイ、川の向こうか、ヘイ、森にかくれてしまったか?」という歌が、楽しそうでもあり、物悲しくもあり...。
面白かったのは、正直に日々働きたいのに、極貧のために子供たちに食べさせることができないために、已む無く盗賊になるクーバの物語。盗みをするようにというお告げがあっても、何度同じお告げが繰り返されても、彼はぎりぎりまで盗人になることに抵抗します。しかも盗むのは結局パン1つだけ。しかし結果的には盗人になることによって、王さまや国を助けることになるのです。そして怖かったのは、生まれた時に、怪しげな男から宝石の詰まった手箱をもらい、日々それで遊びながら成長する王女さまの「王女さまの手箱」。美しい宝石に夢中になるというのはよくあることですが、宝石を所有するのはあくまでも人間のはず。完全に宝石に所有され、支配されているヤドヴィガ姫の姿が恐ろしいです。こういった話はトルストイのようですね。この話だけでなく、全体的にどこかトルストイ的な空気を強く感じました。

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