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このページは、ヴィルヘルム・ハウフの本の感想のページです。

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「隊商-キャラバン」岩波少年文庫(2009年4月読了)★★★★

砂漠を横切って進んでいた大きな隊商(キャラバン)のの先頭に突然現れたのは、トラの皮をかけた美しくアラビア馬に乗り、見事ないでたちをした堂々とした風采の男。男の名前はゼリム・バルフ。メッカへの旅の途中で泥棒の一団に掴まっていたのを、3日前にこっそり逃げ出してきたので、隊商の一行に加えて欲しいのだと語ります。隊商の5人の商人たちは快く彼を迎え入れることに。そして彼の提案で、商人たちは食後の退屈しのぎに1人ずつ何かの物語をすることになります。
【コウノトリになったカリフの話】…バグダッドのカリフ・カシドは小売商人から黒みがかった粉の入った小箱と、奇妙な文字の書かれた紙を手に入れることに。それは動物になれる粉でした。
【幽霊船の話】…商人・アハメットは父の死後、外国で運試しをすることに。しかし乗り込んだインド行きの船は嵐に沈没。生き残ったアハメットと老僕が見つけたのは幽霊船でした。
【切り取られた手の話】…コンスタンチノープル生まれのギリシャ人・ツァロイコスは、3年間パリで医師の勉強して帰国。しかし父は2ヶ月前に亡くなっており、受け継ぐべき金もなくなっていました。
【ファトメの救い出し】…レザーの弟・ムスタファは、妹・ファトメと婚約者のツォライデを海賊に奪われ、探し出すための旅に出ます。どうやら奴隷として売られてしまったらしいのです。
【小さいムクの話】…ムライの故郷の町・ニケアにいた小さいムクと呼ばれる男。大人なのに背たけが1メートルしかなく、身体は華奢なのに頭は人並みはずれて大きい男でした。
【偽りの王子のおとぎ話】…ラバカンという堅気な仕立て屋の職人は、ある時皇弟のための服を着こんで逃げ出し、道連れになった王子の話を聞いて、自分が王子になりすまします。(「DIE KARAWANE」高橋健二訳)

隊商の商人たちの語る6つの物語。子供の頃の私の本棚に分厚い「ハウフ童話集」が入っていたので、部分的には既読。千一夜物語は大好きで、こういったアラビアの砂漠の雰囲気は大好きなはずなのに、なぜかこの「ハウフ童話集」だけは、どうしても子供の頃通読できなかったのですが、今回ようやくこの「隊商」で読み通すことができました。やはりドイツ人作家というのが私にとっては問題なのでしょうか。ハウフ自身は。アラビアには行ったことがないようなので、その辺りも問題だったのでしょうか。
1つ1つのお話はラング編集の色の童話集や他の童話集にも入っていたりするのですが、これはあくまでも枠物語。全体を通して読むことに意義があるのですね。小さな伏線が重なり、6つの物語だけでなく、全体をまとめる物語としての大きな流れもあります。ハウフの生きた19世紀初頭に既にこういった趣向があったというのが驚きです。ハウフ自身の工夫だったのかもしれないですね。

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