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このページは、アレクサンドル・グリーンの本の感想のページです。

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「黄金の鎖」ハヤカワ文庫FT(2006年9月読了)★★★

船員たちが全て陸に上がっている間、エスパニョーラ号の船室に1人残っていたのは、16歳の水夫・サンディ・プルーエル。そこに現れたのは、すぐさまガーデン岬に向けて出帆して欲しいというドュロクとエスタンプと名乗る男たちでした。金貨35枚を提示され、かねてから冒険に憧れていたサンディは出帆することを了承。早速、ガーデン岬にあるドュロクの友人・ハヌーヴァーの屋敷へと向かいます。屋敷には心臓に障害を持つという当主のエヴェレスト・ハヌーヴァーがおり、客人として美女のジゲ、その兄のハルウェイ、友人のトムソンが滞在中。サンディはハヌーヴァーに、図書室で調べ物をしてもらいたいと告げられ、部屋をあてがわれます。その晩、部屋を抜け出して隣の図書室に行ったサンディは、突然現れたハルウェイとジゲが秘密の話をしているのを盗み聞きしてしまいます。そして2人から隠れようとして、偶然隠し通路に入り込むことに。(「ZOLOTAIA TSEPI」深見弾訳)

ハヤカワ文庫FTに収められていますが、例えば「黄金の鎖」に魔力があるといった類の物語ではありません。4年前は底の抜けた靴で歩き回っていたハヌーヴァーが、水遊びしていた時に偶然海賊のピロンが1777年に作らせたという黄金の鎖を見つけ、それからすっかり裕福になったという部分には、鎖が運を運んできたかのような雰囲気もありましたが、基本的にはとても現実的な冒険物語。むしろハヌーヴァーのの屋敷にある隠し部屋や隠し通路、自由自在に対話する自動人形といった部分がファンタジックな雰囲気を醸し出しています。ただ、それらのモチーフも黄金の鎖自体も雰囲気を出しているだけで、それほど効果的に使われているとは思えないのが残念なのですが。
それよりも、16歳のサンディがなぜドゥロクやエスタンプにここまで信頼され、初対面のハヌーヴァーにも屋敷に滞在できるように手配してもらえたのかという部分に、今ひとつ説得力がないように思いました。実際には一目でフィーリングが合ったにせよ、その辺りをもう少し書き込んで欲しかったです。図書係りのポプや従僕のパーカーにも、あっさりと受け入れられすぎのように思います。てっきりサンディの人間を見る目が試されるような、見る目がないことから痛い目に遭うような場面があるのではないかと思ったのですが、そういった場面もまるでなし。そしてハヌーヴァーは、図書館で何の調べ物をさせようと思っていたのでしょうか。これは単なる口実だったのでしょうか? しかし多少都合が良すぎるようではあるものの、少年のロマンティックな成長物語、そして冒険物語として楽しめるのではないかと思います。

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