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このページは、ナタリア・ギンズブルグの本の感想のページです。

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「ある家族の会話」白水社uブックス(2008年1月読了)★★★★★お気に入り

トリノ大学医学部の解剖学教授だったユダヤ系イタリア人・ジュゼッベ・レーヴィと、ミラノ生まれの母リディアの間に、5人きょうだいの末っ子として生まれたナタリア。ムッソリーニの台頭と共に反ファシスト運動に巻き込まれながらも、そのリーダーだったレオーネ・ギンズブルグと結婚し、夫をドイツ軍によって殺された後は英文学者のガブリエーレ・バルディーニと再婚した、イタリアを代表する女流作家・ナタリア・ギンズブルグの自伝的作品。(「LESSICO FAMIGLIARE」須賀敦子訳)

ナタリアは7人家族。まず行儀作法に厳しく短気で、自分の嗜好を絶対だと信じ、山やスキーなど自分が好きなものを家族にも強要するものの、どこかピントがずれている父と、買い物が好きで楽天的、いつまでも少女のような母。そしてきょうだいは全部で5人。父譲りで唯一山が好きになった長男のジーノ、文学者肌で常にお洒落なマリオ、母と姉妹のように仲の良い金髪のパオラ、まるで勉強しなかったのに、立派な医者になって家族を驚かせるアルベルト、そしてナタリア。ここに書かれたことは全て真実であり、架空なものは全くないのだそうです。最初はごく普通の家族の情景のように思えるのですが、ここに描かれた家族とその周囲の人々の記録が、徐々にファシズムの創始者であるムッソリーニの時代、そして第二次世界大戦の時代に重なり、思わぬ重さを見せてゆくことになります。ナタリア・ギンズブルグの家族も警察に追われたり実際に投獄されたりしますし、しかも彼女の夫は獄死しています。それでもことさらに悲壮感があるわけではありませんし、家族の絆の強さを強調しているわけでもありません。ファシズムを攻撃することも全くありません。しかし淡々と描かれているようでいて、とても雄弁に伝わってくるものがあるのです。
家族のことは生き生きと描かれていても、肝心なナタリアのことには義務的にしか触れていないのがとても残念なのですが、自分のことはあまり書きたくなかったと本人が前書きで書いているので仕方ないのでしょうね。正直、少女時代のナタリアのエピソードをもっと読みたかったという思いが残ってしまうのですが… それでもレオーネ・ギンズブルグと結婚した後のナタリアについては、折に触れて読むことができます。

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