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このページは、ハンス・ファラダの本の感想のページです。

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「あべこべの日」ハヤカワ文庫FT(2006年5月読了)★★

【不幸なメンドリ】…普通の卵も産めないメンドリは、仲間たちにいじめられていました。
【魔法の帽子】…隠れるのが得意の「さっちゃん」。家に何者かが入ってきたのに気づきます。
【あべこべの日】…その日はあべこべの日。目が覚めると全てのものがあべこべでした。
【星の子】…弟が欲しいクリスタは、お父さんに言われて流れ星に願うことに。
【忠実なハリネズミ】…町から田舎に引っ越した男は、初めてハリネズミを見ることに。
【もぐもぐペーター】…いつでも口に馬鈴薯を入れたような話し方をするペーター。
【ネズミのぐらぐら耳】…大きな町家に1人暮らしのメスネズミは毎日寂しさに嘆いていました。
【短いお話のお話】…晩御飯を食べようとしない子が、短いお話を聞けず泣き出します。
【悪賢いネズミ】…悪いことばかりしてきたネズミが、ある寒い日に改心するのですが…。
【ターレル金貨】…アンナのお祖母さんは、「ターレル金貨があればねえ」が口癖でした。
【空想のきょうだい】…子供が沢山欲しかったお父さんは、もっと子供がいると空想し…。
(GESCHICHTEN AUS DER MURKELEI」前川道介訳)

子供向けの童話集。11編の物語が収められています。リチャード・ヒューズの「クモの宮殿」のようでもありますが、こちらは「クモの宮殿」のような強烈なナンセンスな物語ではなく、これで少し時代がかった雰囲気にすれば、グリムやペローのような童話集の中に見られそうな作品ばかり。どうも物足りませんでした。
それでも表題作の「あべこべの日」は面白かったです。目が覚めると、その日は「あべこべの日」。猫のミーツィが匙とフォークとナイフにまざって引き出しの中で寝ているかと思えば、ミーツィの代わりに猫の寝巻きを着た銀の匙が猫の寝床に寝ています。外出する時はお父さんが馬の代わりに馬車に繋がれて、白馬が代わりに御者台に乗り、パリッチュ伯母さんが馬車の後尾灯に取り付けられてしまうのです。なぜそのような「あべこべ」が起きるのかは全く説明されないのですが、そういう説明は蛇足なのでしょうね。この作品は楽しかったです。


「田園幻想譚」ハヤカワ文庫FT(2006年11月読了)★★★★

市の参事官・アージオの書記として、朝から晩までせっせと書類を書き写しているグントラム・シュパッツは、毎日の味気ない仕事の連続にうんざりしていました。そんなある日の午前中、グントラムは年上の書記・ブーボに話しかけられて驚きます。ブーボは天涯孤独だと思い込んでいたグントラムに、実は裕福な親類がいることを明かし、窓から入ってきたスズメをグントラムの姿に変えてグントラムの仕事をさせると、グントラムにスズメの姿になって田舎の親類の元まで飛んでいくようにと勧めたのです。(MARCHEN VOM STADTSCHREIBER, DER AUFS LAND FLOG」前川道介訳)

登場人物たちが、本物の人間なのか本当は鳥なのか分からなくなってしまう可愛らしいファンタジー。あまり整理されていない印象も受けましたし、ブーボの扱いが中途半端な気もしましたし、全体的にインパクト不足のような気もするのですが、「あべこべの日」よりもずっと面白かったです。正義が勝つわけでもなく、努力する者が報われるわけでもなく、だからといってハッピーエンドにならないわけでもなく、ファンタジーやおとぎ話の文法を無視したような、あと一歩捻るのか捻らないのか予測不能な展開がいいのかも。普段人間からは取るに足らない存在とされているスズメが、実は人間の生活を軽蔑し、スズメ至上主義を謳っているのが楽しかったです。

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