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このページは、アニー・エルノーの本の感想のページです。

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「シンプルな情熱」ハヤカワepi文庫(2006年3月読了)★★★
昨年の9月に付き合い始めてから、Aが電話をかけてきて、その後家へ訪ねてくるのを待つことしかしなくなってしまった「私」。教師という仕事をこなすことも、他の日常的な用事も、それまでやっていて身に付いている習慣だったからこそできたこと。Aと付き合っている間にした他のことはほとんど記憶に残らず、知り合いとの会話もAに関係あることだけが頭に入ってくるような状態。しかしAは妻子のある東欧の外交官。じきに任務を終えて母国に戻ることになります。(「PASSION SIMPLE」堀茂樹訳)

本国フランスでは、出版されるやいなやベストセラーとなり、マルグリット・デュラスの「愛人(ラマン)」と並ぶ売れ行きを示したという作品。
あくまでも自分のことを客観的に見ているシンプルな文章は読んでいて心地良かったですし、ありがちな恋愛物とは一線を画していると思うのですが、私自身はそれほど惹き込まれませんでした。これは、解説で斉藤由貴さんが「あなたは、自分を見失う程の恋愛に溺れた事がありますか」と書かれているのですが、私にはそういう経験が乏しいせいなのかもしれません。もちろん恋愛は何度かしていますが、振り返ってみれば、ここまで身も心も没頭した経験はないですし…。もちろん、経験がなくても惹き込まれて読む人は多いと思うのですが。
それでもここまで純粋に相手のことだけを思って生活することができるというのは、羨ましくもありますし、作品の最後にも書かれているように1つの贅沢であるとも思います。恋をしている最中よりも、むしろ恋を失った時にしみじみと響いてくる本なのかもしれません。
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