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このページは、モーリス・ドリュオンの本の感想のページです。

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「みどりのゆび」岩波少年文庫(2003年5月再読)★★★★★お気に入り

裕福な家に生またチトは、金色の髪の毛と青い目と薔薇色の頬を持った子供。お洒落でスマートなお父さんと美しくて花束のような香りがするお母さんに愛されて育ったチトは、8歳になって小学校に行き始めます。しかし3日連続で授業中に居眠りをしてしまったチトは、学校からこれ以上預かれないと帰されてしまい、お父さんの提案で実際に外に出て人生を学ぶことに。まず最初は庭師のムスターシュの授業。そこでチトは自分が素晴らしい才能を持っていることに気付くことになります。なんとチトは、<みどりのおやゆび>の持ち主だったのです。チトの親指は土の中だけでなく、屋根の上や窓べり、塀の上にある種を見つけ出し、たちどころに花を咲かせてしまうという指。チトは続く授業のために訪れた刑務所や貧民街、病院、動物園の惨状に心を痛め、次々に花でいっぱいにしていきます。そして最後には、戦争に使われる大砲にも花を咲かせてしまうことに。(「TISTOU LES POUCES VERTS」安東次男訳)

あとがきにも言及されているのですが、フランスの童話ということで、どことなく「星の王子さま」のような雰囲気。日本の童話とはやはりどこか違いますね。夢がいっぱい詰まっていて、読んでいると想像がどんどんふくらんでいくようです。そして言葉がとても綺麗なのです。花を咲かせる指で有名になったチトは、色々な花を作り出すことになるのですが、これが「空のひときれのような青いバラ」や「夜明けの太陽のいろをしたヒマワリ」「美しいあかがねいろをした、沈む太陽のようなヒマワリ」。最後の梯子の場面も本当に綺麗。自分も<みどりのおやゆび>を持っていたら、現代の世界にも本当に<みどりのおやゆび>の持ち主がいれば、と思わされます。
チトの咲かせる花は人々の心を豊かにしますが、読んでいる読者の心も十分豊かにしてくれると思います。実際にはとても教訓的なものを含んでいるのですが、でも難しいことを考えるのは大人になってからでも十分でしょうね。まずはこの世界を純粋に楽しみたいものです。
このラストはあまり好きではないのですが… それでもやはりとても美しい物語でした。

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