Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、ドゥニ・ディドロの本の感想のページです。

line
「ダランベールの夢-他四篇」岩波文庫(2009年8月読了)★★★★

今までになく酷いうなされ方をしているダランベールを心配したレスピナッス嬢は、夜中看病しながら、その気違いじみた支離滅裂な話し振りのうわ言を書き留めます。そして朝になってやって来た医者のボルドゥーに、その時に書き留めておいたことを話すのです。レスピナッス嬢が驚いたことに、ボルドゥーはそのうわ言 のメモから意味を掴みレスピナッス嬢に解説。やがて2人はそれについて議論をし始めて… という表題作「ダランベールの夢」他全5編。(「LE REVE DE D'ALEMBERT」新村猛訳)

ディドロは、18世紀フランスの啓蒙思想家であり作家である人物。18世紀を代表する書物「百科全書」の編纂・刊行に関わった百科全書派の中心的な人物です。(他にはダランベールやヴォルテール、ジャン=ジャック・ルソー、モンテスキューの名も) この「百科全書」は、当時の技術的・科学的な知識の最先端 を集めて紹介しながら、同時に古い世界観を打ち破り、社会や宗教・哲学等への批判を行っているので、宗教界や特権階級から危険視されたのだそうで、実際、購読者はフランス革命の推進派と重なっているのだそうです。
5編とも対話形式の作品。訳者による「はしがき」に、ディドロの著作や18世紀の思想にまだあまり馴染みのない読者は、まず「肖像奇談」を読み、次に「或哲学者とXXX元帥夫人との対談」、そして最後に3部作を順を追って読むのが読み易いと書かれていたので、今回その通りに読んでみました。確かに「肖像奇談」は一番分かりやすく、話としても面白いです。以前どこかで読んだような気もしたのですが、これだけがアンソロジーに取り上げられていたこともあったのでしょうか。次の「或哲学者とXXX元帥夫人との対談」は、難物というほどではないのですが、それよりも少々難しく...。そして3部作。最初の「ダランベールとディドロの対談」は面白かったです。圧力を通じて現れる死力と場所の移動を通じて現れる活力、静止的感性と能動的感性、そして静止的感性から能動的感性への移行。一見小難しいのですが、じっくりと読んでみると案外分かりやすいですね。こういう論が、唯物論なのでしょうか。しかし次の表題作「ダランベールの夢」では、話が一気に多岐に渡ってしまい、ついていけませんでした…。対話形式ですし、文章的には比較的読みやすいはずなのですが、意味を汲み取るのが困難。そして3部作最後の「対談の続き」は、また少し分かりやすくなって。
ディドロという人は、ごく普通のことや微細なことをわざと大きくに言い立てて、相手の反応を見て楽しむ人物だったのでしょうか。なぜ真っ直ぐ等身大に表現できないのだろう、という印象だったのですが、その反応は、合ってるのでしょうか。しかし驚いたのは、その内容の新しさ。今の時代に書かれたと言われてもおかしくないようなことが色々と書かれていて、これが18世紀に書かれたということに驚いてしまいます。これは内容がきちんと分かれば、おそらくどれもとても面白いのでしょうね。それでも最初から1度読んですんなり理解できるようなものとは思ってなかったので、面白かった部分もあったということが大収穫。とりあえず、ゆっくりじっくり付き合っていくつもりです。

収録作品:「ダランベールとディドロの対談」「ダランベールの夢」「対談の続き」「或哲学者とXXX元帥夫人との対談」「肖像奇談」

Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.