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このページは、クレメンス・ブレンターノの本の感想のページです。

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「ゴッケル物語」角川文庫(2008年12月読了)★★★★

ドイツのとある荒れ果てた森の中の古い城に住んでいたのは、ゴッケル・フォン・ハーナウという名の老人。ゴッケルにはヒンケル・フォン・ヘンネガウという名の妻と、ガッケライアという娘があり、3人は古い城の鶏小舎の中に住んでいました。かつてはドイツの中で最も立派な城の1つだったこの城は、ゴッケルの曽祖父の時代にフランス軍によって叩き壊され、当時飼われていた見事な家禽も食い尽くされ、それ以来荒れるにまかされていた城。ゴッケルの曽祖父も父親も隣国ゲルンハウゼン王家の雉及び鶏の守として仕え、ゴッケルも同じ役職につくものの、桁外れに卵好きの王に卵の浪費を強く訴えたことから王の怒りを買い、宮廷から追放され、荒れ果てた父祖伝来の城に住むことになったのです。ゴッケルたちに従うのは、牡鶏のアレクトリオと牝鶏のガリーナのみ。ゴッケルはガリーナに卵を産ませて養鶏業で生計を立てようと考えるのですが…。(「GOCKEL UND HINKEL」矢川澄子訳)

人間の言葉を理解する鶏、何でも願いの叶うソロモンの指輪や親切にしてやった鼠の恩返しなど、童話らしいモチーフが満載なのですが、しかしそれでも昔ながらの童話とはやはり一味違っているのですね。実は意外と複雑で凝った作りですし、同じドイツでもグリム童話などとはかなり違うと思います。そういった伝承の持つ雰囲気をエッセンスとして濃く持ちながらも、その内実は現代の物語という印象。これは19世紀初め頃に書かれた作品なのですが、当時としてはとても斬新な作品だったのではないでしょうか。特に驚いたのはその幕切れ。鮮やかですね!
原書のドイツ語には言葉遊ぶがふんだんに施されており、登場人物の名前なども遊び心がたっぷりなのだそう。矢川澄子さんの訳なので全体的にとても読みやすいのですが、それらのお遊びまでは日本語訳には出てきていないので、訳者あとがきで紹介されているものしか分からないのだけが少し残念です。  

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