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このページは、アロイジウス・ベルトランの本の感想のページです。

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「夜のガスパール-レンブラント、カロー風の幻想曲」岩波文庫(2008年11月読了)★★★★

ある日ディジョンの火縄銃(アルクビューズ)公園のベンチに座っていた「私(ベルトラン)」は、貧困と苦悩を全身に纏ったような哀れな男に出会います。同じベンチに座って読書をしていたその男の本からひとひらの押し花が地面に落ち、「私」がそれを拾い上げて男に返したことがきっかけで、2人は話し始めます。芸術を探し求め、そして見つけたという男は「私」にそのことを語り聞かせ、やがて持っていた本を読むように渡して去っていきます。それは「夜のガスパール。レンブラント、カロー風の幻想曲」という本でした。(「GASPARD DE LA NUIT」及川茂)

夭折した詩人・ベルトランの散文詩集。没後忘れられていたこの作品集はボードレールによって見出され、マラルメをはじめ多くの詩人に影響を与えることになったのだそう。モーリス・ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」も、ここから題名が取られています。(オンディーヌ、絞首台(ジベ)、スカルボの3曲)
「神と愛とが芸術の第一の条件、芸術の中にある《感情》であるならば、−−悪魔こそその第二の条件、芸術の中にある《思想》ではないでしょうか」と言う男が持っていた本「夜のガスパール」を、ベルトランが出版したという体裁。ガスパールとは、この本の中では悪魔の名とされていますが、元々はベツレヘムへ向かった東方の三博士の1人の名前です。ちなみに三博士は、メルヒオール(ヨーロッパ、黄金-王権の象徴、青年の姿の賢者)、バルタザール(アフリカ、乳香-神性の象徴、壮年の姿の賢者)、ガスパール(アジア、没薬-将来の受難である死の象徴、老人の姿の賢者)の3人。
「フランドル派」「古きパリ」「夜とその魅惑」「年代記」「スペインとイタリア」「雑詠」という「夜のガスパールの幻想曲第一の書」から「第六の書」までと、「作者の草稿より抜粋したる断章」があり、1つの章につき収められている詩は10編前後。散文詩という物自体よく分からないままでしたし、一読しただけではその魅力が味わいきれるものではないと思いますが、例えば「夜とその魅惑」には稲垣足穂の「一千一秒物語」を思い起こさせるものがあり、そういうところで楽しかったです。例えば「狂人」の「月が黒檀の櫛で髪を梳いていた。丘を、野原を、木々を、蛍の雨で銀色にしていた。」、「小人」の「しかし小人は、いななき逃げる私の魂にぶらさがり、白いたてがみから糸を紡ぐ、紡錘のように廻っていた。」、「月の光」の「そして私、−−熱に錯乱し!−−顔に皺寄せた月が、私に向かって舌をつき出している首吊り人のように見えた!」などなど。
副題の「レンブラント、カロ風の幻想曲」は、ホフマンの短編集から。こちらもぜひ読んでみたいものですね。

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