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このページは、バジョーフの本の感想のページです。

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「石の花」岩波少年文庫(2006年10月再読)★★★★★お気に入り
【山の女王】…グミョーシキ銅山でくじゃく石を掘っているスチェパーンは、森の中で若い娘の姿をした山の女王に出会います。女王に言われた通り村の管理人に言伝をしたスチェパーンは女王に気に入られ、様々な高価な宝石が入った大きなくじゃく石の箱を渡されることに。
【くじゃく石の小箱】…残されたナースチャは子供3人を育てあげます。末娘のターニャは、父の遺したくじゃく石の小箱の中の宝石で遊ぶのが大好きでした。
【石の花】…みなしごのダニーロは、石細工で有名なプロコーピィチ親方に弟子入りすることに。弟子を気に入った試しのない親方も、ダニーロの石を見る才能を知り、息子のように可愛がります。
【山の親方】…ダニーロが山に去って数年。いいなずけのカーチャはまだダニーロを待っていました。兄や姉に嫁に行くように責められたカーチャは、ダニーロの父親代わりのプロコーピィチ親方の家へ。
【細い小枝】…ダニーロとカーチャの子供たちの中で一番身体の弱いミーチャは、石細工ではなく玉つくり職人に弟子入りすることに。そしてめきめきと腕を上げます。
【たき火っ子おどりっ子】…金鉱掘りの男たちは森の中でたき火を囲んでいる時、たき火から小さな女の子が飛び出して踊るのを目撃。それは「たき火っ子おどりっ子」でした。
【水いろの小へび】…仲良しのランコとレイコは、嫁の貰い手がないマーシャをからかって悪戯をし、マーシャと母親に叱られます。その時マーシャが口にしたのは、水いろの小へびのことでした。
【「青い霧」の井戸】…イリューシカは祖母のルケーリヤおばあさんが死んだ時に、おばあさんが集めておいてくれた鳥の羽をとられてしまいます。残ったのは白赤黒の3枚だけでした。(「THE STONE FLOWER」佐野朝子訳)

ウラル地方の民話をバジョーフがまとめたもの。全部で8編入っており、どれもおじいさんが昔話を語るという形式。基本的にロシアの銅山での労働者たちと不思議な存在の物語です。表題作「石の花」はプロコフィエフのバレエにもなり有名。
最初の「山の女王」から「細い小枝」までの5作には一貫して山の女王が登場し、人間側も徐々に世代交代して連作短編集のような趣き。まず、山の情景がとても幻想的ですね。普段はあまり好きではない孔雀石も、この作品を読んでいるととても素敵に感じられますし、原石の美しさを感じさせられます。特に印象に残ったのは、「山の女王」の1つずつ色の違うトカゲが数え切れないほどいる場面、「くじゃく石の小箱」でターニャが巡礼の女に孔雀石の大広間を見せられている場面、そして「石の花」でダニーロが石の木や花を見る場面。程度の差はあれ、それぞれに庶民であることに変わりはなく、苦しい生活を強いられている人々が、細工を通して自分の天分を発見し、さらに美しいものを追求しているのが共通点でしょうか。ダニーロの作った旦那の大杯や自分のためのチョウセンアサガオの大杯、ミーチャの作った金滓と蛇紋石の小枝など、彼らが作っている細工物も見たくて仕方なくなってしまいます。そして山の女王がいいですね。好き嫌いは多少激しいのですが、気に入った人間にはとことん優しさを見せてくれる女王。その優しさが、気に入らない人間への冷たさをも感じさせるのですが…。しかし山の女王の意図がどうであれ、一旦人間の生きるべき場所ではない所にしか存在しない美を見てしまった人間は、皆それに取り付かれてしまうのですね。
「たき火っ子おどりっ子」以降3作は、同じように銅山で働く人々が中心なのですが、山の不思議に重点が置かれており、少し雰囲気が変わります。私としては最初の5編の方が好きですね。
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