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このページは、バラージュの本の感想のページです。

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「ほんとうの空色」岩波少年文庫(2005年6月読了)★★★★★お気に入り

幼い頃に父親を亡くし、洗濯屋をしている母親と2人暮らしのカルマール・フェルコー。出来上がった洗濯物を配達しないといけないため、学校の宿題をする時間がないフェルコーは、いつも先生に怒られてばかりです。そんなある日、普段はきちんと勉強している金持ちの少年チェル・カリも、フェルコーと一緒に教室の一番後ろの怠け者の席に座らされることになり、フェルコーは絵の具を貸してくれれば絵を描いてあげるとこっそりもちかけます。フェルコーは絵がとても上手だったのですが、絵の具を持っていないため、友人の絵の具を借りて絵を描いてあげることにしていたのです。カリはフェルコーに厚い上等な画用紙と買ったばかりの上等な絵の具を渡します。しかしフェルコーが絵を描くのを中断して洗濯物を配達していた隙に、藍色の絵の具がなくなってしまうのです。絵の具を盗んだと責め立てるカリ。しかしフェルコーは用務員のおじさんに助けられ、「ほんとうの空色」を手に入れることに。

ハンガリー出身で、映画制作にも携わっていたというバラージュのファンタジー。
貧しい少年が手に入れることになった「ほんとうの空色」。それは青い矢車菊の汁で作った絵の具でした。この「ほんとうの」空色というのは、とても綺麗な青という意味ではなく、「本当の空」と同じように変化する色。晴れた日の夜には満天の星や月が楽しめ、太陽が雲に隠れれば空は暗くなり、雨が降れば水浸しになるのです。このアイディアが素晴らしいですね。そしてそんな描写があるせいか、物語全体が様々な空の色のグラデーションに覆われているようで、とても幻想的な美しさがありました。用務員のおじさんという少し不思議な存在が不思議なまま残されているのも、余韻があって良かったです。
物語のラストでフェルコーは大人へと一歩踏み出すことになります。彼にとっての「ほんとうの空色」。もちろんこれは皆が通らなければならない通過儀礼ですし、フェルコーのためには喜ぶべきなのでしょう。それでもやはり少々切ない気持ちにもなりました。しかし今度みつけた「ほんとうの空色」を大切に、ぜひとも曇らせることなく青々と輝かせ続けていって欲しいものです。

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