Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、ニコロ・アンマニーティの本の感想のページです。

line
「ぼくは怖くない」ハヤカワepi文庫(2006年6月読了)★★★★★
1978年の夏。20世紀でも一等暑かった夏として記録されているその夏、9歳のミケーレ・アミトラーノは、遊び仲間の12歳のテスキオことアントニオ・ナターレ、ミケーレと同じ年の親友・サルヴァトーレ・スカルダッチョーネ、落ちこぼれのレーモ・マルツァーノ、太っちょのバルバラ・ムーラ、そして5歳の妹のマリアと共に、巨人が原っぱに置き忘れたばかでかいパネットーネのような丘を登る競争をしていました。しかし途中でマリアが転んで足をくじいたため、マリアを助けに行ったミケーレはビリになり、罰ゲームをすることになってしまいます。その時の罰ゲームは、木を上って廃屋となった家の2階から中に入り、家中を通り抜けて下まで行ったら、窓からまた木に飛び移って降りてくること。家に入ったミケーレは、そろそろと家の中を探検し始め、隠し穴の中に1人の少年が閉じ込められているのを発見してしまいます。(「IO NON HO PAURA」荒瀬ゆみこ訳)

カルヴィーノやモラヴィア、タブッキなどが受賞者に名を連ねるというヴィアレッジョ賞受賞作品。
イタリア南部のアックア・トラヴェルセという小さな集落が舞台の物語。ぎらぎらと照りつける太陽に真っ青な空、乾いた熱い風、一面の小麦畑の金色が目の前に広がるようです。いかにもイタリア南部らしい情景を背景に、日々の貧しさに喘ぎ、豊かだという「北部」に憧れ、いつかはこんな場所から出ていってやると思う大人たち、貧しさなどものともせずに力強く生きている子供たちが描かれていきます。
廃屋で少年を見つけたミケーレは、まず父親に話そうとするのですが、タイミングが合わずになかなか話をすることができません。しかしそうこうしているうちに、この件には村の大人たち全員が関係していることも知ってしまいます。自分にとって絶対的な存在だった父が、実はまるで絶対的な存在ではなく、弱く罪深い人間だったことを思い知らされるミケーレ。9歳のミケーレにとっては、これは世界が崩壊するような衝撃だったでしょうね。「大人になる」ということに漠然抱いていたであろう夢にもひびが入ってしまったはず。大人たちの行動に疑問を抱いても、それを無邪気に聞くことができるほどの子供ではなく、かといって黙って見過ごすことができるほどの大人でもなく、怖くて自分1人の胸にしまっておけないほどなのに、誰にも相談することができず、ようやく相談できたと思っても、いきなり裏切られてしまうミケーレ。これほど性急に大人になることを求められてしまったミケーレが可哀想ではありますが、自分なりの筋を通して、やるべきことをやろうとする彼の姿はとても爽やかです。
それにしても、ミケーレは良い少年ですね。妹が転べば文句を言いながらも世話をしてやり、フィリッポのことを最初自分の双子の兄弟だと思い込むミケーレ。父親に怒られても、フィリッポのことを忘れると誓わされても、心の中の真っ直ぐな部分を失うことのなかったミケーレの姿に、人間としての資質には貧富の差などまるで関係ないことを改めて教わったような気がしました。
Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.