Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、ドナルド・E・ウエストレイクの本の感想のページです。

line
「ホット・ロック」角川文庫(2004年2月読了)★★★★★

ジョン・アーチボルト・ドートマンダー、37歳。天才的な犯罪プランナーの彼が2度目の刑務所暮らしから解放された日、相棒のケルプがうまい話を持って迎えに来ます。それはタラブウォというアフリカの小国の国連大使・アイコー少佐からの仕事。タラブウォがイギリスの植民地支配から独立する時に、国の象徴となっていたエメラルドが隣の部族の国・アキンジの手に渡ってしまっており、そのエメラルドをなんとかタラブウォの手に取り戻したいというのです。エメラルドは現在ニューヨークのコロシアムで開催されているアフリカ展に出品されているとのこと。ドートマンダーとケルプは、錠前破り役にロジャー・チェフウィック、運転手役にスタン・マーチ、遊軍としてアラン・グリーンウッドをスカウトし、早速計画を練り始めます。(「THE HOT ROCK」平井イサク訳)

伊坂幸太郎さんがお好きだと聞いて以来興味を持っていた、ドートマンダーシリーズ第1弾。
盗みにかけては天才的ながらも、後ほんの少しのところでツキに恵まれず、なかなか仕事を達成することのできないドートマンダー。一旦はコロシアムからエメラルドを盗み出すのに成功したように見えたものの、少佐の手にエメラルドを渡すことはできず、結局何度も同じものを盗み直すことになります。エメラルド盗みに既にうんざりしながらも、一旦やり始めればプロの技を見せてくれるドートマンダーがいい味を出していますね。そして回数を重ねるごとに、盗みの手口がだんだんと大掛かりとなっていき、アイコー少佐がその準備のために目を白黒させているのが何とも楽しいのです。ドートマンダーと一緒に仕事をすることになるメンバーも、それぞれに個性的な面々。影のあるドートマンダーに対して、陽気な楽天家・ケルプはいい相棒役ですし、鉄道マニアのロジャー・チェフウィック、機械物の操縦には万能のスタン・マーチ、女性の出入りが絶えることがないアラン・グリーンウッドも楽しいです。特にヘリコプターを目の前にした時のスタン・マーチの受答えや、実際に機関車に乗った時のロジャー・チェフウィックの姿の描写が可笑しかったです。さらに今回仕事の依頼人となった、身上調査書が大好きなアイコー少佐も、始めはピシッとした隙のないイメージだったのに、なぜかだんだんお茶目に見えてきてしまいました。ユーモアたっぷりのピカレスク・ロマン。ラストの決着のつけ方にもピリッとスパイスの効いていて楽しかったです。続きを読むのも楽しみ。


「強盗プロフェッショナル」角川文庫(2004年3月読了)★★★★★

百科事典販売詐欺をしていたドートマンダーの前に現れたのは、仕事仲間のアンディー・ケルプ。甥のヴィクターがいい仕事を思いついたからと、ドートマンダーに持って来たのです。前回のことを思い出して、計画に乗ることを躊躇するドートマンダーですが、ケルプの口車に乗せられて、結局一仕事することに。ヴィクターの案は、新しいビルを建てる間、トレーラーハウスで仮営業している銀行を、トレーラーごと盗んでしまおうというもの。運転手役は前回同様スタン・マーチが、金庫破りにはハーマン・Xが抜擢され、今回の計画にはドートマンダーの同居人・メイ・ベラミーや、マーチの母親も加わります。(「BANK SHOT」渡辺栄一郎訳)

ドートマンダーシリーズ2作目。
今回新登場となるのは、ケルプの甥のビクター、金庫破りのハーマン・X、そしてドートマンダーと一緒に暮らしているメイの3人。ビクターは、30歳になったばかりなのに、ティーンエージャーにしか見えないという青年。B級映画マニア。23ヶ月FBIで働いていたものの、現在は無職。マルコム・Xならぬハーマン・Xは、錠前屋。仕事は多いものの、ほとんどが参加している政治的な「運動」のためのボランティアのようです。メイは食料品店のレジ係で、チェーンスモーカー。ドートマンダーと知り合ったきっかけは、ドートマンダーの万引きの場面を見つけたこと。
今回の仕事は、もちろん前回とは趣向が違いますし、前回ほどのテンションの高さもないのですが、骨折り損のくたびれ儲けという意味では同じですね。ケルプが最初言うように、3〜4年引退できるほどの大きなヤマというわけにはいきません。途中まではいい感じで進むのですが、次々と難題が明らかになり、面々は四苦八苦。しかしその難題に立ち向かう場面がまた楽しいのです。私はトレーラーに色を塗る所が好きなのですが、一番笑えるのは、食堂の場面。警察側もいい味を出していますね。
それにしても、普段ドートマンダーがやっている百科事典詐欺は、1件10ドルだったのですね。なんてささやかな仕事なのでしょう。銀行強盗とのギャップが可笑しいです。


「ジミー・ザ・キッド」角川文庫(2004年3月読了)★★★★★

今回、アンディ・ケルプが持ってきたのは、リチャード・スタークの「誘拐」という本。パーカーという悪党のシリーズの3作目で、決して捕まることのないパーカーが子供の誘拐に成功する物語。ケルプは、その本には誘拐に関する全ての手順が書かれており、そのまま実行すれば、同じように成功することができると力説。しかし元々ケルプの計画に乗りたくなかったドートマンダーは、犯罪プランナーとしての自分がその本に劣るのかと怒り出します。ドートマンダーが計画に乗らなければ、スタン・マーチもまた不参加。ケルプが適当にかき集めたメンバーが、きちんと子供の世話をみるのかと心配になったメイはドートマンダーを説得、ドートマンダーは渋々計画に乗ることに。(「JIMMY THE KID」小菅正夫訳)

ドートマンダーシリーズ3作目。
今回名前が登場するリチャード・スタークという作家は、なんとウエストレイクの別名義。ウエストレイクはスターク名義で、悪党パーカーのシリーズを実際に書いているのです。これはドートマンダーシリーズよりもずっと古いシリーズ。この遊び心が最高です。しかしこの作品の中で本文が部分的に読めるのですが、この「誘拐」という本自体は、どうやら実在はしないようですね。
ドートマンダーには、本当は誘拐などに手を染めず、泥棒一本に絞って欲しかったところなのですが、しかし今回も楽しいです。途中までは台本通りに上手く進むものの、肝心なところで上手くいかないのがこのシリーズ。誘拐のターゲットとなった12歳のジミー・ハリントンが、非常に冷静で聡明な少年だったというのが間違いの元ですね。ラストのひねりも洒落ていて、ウエストレイクのサービス精神が嬉しいところ。悪党パーカーのシリーズもぜひ読んでみたくなりました。


「悪党たちのジャムセッション」角川文庫(2004年3月読了)★★★★★

テレビ修理店からテレビを盗み出そうとした時に、現行犯で捕まったドートマンダー。6年の刑を覚悟するドートマンダーでしたが、彼の弁護を引き受けたのは、敏腕弁護士のJ・ラドクリフ・ストーンワイラーでした。ストーンワイラーはドートマンダーの無実を勝ち取る代わりに、アーノルド・チョーンシーという人物に電話をかけるように指示します。そしてドートマンダーがチョーンシーの家を訪れると、チョーンシーからは、自宅の壁にかかっているフランドル派初期の巨匠・フェーンベスの絵「愚行は男を破滅に導く」を盗んで欲しいという依頼が。金に困っているチョーンシーは、ドートマンダーに絵を盗み出させて、保険会社から絵の保険金を騙し取りたいというのです。 (「NOBODY'S PERFECT」沢川進訳)

ドートマンダーシリーズ4作目。
今回の仕事の仲間となるのは、運転担当のスタン・マーチ、錠前と警報装置担当のロジャー・シェフウィック、ぶちこわしと運び出し専門のタイニー・ブルチャー。今回は珍しくケルプが持ってきた仕事ではなく、ドートマンダーに直接依頼があった仕事。ドートマンダーもケルプに声をかけません。しかしそこはさすが疫病神・ケルプ、仕事があることをどこからか聞きつけてしまうのです。しかしドートマンダーの気持ちも分かるのですが、今回の仕事の経過と結果を考えると、ケルプにばかり疫病神の責任を押し付けるのも少々気の毒になってしまいますね。
チョーンシーの家に来る警備員が「強盗プロフェッショナル」で登場した面々というのも楽しいですし、アラン・グリーンウッドなど久しぶりの面々、動物園の檻の鍵を無意識外してしまったため大騒ぎになったというウォリー・ホイッスラーなど、話だけ聞いていて会ってみたかった面々にも会えて嬉しかったです。やはり登場人物のそれぞれに味がありますね。ドートマンダーの珍しくご機嫌な顔が見られるのもポイント。作中の「ドートマンダー商会」という表現も楽しいですね。


「我輩はカモである」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2004年12月読了)★★★

根っからのカモ体質で、小学生になったばかりの頃から30歳を過ぎる現在に至るまで、数限りない詐欺師たちに騙され続けてきたフレッド・フィッチ。ある日突然、顔も知らない叔父・マシュウ・グリアスンから30万ドルの遺産が贈られたとの電話を受けて驚きます。今までの経験から、最初は本気にせず、すぐさま詐欺捜査課のジャック・ライリーに電話したフレッド。しかしその遺産の話は本当だったのです。たちまちフレッドの周囲には怪しげな人々が集まり、金を無心する手紙が届き始めます。しかしマシュウ叔父の金は詐欺によって得た金。しかも叔父は殺されていたのです。そしてフレッドも命を狙われる羽目に。(「GOD SAVE THE MARD」池央耿訳)

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作品。
根っからのカモ人間フレッド・フィッチが遺産を受け取ってから、誰を信用したらいいのか分からなくなってしまいます。見る見るうちに他人を信用できなくなっていく過程は、見ていて少々可哀想になってしまうほど。アメリカという国は、これほど日常的に詐欺師が横行しているのでしょうか。それとも、これはやはりデフォルメされた可笑しさなのでしょうか。そして周囲の誰も信用できなくなってしまったフレッドは、叔父のことなどを改めて調べはじめるのですが、その中で一番面白かったのは、フレッドが聞き込みに行った先の医者の行動。これにはさすがに驚きました。凄いですね。本当にこのようなことをする医者がいるのでしょうか。ある意味最強ですね。
全体的にテンポが良くて面白かったのですが、これは日本人からは少し遠い、アメリカならではのギャグセンスのような気もしました。いかにもアメリカのコメディ映画のような雰囲気。少し浪花節の入っているドートマンダーシリーズの方が、日本人には安心して楽しめるかもしれません。


「天から降ってきた泥棒」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2004年3月読了)★★★★

食品卸業者・チェプコフに依頼された、輸入会社の倉庫からキャビアを盗む仕事は、相棒のオハラのミスで失敗。オハラが2人の巡査に尋問されている隙に逃げようとしたドートマンダーですが、逃げ場を失い、なんと聖フィロメナ修道院の礼拝堂の中に落ちてしまいます。シスターたちは、ドートマンダーを警察に通報しない代わりに、父親に拉致されたシスター・マリア・グレースを取り戻して欲しいと依頼。シスター・マリア・グレースは、最近修道院に入った23歳の女性。しかし資産家の父親は、娘が修道院に入るのが気に入らず、フィフス・アヴェニューのアヴァロン・ステイト銀行タワーの最上階に娘を幽閉し、脱洗脳者の手に娘を委ねていました。しかもそのビルには、全体にありとあらゆる警備が施されていたのです。ドートマンダーは、テナントとして入っている店からの盗みを餌にして、仲間を集めます。(「GOOD BEHAVIOR」木村仁良訳)

ドートマンダーシリーズ6作目。
今回仲間となるのは、アンディ・ケルプ、スタン・マーチ、タイニー・バルチャー、そして初登場の鍵師・ウィルバー・ハウイーの4人。このウィルバー・ハウイーは48年間もの刑務所生活を終えて出所したばかり。あまりに長い間刑務所にいたので、女性を見るとちょっかいをかけずにはいられないという困った老人。そして、泥棒仲間ではないのですが、協力者としてJ・C・テイラーが登場。事業を手広く成功させている人物なのですが、このテイラーがかっこいいですね。まず仕事の仕方がしたたかですし、タイニーに対する恐れを知らない物言いなど、なかなかのものです。その分、スタン・マーチやアンディ・ケルプがほとんど目立たずに終わってしまうのですが。
今回、修道院という設定があまり私の好みではなかったのと、シスター・マリア・グレースが、あまりにシスターらしくない女性なので現実離れの感がいつもよりも大きかったような気がしてしまったのが少々残念。修道院にも色々あり、シスターにも色々な女性がいることは、実体験から良く分かってはいるのですが…。


「逃げ出した秘宝」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2004年3月読了)★★★★★

深夜、ニューヨーク、クィーンズ区にある小さな宝石店・スクーカキス信用宝石店に忍び込んだドートマンダー。その宝石店は現在休業中。ドートマンダーが忍び込んでいる間に慌しく入ってきた男たちもやりすごして、ようやく金庫を物色したドートマンダーは、指輪やイヤリング、ブローチをポケットにしまった後で、疑わしいほど大きくて赤い石がはまった指輪を見つけます。偽物だと思い込むドートマンダーですが、ついでに持ち帰ることに。しかしその指輪はれっきとした本物だったのです。それは90カラットもあるという、世界で一番大きく高価なルビー「ビザンチンの炎」。このルビーの指輪は厳重な警備と共にマンハッタンの国連プラザのアメリカ国連代表部まで護送されてきたばかりで、明日の式典で90年ぶりにトルコに返却されることになっていたのですが、4人の男たちに盗まれてしまっていたのです。(「WHY ME」木村仁良訳)

ドートマンダーシリーズ5作目。「天から降ってきた泥棒」の方が先に刊行されているのですが、こちらの方が先に発表された作品。
いつもならまず仕事の依頼があって、それから動き出すドートマンダーなのですが、今回は少々毛色が違います。今回は、ドートマンダーが単独で行った宝石泥棒が、大騒ぎに発展するという物語。いつもの不運な失敗ではありませんし、ドートマンダーお得意の犯罪プランを立てる余裕もありません。しかし偶然盗んでしまった「ビザンチンの炎」のせいで、今まで以上の大騒ぎとなります。ニューヨーク市警だけでなくFBIも動き出し、街中の犯罪者を引っ張ろうかという勢い。挙句の果てには、犯罪者側が自分たちの手で「ビザンチンの炎」を盗んだ泥棒を警察に引き渡し、束の間の平安を得ようという考えが出てくるというわけです。タイニーに追われるなんて、考えただけでも怖いですね。警察よりもFBIよりも怖いかも…。などという感想が出てくること自体が、このシリーズの一番の面白味のような気がします。


「最高の悪運」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2004年5月読了)★★★★★

ドートマンダーがガス・ブロックに誘われたのは、ロングアイランドにあるカーポートという小さな町にある、マックス・フェアバンクスの家への「訪問」。フェアバンクスは、現在破産申し立て中の億万長者で、カーポートにあるこの家は現在裁判所の管理下にあるため誰も入ってはいけないことになっており、家財道具はそのままになっているはずなのです。しかし2人が忍び込んだ夜、フェアバンクスはこの家にこっそり、浮気相手のトレイシー・キンバリーを連れ込んでいました。フェアバンクスに見つかったドートマンダーは警察に通報され、連行されることに。そしてその時フェアバンクスに、メイからもらった「幸運の指輪」を取り上げられてしまいます。パトカーから辛くも逃げ切ったドートマンダーは、何とか指輪を取り戻そうと計画を練り始めます。(「WHAT'S THE WORST THAT COULD HAPPEN?」木村仁良訳)

ドートマンダーシリーズ9作目。日本では「骨まで盗んで」の前に刊行されていますが、本国で発表されたのは、そちらの方が先。7作目として日本語未訳の「Drowned Hopes」が存在します。
メイからもらった指輪は、メイにとってあまり思い出のない親戚の形見で、しかもどう見ても真鍮にガラスのはまった安物。警察に捕まった腹いせを既に済ませたドートマンダーにとっては、取り戻すほどの価値はない物です。しかしドートマンダーは泥棒としての意地とプライドをかけ、指輪を取り戻すことに執念を燃やします。このドートマンダーの執念が思わぬ方向へと転がっていくのが、やはりこの作品で一番楽しいところ。いつも通り、ドートマンダーの本来の目的はなかなか果たされないのですが、しかし今回の一連の仕事では珍しく大収穫がありますし、噂を聞きつけた仲間たちが集まってきて、とても賑やか。ハーマン・Xを始めとして、今まで登場した主だった面々に再会できるのも楽しいですね。物事がいい方に転がっている時は、皆プロらしい良い仕事をするようで、ますますいい方に転がっていきます。しかもいくらお金が入ってきても、ドートマンダーたちの生活ぶりが変わらないのが嬉しいところ。…しかし指輪1つのせいで、予想だにしなかった被害を被ることになるフェアバンクス。ドートマンダーを怒らせてしまったのが運の尽き。彼が易経に凝っている場面も面白かったです。


「骨まで盗んで」ハヤカワ文庫HM(2004年5月読了)★★★★

冷凍魚の搭載したトラックを盗む仕事が失敗に終わった日、ドートマンダーの元にかかってきたのは、タイニー・バルチャーからの電話。ドートマンダーたちは、東欧の新興国家・ツェルゴヴィアからやって来たタイニーのいとこ・グリク・クルグンクを紹介されます。ツェルゴヴィアは、同じく新興国家の隣国・ヴォツコイェクと現在国連加盟を巡って対立中。確実に加盟されるためには聖フェルガーナの大腿骨が必要で、それをヴォツコイェクから盗み出して欲しいのだというのです。下見をしている時に、偶然ヴォツコイェクの大使・フラデツ・クラロフツに声をかけられ、現在ヴォツコイェクの大使館となっている船・プライド・オヴ・ヴォツコイェク号の中に招き入れられるドートマンダー。聖骨がいつでも盗み出せる状態にあることを知り、早速仲間たちと盗み出そうとするのですが…。(「DON'T ASK」木村仁良訳)

ドートマンダーシリーズ8作目。本国では「最高の悪運」の1つ前の作品に当たります。
国同士の争いに巻き込まれるのは「ホット・ロック」を彷彿とさせますね。最初は簡単に達成できるかに見えた計画は、ある意味読者の予想通りの展開。しかもドートマンダーが捕まえられてしまいます。アンディ・ケルプが疫病神ぶりを発揮するのを見るのは久しぶりのような気がしますね。今回は今までにない長い作品で、その辺りに二転三転ぶりがじっくり描かれています。しかしこの長さがやや冗長に感じられてしまいました。もう少し絞り込んで、スピード感を出して欲しかったところ。それでも聖骨箱の使い道や、大使への仕返しの方法などは小気味が良く、非常に面白かったのですが。
それにしても、主人公の「Dortmunder」が、「don't murder」のアナグラムだったとは知りませんでした。言われてみると、確かに今まで誰も死んでいないのですね。この点が、ウェストレイクが別名義で書いているパーカーシリーズとはかなり違うようで、そちらのシリーズもいずれ読んでみたいものです。


「バッド・ニュース」ハヤカワ文庫HM(2006年12月読了)★★★★

1000ドルの稼ぎになるはずだった<スピードショップ>でのカメラの盗みが失敗した翌日、アンディ・ケルプがジョン・ドートマンダーに持ち込んだのは、墓堀りの仕事。これはアンディがインターネットで知り合ったフィッツロイ・ギルダーポストに依頼された仕事で、墓に埋められている棺桶を、他の棺桶と交換してまた埋め直すのです。ギルダーポストはアーウィン・ゲイベルとインディアン娘・リトル・フェザーと組んでいる3人組。今までにも他のちんぴらと組んで悪事を働き、しかもその組んだ相手を始末したことがあり、仕事が無事終わった後は、アンディとドートマンダーを始末するつもりでいました。(「BAD NEWS」木村仁良訳)

本国ではドートマンダーシリーズ10作目。日本では9作目。
ワンパターンとも言えますが、相変わらずのノリで安心して読めるシリーズです。今回はインディアン経営のカジノの利権をめぐる争い。相変わらずのドートマンダー一味に、小悪党3人組が加わり、しかもいつ裏切られるか分からないというスリリングな状況。相変わらず考え深く、いいところに気がつくドートマンダーですが、その不運ぶりも相変わらず。ここまで苦労するぐらいなら、普通の生活を送った方がいくらかなりとも効率が良いのではないかと思えてしまうほどです。
しかし今回、帯にも「ドートマンダー登場36周年(笑)記念 史上最も不運な泥棒が ついに完全犯罪に成功! (まったくの嘘ではありません。念のため)とあるように、ドートマンダーシリーズにしては非常に珍しく、なんと1つの試みをすんなりと成功させるのです。これは今回初の快挙なのでしょうか。このシリーズに関してはあまり犯罪に関する部分を覚えていられないので、よく分かりませんが…。むしろ関係ない場面が妙にくっきり印象に残っているものですね。(笑)

Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.