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このページは、メアリ・W・ウォーカーの本の感想のページです。

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「凍りつく骨」講談社文庫(2003年1月読了)★★★★

テキサスで犬の訓練士をしているキャサリン・ドリスコルは、突然届いた父の手紙を見て動揺します。父のレスター・レンフロは、キャサリンが5歳の時に母のリーン・ドリスコルと離婚して以来、31年もの間1度として会いにきたこともなければ連絡をよこしたこともなかったのに、キャサリンにしかできない「あること」をしさえすれば、借金を返すための現金を渡すことができると書いていたのです。確かに現在キャサリンには9万1千ドルの借金があり、3週間以内にその全額を返さないと全財産が競売にかけられることになっていました。しかしキャサリンがようやく決意を固めて父の職場であるオースチン動物園を訪れると、そこで待っていたのは、父がその日の早朝シベリアンタイガーのブルームに噛み殺されたという知らせ。しかも父の弁護士であるトラヴィス・ハモンドによって、父にはキャサリンの借金を返せる遺産があるどころか、1万ドルの借金しか残されていないことが判明します。(「ZERO AT THE BONE」矢沢聖子訳)

アガサ・クリスティ賞受賞。エドガー・アラン・ポー賞にもノミネートされたという作品。
家が競売にかけられるまでの3週間という限られた時間の中で、動物園での慣れない仕事の合間に父であるレスター・レンフロが自分にやらせようと思った「あること」を探さなければならないキャサリン。そんなキャサリンに、父に届いたのと全く同じ脅迫状が届き、物語は緊迫感たっぷりに進んでいきます。家や訓練施設を失うのも十分辛いのでしょうが、しかしキャサリンにとっては、愛犬のラーが資産価値とみなされてしまっているというのが一番の痛手なのでしょうね。ラーやその他の犬に対する愛情がたっぷりと伝わってきます。しかしキャサリンの蛇嫌いに限って言えば、それほどの説得力は感じられませんでした。特に何も原因がなくても、蛇が苦手という人はたくさんいます。それに何事も用心深いキャサリンが、写真のことを他人に話す場面も、ワインのせいがあったとしても、少々唐突のような気が。
やはり動物園の描写がいいですね。緊迫感のある展開の中に爬虫類館での世話の仕事、犀の交尾、ヒクイドリの産卵、狼の相手… なかなか興味深いシーンが挿入されています。それに犬の描写もなかなかのもの。男性はシャーブ警部補しか印象に残りませんでしたが、ソフィーやアン・ドリスコル、キールマイヤー姉妹など、女性陣に味があって良かったです。


「処刑前夜」講談社文庫(2003年1月読了)★★★

犯罪ライターをしているモリー・ケイツがこの11年追ってきていたのは、ルイ・ブロンクという男の起こした連続レイプ殺人事件。彼は車で拾った女性を殺害、髪の毛を剃りあげ、最後にレイプするという犯行が特徴の常習殺人犯で、「テキサスの剃髪魔」と呼ばれていました。モリーはその内容をまとめあげて「にじみ出る血」という本を出版、近々執行されるブロンクの処刑で、この事件も幕を閉じようとしていたのです。しかし死刑執行まであと1週間と迫ったある日、テキサスで建設業を営むチャーリー・マクファーランドの妻・ジョージアが、ルイ・ブロンクに殺された前妻・アンドリアと全く同じ方法で惨殺されます。事件当日、ブロンクは確かに死刑囚房の中に入っており、しかもこの事件の後、自白を翻すのです。モリーは改めて事件を追い始めることに。(「THE RED SCREAM」矢沢聖子訳)

モリー・ケイツシリーズ1作目。MWA最優秀長篇賞受賞作品。
原題の「Red Scream」とは、「死刑囚がいよいよ最期のときを目前にあげる断末魔の叫び」のことだそうです。しかしながら、処刑まであと1週間というタイムリミットの割に、「凍える骨」で見られたような緊迫感はあまり感じませんでした。途中で少々ダレてしまったほど。モリーの意気込みも、彼女が一旦食らいついたら離れないというのもよく分かるのですが、もう少しピリッとタイトにまとめて欲しかった気がします。
しかし「凍える骨」では魅力的な男性があまり登場しないのが残念だったのですが、今回はモリーの元夫で警官のグレーディ・トレーナーがとてもいい味を出していますね。モリーと娘のジョー・ベスの間もとても微笑ましい関係。あとはルイ・ブロンクさえもっと個性的なら良かったのですが。死刑囚房に訪ねて行くシーンなど、ついついトマス・ハリスのレクター博士と比べてしまったので、少々物足りなかったです。

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