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このページは、ヴィヴィアン・ヴァンデ・ヴェルデの本の感想のページです。

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「六つのルンペルシュティルツキン物語」創元ブックランド(2009年3月読了)★★★★

「うちの娘は藁から金糸を紡ぐことができます」と言ったことが王様の耳に入ったことから、窮地に陥った貧しい粉屋の娘は、城の一室に藁の山とともに閉じ込められ、3度謎の小人に助けてもらうことに… というのはグリム童話。しかしそもそも金糸を紡ぐことができるのなら、粉屋は貧しいはずがないのです。そんなヴィヴィアン・ヴァンデ・ヴェルデの疑問から生まれた6つの「ルンペルシュティルツキン物語」。トロルのルンペルシュティルツキンとシヴォーンの「とんでもないおとぎ話」、エルフのルンペルシュティルツキンとデラの「藁を金に」、ロシアの家の精ドモヴォイのルンペルシュティルツキンとカーチャの「ドモヴォイ」、父親のオットーとクリスティーナの「パパ・ルンペルシュティルツキン」、魔女のルンペルシュティルツキンとルエラの「ミズ・ルンペルシュティルツキン」、グレゴリー王とカーリーンの「金にも値する」の6編。(「THE RUMPELSTILTSKIN PROBLEM」斎藤倫子訳)

「ルンペルシュティルツキン物語」の6つのバリエーション。アメリカ図書館協議会等の推薦図書に選定され、児童書書評誌が最優秀作品に贈るブルーリボン賞も受賞しているという作品。
なぜこの物語を書こうと思ったかというまえがきからして面白いです。昔話というのは矛盾があるもの不条理なもの、と子供の頃から悟っていましたし、そういうものとして読んでいたのですが、改めてその矛盾点を突くというのが新鮮。なぜ王様と貧乏な粉屋が話をすることになったのか、金が紡ぎだせるというのに粉屋が貧乏のままなのを王様は疑問に思わなかったのか、なぜ出来もしないことをさせるために粉屋は娘を城に送り出してしまうのか、小人は自分で金糸を紡ぎだせるのになぜ報酬として金の指輪とネックレスを受け取るのか、なぜ小人は子どもを欲しがったのか、なぜ名前当てゲームという小人が一方的に不利な取引をすることになるのか…。
「ルンペルシュティルツキン」と同じパターンの物語「トム・ティット・トット」をファージョンの「銀のシギ」が語りなおした物語は子供の頃に大好きでしたが、こんな風に同じ物語の6つのバリエーションが一度に読めるというのがいいですね。基本的に同じ登場人物、同じ展開に同じ結果、というしばりがある中でのことだからこそ、作者のセンスが問われますし、違いが際立つような気がします。そして新たに作り直された物語に登場するのは、賢い娘だったり馬鹿な娘だったり、人の言うことなど聞いていない娘だったり、強引な娘だったり… それに合わせて王様や粉屋、そしてルンペルシュティルツキンの造形も変わります。そのあり方が絶妙。この6作品の中では、私はロマンティックな「藁を金に」が一番好きですが、「金にも値する」の王様の鮮やかな処理も皮肉たっぷりでなかなかのものですね。良かったです。

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