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このページは、スコット・トゥローの本の感想のページです。

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「推定無罪」文春文庫(2002年8月読了)★★★
美人女性検事補・キャロリン・ポルヒーマスが自宅で死体となって発見されます。折りしも地方検事選挙戦の真っ最中。現職の地方検事・レイモンド・ホーガンは、事件を無事解決して得点をあげようと、地方検事局主席検事補・ロザート・K・サビッチ(ラスティ)にこの事件を任せることに。キャロリンの死因は頭蓋骨折。全裸の状態で全身を縛られていました。セクシーな美女だったキャロリンは、変質者に強姦されたのか、それとも顔見知りの犯行なのか。しかし捜査は難航します。そして上司であるレイモンドが選挙に敗れたのに伴い、ラスティもまた検事補の地位を退くことに。しかし新しく地方検事となったニコ・デラ・ガーディアと彼の腹心の検事補・トミー・モルトは、ラスティが捜査を故意に違う方向へと導いていたと考え、ラスティは起訴されることに。(「PRESUMED INNOCENT」上田公子訳)

ハリソン・フォード主演で映画化もされた作品。作者のスコット・トゥローはこの作品を書いた時、現職の検事補だったそうです。物語は大きく「春」「夏」「秋」の章に分かれ、「春」はラスティが主席検事補としてキャロリンの事件を担当しているところから地方検事選挙が終わる所まで、「夏」で裁判の準備に入り公判。そして「秋」へと続きます。
「春」ではなかなか物語が進展せず、正直退屈でした。しかし「夏」の公判の場面に入ってからは、一気に動き始めます。やはり現職の検事補というだけあり、法廷での描写はリアルですね。法廷でのやりとりが細かく描写され、水面下での動きや言外の戦術、様々な駆け引きが臨場感たっぷりに描かれています。陪審員制度を描いた作品はいくつか読んだことがありますが、ここまで細かく描写されているのは初めて。最初は追い詰められていたはずの被告側が、ある時点を境に形勢逆転していくところなど、緊迫感たっぷり。1つ1つの質疑応答に対する、法廷内の人間、特に陪審員の反応の変化もとても面白く、これだけでもまるで1つの大きなゲームを見ているような気がしてくるほどです。
ラストではストーリーが更に反転。これには驚きました。まるで予想もしていなかったので…。凄いですね。これは「春」での退屈さを補って余りあります。面白かったです。

下巻P.26「みなさん、あなたがたが好いてしなければならないことを、もう一度言っておきます。いいですか、サビッチ氏は無罪である。裁判長のわたしがそう言っているのですよ。彼を無罪と推定すること。みなさんはそこに坐っているとき、あちらを見て、自分に言いきかせていただきたい。あそこにいるのは無罪の人間である、と」
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