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このページは、スーザン・アレン・トウスの本の感想のページです。

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「ブルーミング」新潮クレスト・ブックス(2007年9月読了)★★★★★

1950年代のアイオワ州エイムズは、離婚した夫婦は1組だけ、殺人事件が起きたのは1回だけ、アルバイトといえばベビーシッターかトウモロコシの雄穂摘みぐらいしかないような静かな時代の静かな町。そんな小さな町での、「何も起こらなかった」けれど様々な思い出が濃密に詰まっている少女時代を描く、スーザン・アレン・トウスの回想録。(「BLOOMING」高橋英治訳)

本の虫と言われて傷つきながらも図書館に毎日通い、地元の新聞社でのアルバイト。少女たちの親友作りとライバル関係。男の子たちの目を意識しながらのプールやパジャマ・パーティ。2、3の恵まれた少女たち以外、パーティのためのドレスを買うお金などなく、自分で作るのが普通であり、時間をかけて恋を育んだ時代。どの話も淡々と書き綴っているという印象なのですが、まさに古き良きアメリカといった感じですね。スーザン・アレン・トウス自身が、その頃は背が高くてハンサムな夫と頬の赤い2人の子供、そしてアイリッシュセッターに囲まれてピクニックしている美人でお洒落な女性が理想だったと書いていますが、まさにそういった情景が浮かんできます。そんな女性を目指して日々自分に磨きをかけようと努力しながら、背伸びをしていない、等身大の少女の姿が伝わってくるところが、とても素敵。そして、作者自身が「男女交際の速度が高速道路並みにスピードアップされ、わたし自身、すぐにベッドに誘おうと試みない男性がいると、ゲイかもしれないわと思う今の時代には、とても信じられないかもしれないけれど」と書いているように、この時代のように時間をかけて気持ちを育み、一線を越えるかどうかで苦悩する方が、今の時代の恋愛よりも遥かに精神的に豊かに感じられます。今のアメリカにはこういった恋愛はもう存在していないのでしょうね。
娘とのやり取りの合間に、思い浮かぶままに思い出を連ねていったというような回想録。あまり整理されているとは思えないのですが、そのさりげなさが読んでいてとても心地よかったです。作者の写真が何枚か挿入されていることもあってとてもイメージが浮かび上がってきやすいですし、読んでいると少女たちのさざめきやくすくす笑いがそのまま伝わってくるような気がしました。

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