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このページは、シャロン・シンの本の感想のページです。

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「魔法使いとリリス」ハヤカワ文庫FT(2004年1月読了)★★★★

最も偉大な魔法使いとして国内外にその名を知られる老シリルに魔法を習ってきた若き魔法使い・オーブリイは、変身の技を習うために、変身魔法の第一人者である宮廷魔法使い・グライレンドンに弟子入りすることに。シリルはグライレンドンを嫌っており、オーブリイに警戒を怠るなと警告。グライレンドンの館の近くの村人たちもまた、グライレンドンを忌み嫌っていました。ようやく館に辿り着いたオーブリイは、グライレンドンの妻、豊かな緑色の目が印象的なリリスに迎えられることに。グライレンドンの館に住むのは、グライレンドンとリリス、使用人のアラクネとオリオン。グライレンドンは留守がちで、魔法の訓練は滞りがち。館の住人たちはどこか奇妙な雰囲気。しかしオーブリイは、変に居心地の悪い館の暮らしにも徐々に慣れていきます。(「THE SHAPE-CHANGER'S WIFE」中野善夫訳)

優れたファンタジー処女作品に贈られるという、ウィリアム・クロフォード賞を受賞した作品。なんとも不思議な雰囲気のファンタジーです。埃の積もった館の場面も多いのですが、作品全体に鬱蒼とした緑の森を感じさせる空気が流れていて、穏やかな清涼感があります。主人公のオーブリイは社交的な明るい好青年で、本来ならば、酒場の娘・ヴェリルのような綺麗で明るくしっかり者の娘が似合うタイプ。しかし実際に彼が惹かれてしまったのは、グライレンドンの妻、謎に包まれたリリスでした。この2人の関係が実にゆったりと淡々と描かれているのがいい感じ。しかしそこには、グライレンドンが一体何を企んでいるのかという緊迫感もあります。世の中にまるで無関心に見える、リリスの本当の思いは…。リリスの秘密は途中である程度想像がつくのですが、想像がつくだけに、それが明かされた後のことを考えると切なくなってしまいました。ラスト近くのオーブリイの葛藤も切ないです。青年は、こうやって大人の男性になっていくのですね。
「リリス」と聞くとまず思い出すのは、アダムの最初の妻として創られた、この世で最初の女性。そして物語後半で登場するのは「イヴ」。もしやグライレンドンのファーストネームは「アダム」なのでしょうか。しかし彼のやっていることは、アダムというよりはむしろ…。

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