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このページは、ジェニファー・ロバースンの本の感想のページです。

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「シャーウッドの森の物語」全3巻 ハヤカワ文庫FT(2007年4月読了)★★★★
1194年春。膨大な富と由緒ある爵位を持つハンティントン伯爵の住むハンティントン城では、十字軍遠征でサラディン軍の捕虜となりながらも2年ぶりに無事生還した嫡男・ロバートの帰還を祝う会が開かれていました。レイヴンスキープのサー・ヒュー・フィッツウォーターの娘・マリアンもまた、祝賀会に出席した1人。マリアンの父もロバートと同じように十字軍で出征しており、しかし1年前に亡くなって最早イギリスに帰ってくることはなく、マリアンはロバートに父の最期ことを聞けるのではないかと考えていました。しかしロバートがマリアンに語ったのは、父の最期の様子だけでなく、ノッティンガム代官・ウィリアム・ドレイシーと結婚せよという父の言葉だったのです。(「LADY OF THE FOREST」木村由利子訳)

「森の姫君」「緑陰の騎士」「樹下の調べ」の全3巻。「シャーウッドの森の物語」という副題にある通りのロビン・フッドの物語です。
ここでのロビン・フッドはハンティントン伯爵の嫡男ロバートであり、マリアンはレイヴンスキープの領主・フィッツウォルター家の令嬢・マリアン姫。お転婆な少女だった面影を残すマリアンに比べて、ロバートは内省的な若者。伝説に伝えられるような明るく快活な若者ではなく、十字軍の出征によって様々なものを失い、そのことに傷つき、悪夢や幻影に悩まされています。そんなロビンですし、最初は伯爵の嫡男というところからスタートするので、特に痛快な冒険もないまま、物語は淡々と進んでいきます。リトル・ジョンとの一騎打ちなどはあるのですが、明るく快活なロビン・フッド物を期待して読むと、がっかりするかもしれませんね。物語が進むにつれてお馴染みの面々も登場するのですが、彼らの造形もかなり違っていました。特にイメージと違っていたのはブラザー・タック。この作品でのタックは、大食らいという部分は伝説そのままなのですが、信仰と押し付けられた義務の板ばさみになって悩める青年。そしてリトル・ジョンもまた、大きな図体はそのままでも、「気は優しくて力持ち」。
しかしロビン・フッド物とは言っても、この作品の中心はあくまでもマリアン。マリオン・ジマー・ブラッドリーの作品のように、かなりフェミニズム色の濃い作品となっているのですね。特に繰り返し語られるのは、この時代の女性の立場や結婚、そして貞操について。ノッティンガム代官の娘・エリノアのことやロバートの家の問題と絡めて、これが物語の中心となっています。
面白かったのは、当時の風俗についてかなり詳しく描かれていること。ハンティントンの城やレイヴンスキープのマリアンの屋敷、そしてノッティンガムの祭りの賑わいや森の中などが、とても生き生きと描かれていて楽しいです。ロビン・フッドの痛快な冒険活劇を読みたい人には不向きだと思うのですが、これも1つの解釈として読めば面白いかもしれません。
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