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このページは、ハワード・パイルの本の感想のページです。

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「ロビン・フッドのゆかいな冒険」岩波少年文庫(2007年3月再読)★★★★★お気に入り
昔々、ヘンリー二世が治めていた頃のイングランド。シャーウッドの緑の森の中に、ロビン・フッドという名高いお尋ね者とその仲間たちが住んでいました。ロビンがお尋ね者になったのは、18歳の若者だった頃。ノッチンガムの郡長が催す弓試合に参加しようとロックスレイからシャーウッドの森を抜けてノッチンガムへ向けて歩いていたロビンは、森役人にからかわれて怒り、王様の鹿だけでなく森役人の1人も射殺してしまったのです。それ以来シャーウッドの森の奥深くに隠れ住む生活。しかしロビンの周囲には同じようなお尋ね者たちが集まって緑の森を駆け回り、弓試合や棒試合をしながら、森の鹿を食べ、自分たちで作ったビールを飲んで毎日を楽しく暮らしていたのです。(「THE MERRY ADVENTURES OF ROBIN HOOD」村山知義・村山亜土訳)

子供の頃から大好きだった本。まず陽気で明るく弓が上手なロビン・フッドがかっこいいですし、物語が進むにつれてどんどん仲間が増えていく様子も楽しいのです。道などで偶然出会った相手と一騎打ちをして、その強さに惚れ込んで仲間に引き入れてしまうこともしょっちゅうです。ロビン・フッドも相当強いのですが、完全に無敵と言えるほどの強さではないところが、また人間的でいいのかもしれません。時には負けて苦笑いさせられることもありますし。そしてそんな風にロビン・フッドと勝負して仲間になったのが、大男なのに「小人」のジョーンや酒飲みのタック坊主たち。それ以外にも、すばしっこいウィル・スタトレイや、気取り屋のようでいて実は強い赤服のウィル、素晴らしい歌を奏でる吟遊詩人のアラン・ア・デールといった面々も個性派揃いですね。特に気に入っているエピソードは、リーのリチャード卿を助ける場面と、エリーノア皇后の側で弓の試合に勝つ場面でしょうか。誠実なリチャード卿も、意外と懐の深いエリーノア皇后も素敵。その代わり、終盤リチャード一世と親しくなってからのロビン・フッドはあまり楽しくありません。爵位を得てハンチングトン侯となり、リチャード一世と共に十字軍で戦ったりしています。ただ、そうなってからロビン・フッドが死ぬまでの出来事は駆け足で語られるので、あまり楽しくないのはほんの数ページ。
この本の挿絵は、作者のハワード・パイル自身が描いたもの。これもどれも素敵です。ラファエル前派の影響を受けているそうで、それも納得。本当に雰囲気たっぷりですね。挿絵の中で一番好きなのは、ロビン・フッドが肉屋になった場面。キスの相手の娘さんがとても嬉しそうで、見ているだけでも楽しくなります。しかしこのパイルはアメリカ人で、実はイギリスを訪れたことがないのだそうです。日本でロビン・フッドと言えばまずこの作品が出てくるのではないかと思うほど代表的な作品だと思うのですが、それを書いたのがイギリス人ではなく、イギリスに行ったことのないアメリカ人というのが面白いですね。それだけ国境を越えて愛されるヒーローだということなのでしょう。
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