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このページは、エリナー・ポーターの本の感想のページです。

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「少女ポリアンナ」岩波少年文庫(2005年10月読了)★★★★★
6月のある日、ヴァーモント州ヴェルディングスヴィルのミス・ポリー・ハリントンの家にやって来たのは、ポリアンナ・ホイッティア。ポリアンナはミス・ポリーの亡くなった姉・ジェニーの1人娘。父親であるジョン・ホイッティア牧師も亡くなって11歳で天涯孤独の身の上となり、ミス・ポリーが引き取ることになったのです。5歳年上の姉のジェニーが、ミス・ポリーが15歳の時に家族の反対を押し切って若い牧師と結婚し、宣教師として南に行ってしまってから25年。その間、ジェニーと家族は断絶し、しかしその後、父も母も姉たちも亡くなり、現在丘の上のハリントン家の屋敷に残っているのは40歳のミス・ポリーただ1人。しかしミス・ポリーは喜んでポリアンナを引き取ったわけではありませんでした。子供は嫌いで、静かな生活を失いたくないと思っているのですが、義務をわきまえた人間でありたいと考えていたのです。(「POLLYANNA」谷口由美子訳)

かつて「パレアナ」「少女パレアナ」として訳されていたこともある作品。
読み始めてまず思ったのは、モンゴメリの「赤毛のアン」に似ているということ。アンほどの果てしない空想力はないとはいえ、放っておけばいつまでも1人でおしゃべりをしているところなど、ポリアンナとアンは良く似ていますし、「何でも嬉しがる」というゲームも、いかにもアンが好きそうです。この作品が発表されたのが1913年、「赤毛のアン」は1908年と、年代も似通っていたのですね。
ポリアンナのゲームには驚かされますが、これによって徐々に頑なな人々の心が溶かされていきます。最初は少しわざとらしいのではないかと思いましたが、これはポリアンナの天然なまでの素直さや純粋さが一番大きな要素なのですね。一歩間違えば逆に心を閉ざされてしまいかねないところですし、読者にも作為的なものを感じさせてしまいそうなところなのですが、ポリアンナのあまりに純真な振る舞いのために、始めは皆困り、そして気付けば調子に乗せられてしまいます。ポリアンナの「何でも嬉しがる」ゲームは、「今の自分よりも恵まれない人もいるのだから」という優劣ではなく、その物事の明るい面を見ようとするもの。与えられた殺風景な屋根裏部屋を悲しく思うのではなく、鏡がないからそばかすを気にしなくてもいいと考え、窓から見える綺麗な景色を一幅の絵だと楽しむのです。自分に対する他人の負の感情もいい方に考えるという、まさに底抜けの楽天家。しかしポリアンナは生まれつきの楽天家なのではなく、日々努力しているのです。実際にはなかなか難しいことかもしれませんが、これはとても大切なことなのでしょうね。
ポリアンナの周囲のミス・ポリー、ナンシー、ジョン・ペンドルトン、医者のトーマス・チルトン先生などの登場人物たちも魅力たっぷりです。そしてポリアンナが幸せにした人間が1人や2人ではなく、ヴェルディングスヴィル中の人々だというのが、ポリアンナらしくて嬉しくなります。

「ポリアンナの青春」岩波少年文庫(2005年10月読了)★★★★
診療所でポリアンナの世話をした看護婦のデラ・ウェザビーは、ポリアンナの保護者であるチルトン夫妻が冬の間ドイツに行くという話を聞き、ポリアンナをボストンに住む姉のカルー夫人のところで預かりたいと申し出ます。カルー夫人は富裕な未亡人。夫と子供、そして姉に先立たれて以来、姉の遺した1人息子・ジェイミーに愛情を注いでいたのですが、ジェイミーが4歳の時、その父親のジョン・ケントによって連れ去られ、それ以来8年間ジェイミーの行方を探し続け、今では自分の殻の中に閉じこもり、みじめで陰気な生活を送っていました。デラは、そんなカルー夫人の心の殻を破るには、ポリアンナしかいないと考えていたのです。ポリアンナはカルー夫人の家に行くことになり、そして早速騒ぎを巻き起こします。(「POLLYANNA GROWS UP」谷口由美子訳)

物語の前半はポリーの少女時代。「少女ポリアンナ」と同じく「何でも嬉しがる」ポリアンナがいます。しかしヴェルディングスヴィルとは違い、ボストンはかなり大きな町。ポリアンナが友達になりたいと思っても、都会の人々にとってポリアンナは、ただの見知らぬ奇妙な少女。知らない人と話してはいけないと言う親もおり、ポリアンナは傷つきます。今まで見たこともない世界を見て戸惑ったりもします。「何でも嬉しがる」ゲームも、ヴェルディングスヴィルにいる時ほどには上手くいきません。ポリアンナの成長に相応しく、現実的な社会問題も織り込まれているのですね。それでも持ち前の明るく前向きな態度で頑張るポリアンナがとても健気ですし、後半になると前半の問題を解決しようと頑張っている人々の姿が描かれるのがいいですね。そして後半は、ポリアンナが6年間のドイツ生活から戻ってきてからの物語。レディとなった20歳のポリアンナですが、時代の流れもあり、なかなか苦労が絶えないようです。「何でも嬉しがるゲーム」を続けることは、さらに困難になります。
最後に、チルトン夫人が許さなかった理由にひっかかってしまいましたが…。果たしてお姉さんの時と同じことをしようとしているのに自分で気付いたのでしょうか。結果的には資格も十分だということが分かりましたが、実際にはどのような思いで許してくれたのでしょうか。その辺りは作品の中では曖昧にされているので、気になります。
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