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このページは、アナイス・ニンの本の感想のページです。

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「小鳥たち」新潮文庫(2006年3月読了)★★★★★
アナイス・ニンは、元々は自らの歓びのためだけに書いていた詩人。しかし自分の元に集った貧乏芸術家たちに現金収入を得る必要ができた時、ヘンリー・ミラーの勧めで、1人の好事家の老人のためにエロティック小品を書き始めます。そしてこれらの匿名で書かれていた作品は、死の間際にアナイス・ニンの正式な作品として認められることに。ここには13の作品が収められています。(「LITTLE BIRD EROTICA」矢川澄子訳)

多くの芸術家に影響を与えたという美貌の女流作家・アナイス・ニンの作品。
フランス映画のような表紙の通り、まるでフランス映画でも見ているかのようなエロティックさ。男性と女性、あるいは女性同士の性が 女性らしい繊細な描写で描かれており、表現がぼかされているわけではないのですが、男性作家による作品のような直接的な生々しさはまるでありません。これは日本人では長野まゆみさんの描くエロティック、特に「雨更紗」の雰囲気に似ているような気がしました。どこか紗がかかったような、もしくは夢の中で見ているだけのような感覚。例えば、身体の隅々まで全部見せてしまうような直接的な写真が載っているヌード写真集ではなく、肝心なところが隠されていて、読者に想像させてエロティックさを出す類の本。
しかしこれらの作品のエロティックが、注文主の老人を満足させたのかどうかは些か疑問。男性がこの程度で満足するのでしょうか。特に表題作「小鳥たち」など、まるでエロティックさを感じることなく終わってしまうかもしれない、そっけなさを持つ作品です。それともアナイス・ニンに書かせたということだけでも満足できたのでしょうか。それでも私自身は、こういったまるで心の奥に忍び寄ってくるようなこのエロティックさは好きですが… おそらくエロティックさだけが前面に出ているのではなく、その背後の物語が感じられるからなのでしょうね。

収録作品:「小鳥たち」「砂丘の女」「リナ」「二人姉妹」「シロッコ」「マハ」「モデル」「女王」「ヒルダとランゴ」「チャンチキート」「サフラン」「マンドラ」「家出娘」
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