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このページは、ローリー・ムーアの本の感想のページです。

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「セルフ・ヘルプ」白水uブックス(2008年12月読了)★★★★

「互いにベージュ色の高価なレインコートに身を包んで出会いましょう。豆スープのようにどんよりした霧の夜に。まるで探偵映画もどきに。」というハウツー本的な文章で始まる「別の女になる方法」他、「離婚家庭の子供のためのガイド」「母親と対話する方法」「作家になる方法」など全9編。。(「SELF-HELP」干刈あがた・斉藤英治訳)

ハウツー本のような文体で書かれた小説。たとえば「作家になる方法」の冒頭はこういった具合。
「作家になるためには、まず最初に、作家以外のものになろうとしてみることです。どんなに途方もないものでもいいのです。映画スターと(か)宇宙飛行士。映画スターと(か)宣教師。映画スターと(か)幼稚園の先生。世界大統領、大いに結構。そしてミジメな挫折を味わうことです。早ければ早いほどいいのです。十四歳で挫折を知るなんて理想的。早いうちに決定的に幻滅することが、くじけた夢に関する長い俳句を十五歳でひねり出すのに必要な条件なのです。」
全編このようにして物語が始まります。ハウツー物を小説にしてしまうとはアイディアですね。どれも内容的には、たとえば結婚している男性と不倫をしている女性のどろどろとした感情といった強烈なことが書かれていたりするのですが、文章がとにかく淡々としてるので、読んでいてもまるでごく普通の事務的な説明を受けているだけのような錯覚に陥ってしまうというとても不思議な作品です。
表面に現れてるのは、シニカルなユーモアセンス。しかし基本的に不倫や離婚、挫折、死といった負のイメージの強い事柄がテーマになっているので、奥底から寂しさや絶望感が滲み出てくるような印象。面白いとは思うのですが、純粋に自分の好みかと言えば疑問。例えばアメリカ人が読むと、私が今読んでいるよりももっと面白く感じるのでしょうね。そんないかにもアメリカ的なユーモアセンスです。

収録作品:「別の女になる方法」「奪われしもの」「離婚家庭の子供のためのガイド」「HOW」「このようななりゆきで」「母親と対話する方法(覚え書き)」「アマールと夜の訪問者-愛の道へのガイド」「作家になる方法」「満たすこと」

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