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このページは、C.L.ムーアの本の感想のページです。

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「暗黒神のくちづけ」ハヤカワ文庫SF(2007年2月読了)★★★★★

【暗黒神のくちづけ】…ジョイリーの女領主・ジレルが征服者ギョームに敗北を喫します。兜を取ったジレルの美貌に見とれたギョームにくちづけを強いられ、怒りに駆られるジレル。その晩地下牢を抜け出して、ギョームを倒す武器を手に入れるために地獄へと向かうことに。
【暗黒神の幻影】…毎晩のようにギョームの嘆き悲しむ声を夢の中で聞くことになったジレルは、ギョームを呪いから解き放つために、再び地下から地獄へと向かうことに。
【魔法の国】…魔道師・ジローを殺すために攻め落としたギシャール城へと踏み込んだジレル。ジローは塔の頂上にある魔法の隠し扉から、緑の森の国へと逃げ出していました。
【幻影の国】…脇腹に受けた矛の深傷から瀕死の状態となっていたジレル。しかし最期の懺悔にジェルヴァス司祭が部屋を訪れた時、ジレルは暗黒の国ロムニのパヴによって攫われて…。
【ヘルズガルド城】…ジョイリーが攻め滅ぼされ、ジレルはガルロットの地下牢に囚われた20人の衛士を助けるために、ヘルズガルド城へと伝説の秘宝を求めに行くことになります。(「BLACK GOD'S KISS AND OTHER STORIES」仁賀克雄訳)

ヒロイック・ファンタジーならぬヒロイニック・ファンタジーの連作短編集。
ハヤカワ文庫SFに入っていますが、舞台となっているのは中世のヨーロッパですし(ヒロイン・ジレルの城には上等のフランスワインが蓄えられています)、SFではなくファンタジー作品と考えた方が相応しいでしょう。5つの短編のそれぞれでジレルは超常的で、人間の力の及ばない場所に行き、それでも何とか自分の力で切り抜けて戻って来るというパターン。
ヒロインであるジレルは、短く切られた赤毛と金色に燃える眸、男に負けない大柄な、しかししなやかで均整の取れた体、並みの男以上の獰猛さを持つ女性。儀礼としての手へのくちづけ以外は、男性を近づけたことがないのが誇り。ジレル自身男性を寄せ付けようとしないですし、物語の中で描かれている性描写もせいぜい「くちづけ」程度。しかしそれでも全編通して微妙にエロティックですね。表題作の「暗黒神のくちづけ」では、不本意にも彼女の唇を奪った男に、気づいたらほのかな恋心を抱いていたなど、やや安易な展開が気になったのですが、それも「男まさり」でありながら男には実は慣れていないジレルならではなのでしょうか。この5編で強く印象に残ったのは、異世界の描写。特にジレルが降りていく地獄の情景にはすっかり引き込まれました。魔法の国や暗黒の国の描写もとても魅力的です。
ただ、松本零士氏のイラストは全くイメージではないですね。なぜこう全てメーテルになってしまうのでしょう。しかもジレルの髪は短いというのに…。

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