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このページは、エイブラム・メリットの本の感想のページです。

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「イシュタルの船」ハヤカワ文庫FT(2006年3月読了)★★

考古学者のフォーサイスがジョン・ケントンに送ってきたのは、巨大な石盤(ブロック)。本当はケントンも行くつもりで準備していた失われた古代バビロンの学術探検は、出航の前の晩にアメリカが第一次大戦に参入したため、フォーサイスが単身向かったのです。そしてケントンは前線に出て、ベローの森で負傷、傷病兵として送還されていました。ケントンは早速、石盤に刻まれた古代楔状文字の碑文を調べ始めます。そこにあったのは、光の女神イシュタル、暗黒神ネルガル、知恵をもたらす青の神ナブ、そしてザルパニトとアルサルの名前。調べているうちに、辺りに香わしい匂いが漂い始め、そしてケントンは、6千年前の石盤の中に何かが閉じ込められていたことに気づきます。それは宝石で作られた1隻の魔法の船でした。(「THE SHIP OF ISHTAR」荒俣宏訳)

古代バビロンの石盤から美しい帆船が出てくる辺りはとても素敵ですし、気づいたらその船に乗っていたという展開も好きなパターン。女神イシュタルは暗黒神ネルガル、知恵の神ナブ、そしてその巫女や神官たちという設定も、異国情緒がたっぷりです。しかしそれだけ魅力的な設定なのに、物語自体はまるで魅力がありません。特に肝心の主人公があまりに詰まらなさすぎますね。考古学好きの普通の青年の人生が一変してしまうという辺りはまだしも、奴隷になって帆船を漕ぐうちに、頭の中まですっかり筋肉になってしまったかのよう。彼が考えているのは、美しいシャラーネのことぐらいですし、シャラーネ以外のことに関しては、仲間と一緒にやりたい放題なのですから。ケントンが逞しくなった途端に優しくなるシャラーネの造形も含めて、あまりに男性作家的な物語の展開には、がっかりです。

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