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このページは、ダニエル・キイスの本の感想のページです。

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「アルジャーノンに花束を」早川書房(2000年11月読了)★★★★

32歳でありながら、幼児並の知能しか持っていないチャーリィ・ゴードン。知的障害者である彼の元を大学の脳外科のスタッフが訪れ、チャーリィは頭が良くなるために手術を受けることになります。始めのうちこそ、同じ手術を受けた白ネズミのアルジャーノンとの競争に全く勝てなかったチャーリィですが、日に日に色々なことを吸収し、あっという間に天才へと変貌していきます。しかし得る物も多い反面、失う物も多く、天才となったチャーリィの世界は、それまで想像していたような素晴らしい世界ではありませんでした。そして頂点を極めたチャーリィを待っていたのは。(「FLOWERS FOR ALGERNON」小尾芙佐訳)

物語はすべてチャーリィの一人称で進み、その文体がチャーリィの知性の状態を表現しています。最初は知能が低い状態で書いているという設定なので、とても読みにくいのですが、途中どんどん知能が上がっていく様子が手にとるように分かります。それがとても良いですね。
しかしこの一人称のせいで、物語が一層物悲しく感じさせられます。いくらチャーリィのIQが上がっても、チャーリィの人格がそれに追いついていけなかったというのが一番の悲劇でしょう。幼い頃に両親に疎まれ、十分な愛情を受けなかったという過去があるので、仕方ないことなのかもしれませんが…。アリスの「高いIQをもつよりもっと大事なことがあるのよ」という一言がとても重いです。
チャーリィを迎えた結末は悲劇的とも言えますが、しかしチャーリィにとっては、却って幸せだったかもしれませんね。ヒルダという看護婦が言う通り、やはり神様がもしチャーリィがもっと賢いことを望んでいたら、最初からそう生まれついていたはずなのでしょう。しかしこの経験は、チャーリィのIQが元に戻ってしまっても、きっとチャーリィのどこかに残っていて、全くの無になってしまうことはないと思います。その後のチャーリィが幸せであったことを祈るのみです。

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