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このページは、マイクル・カンデルの本の感想のページです。

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「図書室のドラゴン」ハヤカワ文庫FT(2007年3月読了)★★

1ヶ月ぶっつづけでカスピドールのドラゴンたちと戦い、マクガルヴィーランドで休息と気晴らしをしているのは、シャーマン・ポッツ。カスピドールでのシャーマンはサー・シャームであり、ハイテクばりばりの軽量タイプの鎧姿で7人の騎士たちとパーティを組んで、共にドラゴンと戦うのです。しかしこれはミスター・マクガルヴィーの図書室の本の中の出来事。普段のシャーマンは吃音と赤面症に悩む思春期真っ只中の16歳の少年。1年以上前に、ヒステリーの母親と手のかかる妹のせいで重いため息を23回ついた時に転相(フェイジング)を発見し、それ以来ため息1つで転相し、様々な世界で冒険を続けているのです。(「IN BETWEEN DRAGONS」大森望訳)

シャーマン・ポッツとしての現実の世界と同時進行で 、いくつもの世界の物語が繰り広げられていきます。まず図書室のあるマクガルヴィー・ランド、ここには魔法の図書室があり、様々な冒険の元となっています。そして冒険をするのは、ドラゴンの脅威にさらされ続けているカスピドール(ここでのシャーマンはサー・シャーム)、超能力悪鬼と戦う近未来のニューヨーク(シャーム巡査部長)、SFのスペースコロニーの世界(シャーム司令官)など、様々な世界。その都度、シャーマンの一人称も「ぼく」「わたし」「おれ」などに変わります。シャーマンはそれぞれの世界で尊敬されるヒーローを演じているのですが、ある日「情欲の子猫たち」というエロ本を図書室に持ち込んでから、その世界がゆがみ始めるのです。
しかしこれだけなら、本好きならいかにも楽しめそうなユーモア・ファンタジーのように思えるのですが、これがなかなかの難物でした。設定の説明の前に世界が次から次へと移り変わって分かりにくいですし、根本にあるのがシャーマンの青臭い青春物語。吃音と赤面に悩みながらも、徐々に成長していく主人公を描いているとも言えるのですが、この部分にあまり魅力を感じなかったためか、冒険物語もただの夢物語のよう。シャームがいくら「本当のぼくはこうではない」と訴えるかのように活躍しても、電話口でシューシューと蛇のような音を出しているシャーマンこそが本来の彼自身。ただの現実逃避にしか思えませんでしたし、女の子は外見だけではないという部分も、逆に外見重視主義の裏返しのようで、取って付けたようにしか見えませんでした。

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