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このページは、シャーリイ・ジャクソンの本の感想のページです。

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「ずっとお城で暮らしてる」創元推理文庫(2008年3月読了)★★

メリキャットことメアリ・キャサリン・ブラックウッドは18歳。姉のコンスタンスと、ジュリアンおじさんと3人暮らし。両親と弟のトマス、ジュリアンおじさんの妻・ドロシーは、6年前に砂糖壷の中に入っていた砒素のために死亡しており、コンスタンスが一時その事件の容疑者となっていたため、それ以来コンスタンスは自分の庭から先へは行くことが全くない状態。しかもジュリアンおじさんは車椅子暮らしのため、メリキャットが毎週火曜日と金曜日に村に行って食料品を買い、図書館で本を借りてきている日々。3人のブラックウッド家は村の名家であり、住んでいるロチェスター屋敷は村で一番美しい家。しかし事件のせいで村人たちのブラックウッド家に対する反感は強く、村に行くたびにメリキャットは村人たちに蔑まれたり、子供たちにからかわれたりするのです。(「WE HAVE ALWAYS LIVED IN THE CASTLE」市田泉訳)

読み始めた時は、メリキャットに対する村人たちの悪意の強さが印象的。村人たちには集団の強さを感じますし、彼女が村人たちを見るたびに「みんな死んじゃえばいいのに」と思っているのも、1人きりのメリキャットの精一杯の強がりのように見えます。しかし実はメリキャットの悪意の方が遥かに強かったのですね。読み進めるにつれて気がつかされるのは、メリキャットの底知れない憎悪の感情。それは1人きりになると何もできない村人たちの悪意などよりも、遥かに強いもの。物語はメリキャットの視点で進むため、読んでいてもなかなか気づかなかったのですが、一度メリキャットの世界の歪みに気づいてみると、それはとても不気味な世界。知らず知らずのうちに、読んでいる私の世界までもが微妙に歪んでいるような気がしてきます。ミステリ作品だとばかり思って読み始めてしまった私には、最後まで今ひとつぴんと来なかったのですが、メリキャットの造形やその歪みぶりの描写が見事で、ホラー好きな読者には高い評価をされそうな作品です。
村の子供たちの歌う「メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん、とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット」という歌が、まるでマザーグースの歌のようで不気味な雰囲気を盛り上げています。

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