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このページは、バリー・ヒューガートの本の感想のページです。

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「鳥姫伝」ハヤカワ文庫FT(2005年1月読了)★★

暦は3337年。唐代中国の長閑な田舎の村・琢谷の庫福(クーフー)村で、子供たちが突然謎の病に倒れます。意識を失い、仮死状態になった子供たちの姿を見て、村の若者・十牛こと陸羽(ルーユー)は、助けを求めるために五千銭を持って北京へ。そして貧しく薄汚い酒好き、しかし実は78年前の科挙でなみいる秀才たちを退けて状元及第を果たしたという李高(リーカオ)老師を村に連れ帰ります。李高によると、この謎の病気の治療法はただひとつ、大力参(だいりきじん)という幻の薬草を使うこと。李高の昔馴染みであり天敵である皇祖娘子(こうそじょうし)が大力参を持っているという情報を得て、李高と十牛は早速大力参を求める旅に出ることに。(「BRIDGE OF BIRDS」和爾桃子訳)

中国を舞台にした十牛と李高老師の3部作の1作目。1984年度世界幻想文学大賞受賞作。
舞台は唐初期、太宗皇帝の時代ですが、唐代には存在しないはずの「北京」や「秦王」が登場するなどツッコミどころは満載。しかし原著には「A Novel of an Ancient China That Never Was」という副題が付いているとのこと、作者も十分分かった上で楽しんで書いているのですね。アメリカ人の書いた中国作品というと、いかにもな東洋趣味に、その勘違い振りが痛々しい作品になってしまいそうなところですが、中国映画にも見ることができそうな猥雑なパワーがある作品だと思います。登場人物の名前や地名、中国特有の固有名詞などがきちんと漢字に訳されているのもありがたいところ。
しかしこの1冊の中に3冊分ほどの内容が詰め込まれているためか、微に入り細に入りという文章の割に、肝心な部分が今一歩言葉足らずになっているような印象もあります。特に冒頭は非常に読みにくく、何度読み返してもまるで頭に入ってこなかったほど。それ以降はましになったものの、いかにもテンポの良い、楽しそうな展開を十分楽しめないまま進んでしまったのが残念でした。読みやすくなったのは、ようやく最終章「鳥姫」に入った辺りでしょうか。この章のラストの情景は非常に美しく、それまでのドタバタぶりとの落差が大きかったせいもあり、強く印象に残りました。

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