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このページは、デイヴィッド・ハンドラーの本の感想のページです。

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「真夜中のミュージシャン」講談社文庫(2001年11月読了)★★★★★お気に入り
かつて売れっ子作家として脚光を浴びていたスチュワート・ホーグ。2作目以降振るわず、現在はゴーストライター。今回の仕事はイギリスロック界のスーパースター・トリス・スカーの回想録。この仕事のために、ホーグは愛犬のルルと共にイギリスへ行き、ロンドン郊外のトリスの家に滞在することになります。始めはそっけないトリスも、徐々に心を開いてデビュー前やデビュー当時の暴露話を始めます。その中には、バンドのメンバーだったパピーが覚醒剤で死亡したのは、実は事故ではなく殺人だったという話もありました。メンバーもしくは、メンバーにかなり近い人物が、パピーの覚醒剤を強い物にすり替えたのではないかというのです。そして回想録の仕事の合間にロンドンへ行ったホーグは、何者かに狙撃されます。幸い弾は当たらなかったものの、どうやら彼に過去を掘り起こしてほしくない人物がいるらしく…。ホーグは密かに真相を求めて動き始めます。(「THE MAN WHO LIVED BY NIGHT」河野万里子訳)

まずこの物語で驚いたのは、50〜60年代に活躍した実在のミュージシャンの名前がどんどん登場すること。トリス自身が超売れっ子のロックバンドだったこともあり、ビートルズやローリング・ストーンズ、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、フーなどの大物ミュージシャンたちがトリスの友達という設定。インタビューに登場するそれらのミュージシャンの話は、とてもリアルで生き生きとしています。この時代のロックが大好きな私にとっては、これでまず物語に引き込まれてしまいました。物語のかなりの部分がトリスや他のメンバーのインタビュー場面で占められており、インタビューという本来なら動きのない場面がとても楽しいのにも驚きました。文章のテンポが良いせいか、全く飽きさせません。それどころか、躍動的な印象すらあるほど。そしてそれらのインタビューを通して、その頃の風俗やファッションなどが鮮やかに見えてくるのも楽しいところです。
インタビューの仕事の合間には、ホーグとかつての妻・メリリーのデートの場面などが挿入されており、これも物語の楽しみの1つとなっています。この2人の会話がなかなか洒落ていていいですね。道の真中でキスをしていて注目を浴びてることに気がついたホーグが、「どこか静かで落ち着く所に行こう。そうしたら、いけないって言われないように、そっと服を脱ごうね。」などと言う場面もあります。最高です。

「フィッツジェラルドをめざした男」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★★お気に入り
今回のスチュワート・ホーグ(ホーギー)の仕事は、若き天才作家・キャメロン・ノイエスの自伝を書く仕事。1作目で華々しいデビューを飾りながらも2作目が書けなかったという経験を持つホーギーと、今まさに同じ状況にあるノイエス。彼は「華麗なるギャツビー」のスコット・フィッツジェラルドににたとえられるような才能と、筋骨隆々で大きな体、ジェームス・ディーンのような繊細で美しい少年の顔、ジョン・マッケンローのようなワイルドな性格を持つ若者。女性関係もかなり派手で、チャールストン・チュウという若き概念芸術家と同棲しながらも、様々な女性との浮名を流しています。そんなノイエスの仕事を引き受けたホーギーでしたが、しかし回想録を書くという仕事は有名人やその周辺の人々の知られたくない過去をも掘り起こしてしまう作業。仕事を始めたホーギーは、今回もあからさまな脅迫を受けます。(「THE MAN WHO WOULD BE F.SCOTT FITZGERALD」河野万里子訳)

ホーギーシリーズ第2弾。誰もが、殺人も辞さないほどの知られたくない過去を持っているようで、有名人の回想録を書くのも大変なのですね。今回のキャム・ノイエスも、「真夜中のミュージシャン」のトリス・スカー同様ミステリアスな存在。インタビューを読んでいても、果たしてどこまで本当のことを話しているのか分かりません。しかしホーギーは、巧みに相手の言葉の中の虚像を見抜きます。このインタビューの場面が、やはり面白いですね。まるで動きがない場面のはずなのに、なぜか目が離せないのです。インタビューを通して架空の大スターの本音が見えてくるからなのでしょうか。
ホーギーとメリリーとの仲は相変わらず。上手くいきそうで、なかなか上手くいきません。しかも今回の物語が始まった時点で、メリリーは激しくお怒り中。ホーギーが電話をかけても、ホーギーだと分かった瞬間、電話を切られてしまう始末です。というのも、ホーギーが「かくも甘き後悔」というタイトルで、有名作家と有名女優の嵐のような結婚生活を描いた自伝的な小説を書いたから。しかしホーギーの受け取った脅迫状や飼い犬のルルが橋渡しとなって、また仲直り。この2人の会話が、やはり洒落ていますね。甘い会話からピリっとスパイスの効いた会話まで、よりどりみどり。おそらくハンドラー氏自身が、ホーギーのようにお洒落な人物なのでしょう。
ストーリーとしてはしっかりミステリなのですが、とても洒落たハードボイルド小説を読んでいるような感覚も。続きを読むのもとても楽しみです。

「笑いながら死んだ男」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★お気に入り
ホーギーの元に、50年代に天才コメディアンとして活躍したソニー・デイから電話がかかってきます。それはソニーの自伝の仕事の依頼。1作目の「ファミリー・エンタープライズ」で一躍文壇の寵児となったものの、2作目がどうしても書けず、結婚生活まで破綻してしまったホーギー。このままでは浮浪者になってしまうのも時間の問題だと、ホーギーは迷いながらもその仕事を引き受け、犬のルルと一緒にビバリーヒルズにあるソニーの家に向かいます。(「THE MAN WHO DIED LAUGHING」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズ。日本では3冊目に刊行されていますが、実質上はシリーズの1作目です。売れっ子作家から一躍「書けない」作家になったホーギーにまわってきたのは、ゴーストライターの仕事。ゴーストライターとしては、これがホーギーの初仕事になります。「フィッツジェラルドを目指した男」に出てくるアーリー・ヴィックもこの作品に登場。「フィッツジェラルドを目指した男」の方で何度も言われていた、「ヴィックを決して怒らせるな」という発言の意味がようやく分かりました。そしてホーギーとメリリーの離婚の時の状況も。ホーギーは本当に踏んだり蹴ったりだったのですね。ここまで追い詰められていたとは可哀想。しかしどん底状態のホーギーも、徐々に復活していきます。
それにしても、ホーギーは最初からインタビューが上手だったのですね。インタビューの対象となるのは一癖もニ癖もあるような人物ばかりなのに、彼は巧みにその人間の素顔を引き出していきます。やはり自分もかつては有名人だったというのが大きいのでしょうか。有名人を目の前にしても媚びたり萎縮したりせず、毅然とした態度を保っているからなのでしょうか。そして毎回のことですが、インタビューの中に登場するかつての大スターたちの素顔の話も面白いですね。しかしこんなに書いてしまって本当に大丈夫なのかと心配してしまうほどです。
「真夜中のカウボーイ」「フィッツジェラルドをめざした男」に比べると、多少ストーリー運びに固さが見られるような気もします。しかしなぜこの作品が3番目に出版されたのか。不思議ですね。

「猫と針金」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★★お気に入り
出版する有名人の自伝が、ことごとくベストセラーとなるホーギー。今回持ち込まれたのは、50年前の大ベストセラーで、映画化も大ヒットしたという「オゥ・シェナンドゥ」の続編を書く仕事でした。「オゥ・シェナンドゥ」は、作者のアルマ・グレーズが、遺言で自分の死後50年は続編を書くことを禁じていたという伝説的な作品。彼女の死から丁度50年たった今、グレーズ家では続編を書ける作家を探していたのです。ホーギーは早速ヴァージニア州へ向かいます。続編の構想はアルマのメモに残っているため、ホーギーはそれを元に書くことになっているのですが、しかしそのノートを受け取った途端、ホーギーは暴漢に襲われることに。(「THE WOMAN WHO FELL FROM GRACE」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズの第4弾。この「オゥ・シェナンドゥ」のモデルとなっているのは明らかに「風と共に去りぬ」ですね。作品の中で「『風と共に去りぬ』よりも、『市民ケーン』よりも、『イエス・ジョルジォ』よりもすごいと。」という表現がされていますが、アメリカ独立戦争時の大農園を舞台にした大河ロマン小説だというのも、作者の死後一定期間続編を書くのが禁じられたというのも、「風と共に去りぬ」を彷彿とさせます。「オゥ・シェナンドゥ」に出演した俳優たちにしても、「風と共に去りぬ」の配役を思い浮かべてしまいます。しかし今回は自伝を書くわけではないので、インタビューの場面はありません。それにカリスマ性のあるキャラクターもなし。これは少し残念だったのですが、その代わりに「真夜中のミュージシャン」に登場していたイギリス人の家政婦のパメラが再登場して活躍してくれます。やっぱり脇役までもがいい味を出しているのが、このシリーズの特徴ですね。ホーギーもメリリーも40歳となり、ますます素敵な2人です。
今回はかなり早い段階で殺人がおき、いつもにも増してミステリ的要素の強い作品となっています。
しかし、今回のこの邦題はなぜなのでしょう。このシリーズの英題は最初3冊が「TheManWho…」で、この4作目は「TheWomanWho…」となっているのに、なぜ雰囲気を統一しないのでしょうか。

このシリーズの中に何度も出てくる会話があります。それはホーギーの名前に関する会話。
「何てよばれてるの?」「ホーギー」「カーマイクルの?」「いや、チーズステーキの」 どうやらカーマイクルの方はHoagy、チーズステーキはサンドイッチの一種で、Hoagieというスペリングのようなのですが、そんなに毎回出てくるほど面白いやりとりなのでしょうか。今回のこの作品で、この「チーズステーキ」がバッファローではなく、フィラデルフィアの名物だというのが分かるのですが…。毎作5〜6回ずつ、新しい人物に名前を名乗るたびに出てくる会話です。どこが面白いのか良く分からないのですが、きっとアメリカン・ジョークなのでしょうね。分かる方がいらしたら、教えて下さると嬉しいです。

「女優志願」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★★お気に入り
今回のホーギーの仕事の相手は、永遠の少年・マシューワックス。彼は、19歳の時に初めてTVシリーズの監督をして以来、「イエッティ(雪男)」「恐竜デニス」など、ハリウッド映画の興行収益ベストテンに自作が5本はくいこんでいるという超大物映画監督です。しかし彼の映画の人気も、最近では興行失敗などから、うっすらと翳りが見え始めていました。私生活でも、妻であり主演女優でもあるペニーロイヤル・ブリムとの離婚騒動の最中。ペニーロイヤルはハリウッドでも悪名高い弁護士・アベル・ゾーチを雇い、完全にマシューと争う態勢に入っていました。マシューの独立映画撮影所・ベッドフォード・フォールズの半分の所有権を要求し、マシューとの結婚生活の暴露本を発表すると宣言。ホーギーはハリウッドに着いた途端に、その騒動の渦中に引きずり込まれることになります。(「THE BOY WHO NEVER GREW UP」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズの第5弾。今回のホーギーの仕事の相手は、映画監督のマシュー・ワックス。このマシューという人物は、スピルバーグがモデルになっているようですね。「イェッティ」「イェッティII」「恐竜デニス」などの映画の題名もなんとなくスピルバーグの作品を彷彿とさせますし、「ファジーなエイリアンとの心温まる映画」なんて「E.T.」そのもの。となると、出てくる俳優もいろいろ実在の有名人を当てはめて想像してしまいます。これがこのシリーズのお楽しみの1つ。
ホーギーの今回の仕事は、純粋な自伝だけでなく、マシューの今度撮る自伝的な映画の脚本製作の手助けも兼ねています。マシューは現在38歳なのですが、「ママとミルクセーキとプライバシーを愛する男」と言われる、未だに少年のような人間。そんなマシューに、現在の「思春期」を乗り越えさせなくてはいけないのです。しかしホーギーの仕事っぷりはさすが経験豊富。昔のトラウマも巧みに聞き出して、乗り越えさせるのに成功します。飴とむちの使い方が本当に上手で、まるで敏腕のセラピスト。そういえばホーギーが自伝を書いた人物は皆絶頂期を過ぎているのですが、ホーギーとの出会いによって、みんな一皮向けていきますね。今回のマシューも、ホーギーとの出会いを通して、これからまた立派に巻き返していけそうです。
物語には「笑いながら死んだ男」のエミール・ランプ警部補が再登場、相変わらずのキュートで着実な仕事ぶりを見せてくれます。そしてこのシリーズでは、やはり良くも悪くも女優が特別な存在。「どうして彼女たちは特別なんだ?」とマシューが言う通り、すべての男性が女優にいいようにされています。あるいは、女優の面をもった女性達に。そして今回はメリリーが最後の最後に大爆弾を落としてくれます。ますますこの後の展開から目が離せません。
しかし前回に引き続き、この邦題にも不満が残ります。

「自分を消した男」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★
ホーギーが今回訪ねたのは人気コメディアンのライル・ハッドナット。彼はアンクル・チャビー・ショーで一躍お茶の間の人気者となったコメディアン。しかし昼日中のポルノ映画館でわいせつ物陳列罪で現行犯逮捕されて番組は打ち切りとなってしまうのです。しかし様々な方面の人間の思惑から、なんと番組の再開が決定されることに。ホーギーはライルのファミリーに迎えられ、番組スタッフの1人として撮影現場に入ります。しかしそこにあったのは、スタッフに憎まれる暴君の姿。建物の外には、反対派の抗議デモ。ライルは、ポルノ映画館での摘発は、誰かに嵌められたのだとホーギーに語ります。そしてアンクル・チャビーの衣装の盗難、番組で使う予定だった日本料理屋のセットの爆破事件、番組のメンバーが食べた昼食のメキシコ料理の異物混入という妨害が続き、さらにはこのクールから新しく加わった俳優のチャドが殺されることに。(「THE MAN WHO CANCELLED HIMSELF」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズの第6弾。今回の仕事は、「笑いながら死んだ男」と同じくコメディアンが相手です。その暴君ぶりとアルコール依存、薬中毒、無軌道な生活ぶりは、「笑いながら死んだ男」のソニー・デイや、「真夜中のカウボーイ」のトリス・スカーと同様です。欧米の有名人の薬中毒率は、やっぱりかなりのものなのでしょうか。現在は薬からも足を洗い、健康的な生活を心がけているライルですが、しかし今回このライルの人間性にあまり深みがなく、他の作品の面々ほどの魅力を感じないですね。ファミリーの女性達もみな彼のお手つきで、「やるなあ」というよりは「またですか」というのが正直なところ。事件になった時に登場するのは、「フィッツジェラルドを目指した男」に登場したヴェリー警部。
それよりも今回の注目の的は、なんと言っても前回メリリーの落とした爆弾の影響。ホギーは傷心のあまり、しばらくルルを連れて南フランスへ行っていたようなのですが、アメリカに帰ってきた彼を待ち受けていたのは、「誰が父親?」という質問の嵐。ここでサム・シェパードだの、メル・ギブソンだの、トム・クルーズだの、実名の名前が次々に登場します。この「子供の父親」が、今回の一番の見所かもしれません。それと、メリリーが出演した映画の話がちらりと出るのですが、「宇宙もので頭を剃ってた」というのは、もしや「エイリアン3」なのでしょうか?!となると、メリリーのモデルとなったのは… それは全く考えてもみませんでした。いつも声が可愛いと書かれているので、姿も可愛いタイプかと思っていたのですが… しかし考えてみれば、今まで出てきたメリリーの描写に結構当てはまるかもしれませんね。そしてホーギーは、映画で自分の役をやるならジェレミー・アイアンズ、と言っています。…なるほど。

「傷心」講談社文庫(2001年12月読了)★★★★
コネティカットの農場にひっこんで暮らしているホーギーとメリリー。メリリーは女優休業中、ホーギーはゴーストの仕事から足を洗って3作目にとりくんでいる最中。しかしその平穏な暮らしは、ホーギーの大学時代からの友人であり師でもあるソア・ギブズによって破られることになります。現在71歳のソアが、18歳の義理の娘のクレスラと駆け落ちして農場へとやってきたのです。 ソアはヘミングウェイの後継者と呼ばれる作家。そして彼の法律上の妻であり、クレスラの実母でもあるルースは、女性解放運動の活動家として有名な女性。ソアとクレスラは今やアメリカで一番悪名高いカップルとなっていました。ソアは、クレスラの本を出すのをホーギーに手伝って欲しいのだといいます。実は気が進まないホーギーでしたが、外見こそエネルギッシュで年齢を感じさせないものの、隠れた老いと疲れを垣間見せたソアに負けて、結局仕事を引き受けることに。(「THE GIRL WHO RAN OFF WITH DADDY」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズの第7弾。今回は田舎の農場に引っ込んでいるということもあり、いつものNYのお洒落な暮らしっぷりはそれほど出てきません。今回一番可愛いのがバセットハウンドのルル。彼女はママをすっかりとられてしまって悲観しており、行動がなんとも可愛いです。例えば、泳げもしないのに、黙って池に向かってズンズン歩いて行ってしまうのですから。犬が自殺をしようとするなんて!確かにルルは以前から、あまり犬らしい犬とはいえない存在なのですが。
今回、ホーギーと父親との葛藤が大きく取りざたされていましたが、思ったほどではありませんでした。ページ数も少ないですし、今回のポイントと言うには、少し弱いような気がします。なのでやはりこの題名にも不満が残ります。なぜ原題にもっと忠実な邦題をつけないのでしょうか?

「殺人小説家」講談社文庫(2005年8月読了)★★★★
ホーギーの元に届いたのは、差出人の名前がない手紙。それは小説家志望者からの、自作小説の第一章でした。その内容は、アンサーマンという男がとある女性と知り合いになり、その女性を殺すまでの顛末を友人「E」に書き送った手紙という形式のもの。一読したホーギーは、そこに秘められた才能に驚きます。しかし小説はレターヘッドもすかし模様もないただの白いタイプ用紙にタイプされており、作者のに関する手がかりは何もない状態。添えられた手紙にも、最後にアンサーマンという名前が書かれているだけだったのです。そして翌日の朝。ニュースを聞こうとラジオをつけたホーギーは、小説の中に登場した女性と名前も特徴もそっくりの女性の死体が発見されたことを知ることに。(「THE MAN WHO LOVED WOMEN TO DEATH」北沢あかね訳)

ホーギーシリーズの第8弾。
小説のストーリーの通りに殺人事件が起きていくというストーリー展開自体はそれほど目新しくないものの、ホーギーとタトル・キャッシュ、そしてエズラ・スプーナーという学生時代の親友同士の話、当時の彼らのエピソードと現在の彼らの姿が、今回の物語の展開に大きく絡んでいきます。青春時代の栄光と人生の悲哀。下手をすると暗くなりやすい展開だと思うのですが、相変わらずのお洒落な語り口で暗さが抑えられ、ほろ苦い青春物語となっています。ホーギーの元妻で、現在一緒に暮らしている女優のメリリー・ナッシュが、「暗くなるまで待って」のスージー・ヘンドリックス役の役作りのために毎日何時間も暗闇の中を歩き回っているというのも効いていますね。
しかしこのシリーズ、これを最後に続編が出ておらず、新シリーズが始まっているようです。これでお仕舞いになってしまうのでしょうか。もしそうならとても寂しいですし勿体ないですね。バセット・ハウンドのルルはもちろん、1歳半のトレーシーも可愛い盛りですし、意外なカップルのその後の生活ぶりも気になります。まだまだホーギーとメリリーのお洒落な会話を楽しみたいです。
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