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このページは、ポーラ・ゴズリングの本の感想のページです。

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「ウィッチフォード連続殺人」ハヤカワ文庫HM(2004年3月読了)★★
ロンドンの大学病院で内科の診察専門医をしていたジェニファー・イームズは、ウィッチフォードで開業している伯父のウォリーに懇願され、彼の仕事を引き継ぐためにウィッチフォードへ。ここはジェニファーが14歳まで住んでいた土地。そして伯父の年下のパートナーだったデーヴィッド・グレグソンとパートナーを組むことになります。その頃、ウィッチフォードでは、女性が喉を切り裂かれて死亡するという事件が起きていました。捜査のために現地を訪れたのは、リューク・アボット主任警部とパディ・スミス部長刑事。リュークもまたウィッチフォード出身で、ジェニファーとは昔馴染みだったのです。(「THE WYCHFORD MURDERS」秋津知子訳)

日本で最初に紹介された作品ですが、実はゴズリングの7作目。
女性ばかりを狙った連続切り裂き魔といえば、切り裂きジャックのようでもあるのですが、こちらの事件は実際にはかなりの残虐なことが起きている割に、それほど凄惨な感じはしません。読んでいると事件よりもイギリスの田舎町の情景が目の前に広がってくるようで、それほど緊張感が感じられないせいでしょうか。どちらかといえば、ノスタルジックな雰囲気。むしろジェニファーの恋の行方の方が気になりました。しかしこちらも、それほどの急速な進展があるわけではありません。それぞれに離婚経験があったり、配偶者に先立たれたり、逃げられたり、もしくは母親からの圧力があったりと、様々な出来事がトラウマとなって、なかなか素直な気持ちでは行動できないようです。しかしそれぞれの人生の苦味が感じられ、ゆっくりな進展が逆に好印象ですね。

「逃げるアヒル」ハヤカワ文庫HM(2004年1月読了)★★★
サンフランシスコ広告会社の制作チーフをしているクレア・ランデルは、仕事帰りに乗ったタクシーで、左腕から出血しているのを見て驚きます。タクシーをつかまえようと走っていた時、気付かないうちに何者かに狙撃されていたのです。狙撃者がいたと思われるビルの屋上の状況から、警察は当初変質者の仕業と考えます。しかし1晩病院に泊まって帰ってきたクレアのアパートで、今度はクレアの恋人のダンが開けた冷蔵庫が爆発。そしてクレアの日曜日の行動から、エジソンという名の殺し屋が浮かび上がってくることに。それは狙撃事件専門のマルチェック警部補が追いかけていたドンデロ殺しの犯人。マルチェックはクレアを隠れ家に移し、24時間体制で警護することに。(「A RUNNING DUCK」山本俊子訳)

ゴズリングのデビュー作にして、英国推理作家協会(CWA)最優秀新人賞受賞作品。
エジソンの存在がなぜそれほど簡単に浮かび上がるのかという疑問はありましたが、ベトナム戦争で狙撃兵となったマルチェック刑事の心の揺らぎや、プライドの高い殺し屋の姿が面白く、サスペンス部分はとても楽しめました。しかし肝心の主人公であるクレアの姿が、結局最後まで見えてこないまま。そのせいか、彼女のロマンス部分も、どうにも取ってつけたように感じられてしまいました。「わたくし」「血が出てますの」という、翻訳によるクレアの言葉遣いが気になってしまったというのも大きいかもしれません。
この作品は、どうやらスタローン主演の「コブラ」の原案となっているようですね。あとシンディ・クロフォードの「フェア・ゲーム」も。どちらも、この原作とは似ても似つかなくない話となっているようですが。(笑)
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