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このページは、ジェフリー・ユージェニデスの本の感想のページです。

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「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」ハヤカワepi文庫(2006年4月読了)★★
リスボン家の5人の姉妹が次々に自殺。最初に自殺したのは、まだ13歳だった末っ子のセシリアでした。彼女はまず入浴中に両手首を切り、その時は救急隊員に助けられるものの、家に戻って2週間後、セシリアの快気祝いのパーティの日に、2階の窓から身を投げるのです。そして1年後。14歳のラックス、15歳のボニー、16歳のメアリイ、17歳のテレーズがセシリアの後を追うことに。それは6月の、ヘビトンボの季節のことでした。(「THE VIRGIN SUICIDES」佐々田雅子訳)

セシリアの自殺をきっかけに、「自殺」に魅入られ始めたリズボン家の5人姉妹。美しい姉妹たちに一体何があったのか、姉妹たちに憧れ、いつも見つめていた「ぼくら」が調べてまとめ上げたという体裁の作品。この題名も強く印象に残りますが、中身もその題名に相応しく一種異様な雰囲気ですね。厳格な母親に、男の子とのデートはもちろんのこと、男の子といちゃつけるような機会は全て排除されていた姉妹たち。常にだぶだぶの服を着せられて、化粧を固く禁じられています。しかし日々成熟していく彼女たちの美しさを隠すことは、誰にもできなかったのです。作品の内容自体は陰鬱なのに、むしろ陰鬱だからこそ、ここまで彼女たちの美しさが際立つのでしょうか。彼女たちは美しいまま、淡々と死へと向かっていきます。そしてそれは、とても静かな凄惨さを描き出します。
しかし解説には70年代のアメリカを象徴しているようなことが書かれていましたが、その辺りのことは、正直あまりピンときませんでした。ただ、彼女たちの死に行く過程を見つめるのみ。しかし本当は彼女たちを守ろうとしていただけの母親の愛が、結局彼女たちをここまで追い詰めてしまったのですね。姉妹たちが反抗しようとしても、一旦内側に向かって閉じられてしまった家族の世界の強固さは想像以上。生半可な気持ちでは、外からは触ることもできないほどの強さです。この両親に育てられた歳月の重さ、そして呪縛の強さを感じさせられてしまいます。
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