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このページは、エリザベス・エンライトの本の感想のページです。

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「指ぬきの夏」岩波少年文庫(2009年10月読了)★★★

この何週間というもの雨が全く降らず、その日も気温は43度。空はなめした皮のようにてかてか光り、地面は熱気で固くつっぱり、夜になれば雷が轟くのに、雨は一滴も降らないという状態。このままではエン麦もトウモロコシも収穫できなくなってしまうと、9歳半のガーネットも心配していました。しかしその日の夕食の後、11歳の兄のジェイと一緒に川に泳ぎに行ったガーネットは、水が減って川底が現れたところで砂に半分埋まっていた銀の指ぬきを見つけたのです。それが魔法の指ぬきだと信じるガーネット。そして実際、その日の晩何週間ぶりの雨が降り、ようやく楽しい夏の日々が始まったのです。(「THIMBLE SUMMER」渡部南都子訳)

1930年代のアメリカのひと夏の物語。日照りの描写が続く序盤では、正直、このまま読み続けるかどうか迷ったほどの重苦しさだったのですが、指ぬきが見つかってからは、一気に楽しい冒険物語となります。私は読みながらローラ・インガルス・ワイルダーの「農場の少年」を思い出したのですが、そういう古き良きアメリカを堪能できる物語ですね。1939年のニューベリー賞受賞作品。挿絵は挿絵画家でもあるエンライト自身によるもの。
天候に左右される農場の生活は決して楽ではないものの、その土地を愛し、その土地での生活を謳歌しているガーネットたち。天候に一喜一憂し、請求書が来れば帳簿とのにらめっこ。しかしその生活は決して「貧しい」ものではないのですね。物は豊富ではないかもしれませんが、心はとても豊か。時には面白くないことがあって家出を敢行することもあるガーネットですが、そんなガーネットを見つめる周囲の大人の目に温かく包みこまれるよう。怒りからそんな衝動的な行動をとったガーネットにも伝わり、しみ込んでいきます。読んでいて一番好きだったのは、終盤の、エリックが自分が将来したいことの話をしている場面。このエリックは、両親を失って以来、苦労してきた少年。最初は警戒心が強く、自分のことを話したがらなかったエリックなのですが、器用で働き者のエリックはみんなに可愛がられ、いつしかここの土地に馴染んでいくのです。このエリックを最初に迎えた時のガーネットのお母さんの態度も温かく、何ともいえず良いエピソードですね。

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