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このページは、S.L.エングダールの本の感想のページです。

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「異星から来た妖精」ハヤカワ文庫FT(2006年3月読了)★★

アンドレシアと呼ばれる惑星に問題が起こり、探査隊が派遣されることに。父親が探査隊長に任命されたこともあり、現地に向かう宇宙船に乗せて貰うよう頼み込んだエレーナは、宇宙船に乗るだけでは満足せず、上陸隊員でもないのに勝手にアンドレシアに上陸してしまいます。上陸したのはエレーナの父、エレーナの婚約者とも言えるエブレック、そしてイルーラという女性の3人。アンドレシアは幼年期の文明にあり、その豊かな資源に目をつけた若い帝国の探検隊が、新たにここを植民地にしようと見事な森林地帯をパワーショベルで切り拓いていました。基地作りだけ手伝って宇宙船に帰ることになったエレーナでしたが、荷物を降ろして送り返す船が離陸した途端、そこに帝国の男たちが現れたのです。船の存在から彼らの気をそらすためにイルーラは彼らを攻撃、その瞬間彼女は彼らの武器によって攻撃されて消滅。そして目の前で起きた惨事に衝撃を受けたエレーナは、イルーラの代わりを務めることに。(「ENCHANTRESS FROM THE STARS」渡部南都子訳)

1971年度ニューベリー賞受賞作品。
木樵りの青年たちが出会った「仙女」が、実は他の惑星からやってきた異星人だったという設定はとても面白いですね。もしかしたら、この世に存在する様々な童話に登場する妖精などの不思議な存在も、実は宇宙から来た人々だったのか、などと思わせてくれるほど。そして成熟した文明を持つ人々が発展途上の文明を持つ人々を下手に手助けすることによって、その文明が進歩する芽を摘んでしまうという部分にも説得力があります。知識を頭に詰め込んでいるだけで、まだまだ実感するところまでいっていないエレーナの存在とも重なりますし、地球上でも同じことが行われていることを指摘しているようでもあります。確かに痛い目に遭わなければ、人間も文明も進歩できないものなのかもしれませんね。しかしこの物語には、エレーナが書いたという大前提があるのです。ここに書かれたどの場面も、所詮はエレーナの主観。エレーナが理解できる範囲のことが、エレーナの立場から書かれているというのが、読んでいるとすぐに頭をよぎってしまうのが、私にとっては大きなネックでした。そういった前提がなく、作家であるエングダールの神の視点から書かれていれば、もっとすんなりと受け止めやすかったのではないかと思うととても残念。失敗を重ねながらも成長をしていくエレーナという少女の成長物語となっているのですが、幼年期の文明を完全に見下していたエレーナに感情移入できなかっただけでなく、知識だけはあっても、本質的な意味では頭の悪いエレーナに苛々させられたこともあり、あまり楽しめませんでした。それに彼女の視点からの物語となると、ファンタジーというよりもSFですね。

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