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このページは、アーロン・エルキンズの本の感想のページです。

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「古い骨」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
モン・サン・ミシェル湾にいたギヨーム・デュ・ロシェが上げ潮に遭い、流砂に足を取られて溺死。ギヨームはロシュボン館の当主であり、第二次大戦中にレジスタンスの英雄と称えられた老富豪。その日は重大な発表があるからと、自分の館に親族9人を呼び寄せていました。残された遺族たちはギヨームの葬式を執り行い、弁護士のジョルジュ・ボンファントからギヨームの遺言書の内容を聞くことになります。しかしその直後、台所の排水管の修理に来ていた職人が地下室から古い人骨を掘り出したのです。サン・マロでの第8回科学捜査会議に出席していたOPJ(司法警察局)のルシアン・アナトール・ジョリ警部は、白骨発見の連絡を受け、講師として来ていたワシントン大学人類学教授・ギデオン・P・オリヴァー博士、そしてその場に居合わせたFBI捜査官・ジョン・ロウと共に現場に向かいます。(「OLD BONES」青木久恵訳)

スケルトン探偵・ギデオン・オリヴァー博士のシリーズ。日本ではシリーズ中初めて訳された作品ですが、実際には4作目。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞受賞作品。
骨を調べるだけで様々なことを看破してしまうところから、スケルトン探偵の異名を持つギデオン・オリヴァー博士。ギデオンがその骨の持ち主だった人間のことを次々と言い当てていく場面は、まるでシャーロック・ホームズのようですね。たった1片の骨からでも人種、性別、身長体重、体格、病歴など本当に様々なことが分かってしまうだと知り驚きました。ギデオンの骨に関する薀蓄もとても面白かったですし、何よりも「骨」からの推理という点がミステリ作品としてとても個性的。しかも骨に関しては自信満々のギデオンも、事件の推理となるとなかなか正解に辿り着けないのがご愛嬌ですね。ギデオン自身が外の世界をまるで知らない学者一筋の人間ではなく、ユーモアもウィットもある人間であることがまた良かったです。
ミステリとしては王道でしょうか。どこか懐かしい雰囲気が感じられます。ロシュボン館に集まった面々の名前や人間関係がなかなか理解できず、前半はかなり苦戦してしまいましたが、それらしい動機を持つ人間ばかりが集まっていて楽しませてくれますし、モン・サン・ミシェル湾での事故と古い事件との繋がりも良かったです。モン・サン・ミッシェルの上げ潮のシーンも迫力でした。なぜロシュボン館にジョン・ロウも自然に同行することになったのかが分からず、そこだけは少し引っかかってしまったのですが、ギデオンとジョン・ロウは以前からコンビを組んでいたのですね。この2人のやり取りもとても楽しかったので、ぜひもっと読んでみたいものです。ジョリ警部の存在もインパクトが強く、いい味を出していました。

「呪い!」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ジュリーと結婚して2年、新しい学校で正教授としてのスタートを切って1年半。その間フィールドワークに出ることもなく教室と研究室で過ごしたギデオン・オリヴァーは、論文にもすっかり行き詰りを感じていました。そんな彼にかかってきたのは、恩師のエイブ・ゴールドスタインからの電話。現在エイブはメキシコのユカタン半島のトラロック遺跡で発掘作業中。遺跡から白骨が出てきたこともあり、ギデオンとジュリーもぜひトラロックで発掘作業を手伝わないかというのです。トラロックは10年前に発見されたマヤの小規模な祭祀センターなのですが、数年前に絵文書の盗難事件がおきて以来、今回エイブが発掘を再開させるまで封鎖されたままになっていました。遺跡からは、新たに人骨とマヤ文書が発見されます。そして呪いの書であったその古文書に書かれた通りの出来事が隊員たちを襲い始めるのです。(「CURSES!」青木久恵訳)

スケルトン探偵シリーズ2作目。実質的には「古い骨」の次の5作目にあたります。
このシリーズの楽しみの1つは、毎回違う場所が舞台となっていて旅行気分が味わえること。今回はマヤの遺跡トラロックが舞台となっており、モン・サン・ミッシェルやイギリスの田園地帯やアメリカの国立公園と比べても、なかなか訪れる機会のない場所なのでとても興味深く面白かったです。マヤの呪いの書に書かれているような出来事が次々に起こるとは言っても、実際にはかなり適当。状況を都合良く利用して、お手軽に実行しているといった感じです。時には思わず笑ってしまうようなものもあれば、「そう解釈するのか」と感心するもののあり、どれもいかにも人間の仕業なのですが、そこがまた超常現象などではない、人間の悪意を端的に表しているのですね。ミステリとしては、裏をかいているようでいて、実はとてもオーソドックスなのではないかとも思いましたが、それでもマヤ遺跡という舞台背景にはとても合っていて面白かったです。
発掘のメンバーも個性派揃いですが、やはりその中でもエイブはいい味を出していますね。

「暗い森」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ワシントン州のオリンピック国立公園で人骨が発見されます。その骨はFBI捜査官のジョン・ロウからギデオン・オリヴァーの手に渡り、6年前に国立公園の雨林内で行方不明になっていたノリス・エカートのものと判明。しかしその骨に刺さっていた凶器は、骨の穂先を持つ槍。その辺りに昔住んでいたインディアンが使っていた物ととても良く似ていたのです。しかし現在国立公園付近に住んでいるインディアンといえば、クィリウート族とクイナルト族のみ。現在の彼らは養魚場とモーテル経営にいそしんでおり、槍を持って走り回るインディアンなど既にいないはずなのですが…。(「THE DARK PLACE」青木久恵訳)

スケルトン探偵シリーズ3作目。実質的にはシリーズ2作目。1作目は訳されていないので、現在日本語で読める一番古いスケルトン探偵の作品です。
ギデオン・オリヴァーと主任公園保護官・ジュリー・テンドラーの出会いの作品でもあります。「古い骨」を先に読んでしまっているので、ロマンスの行方は既に分かってしまっているのですが、3年前に亡くした妻・ノーラのことを思いつつも、ジュリーに惹かれていくギデオンの描写が微笑ましいです。そして「古い骨」で当然のようにギデオンに同行していたFBI捜査官・ジョン・ロウとは、ジョン・ロウがヨーロッパでNATO勤務をしていた時からの旧知の仲だったのですね。この辺りのエピソードもぜひ読んでみたいところなのですが、作品としてはまとめられていないのでしょうか。
今回は何といっても、雨林の描写が迫力。鬱蒼とした薄暗い森の情景やその空気が目の前に浮かび上がってくるようで、そんな情景を背景に失われた文化を持つ部族の悲哀さがひしひしと伝わってきました。それでもジュリーとのロマンスが常に存在しているせいか、重苦しくなりすぎないのがいいですね。今回お初のギデオンの恩師・エイブ・ゴールドスタインもとてもいい味を出していて、彼の今後の活躍がとても楽しみになってしまいます。

「断崖の骨」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ギデオンとジュリーは、イギリスを気の向くままにのんびり散歩して回る新婚旅行中。途中、ギデオンは大ドーチェスター歴史考古学博物館の館長をしているホール-ワディントン教授を訪れ、3万年前のパウンドベリー人の頭蓋骨、通称パミーを見せてもらうことに。しかし展示されていたのは、3万年前の老齢のパウンドベリー人男性の骨ではなく、2〜3000年前の20代女性の骨。パウンドベリー人の骨は何者かに盗まれていたのです。さらにギデオンは、ストーンバロー・フェルで考古学発掘に携わっている旧友・ネイト・マーカスを訪ねるのですが、発掘中の遺跡では何やら不穏な空気が流れており…。 (「MURDER IN THE QUEEN'S ARMES」青木久恵訳)

スケルトン探偵シリーズ4作目。実質的には「暗い森」に続く3作目という作品。
今回の舞台はイギリスのドーチェスター近郊の田園地帯。のんびりと長閑な風景を楽しむはずが、あちらに行ってもこちらに行っても、結局騒ぎに巻き込まれることになり、なかなか2人っきりにはなれないようですね。しかも今回ギデオンは白骨だけではなく、腐乱死体の鑑定までさせられることになります。いくら白骨には慣れていても、まだ肉のついた死体というのはまるで別物。素人と同じような反応をしているギデオンの姿が微笑ましかったです。それでもきちんと見るべき所は見ていて、さすがですね。今回、専門家がそれほどあっさりと騙されてしまうものなのかという点がやや不審ではあったのですが… 象牙の塔の住人にはやはり色々とあるものなのですね。
ギデオンとジュリーの2人はとにかく仲が良くて、終始熱々ぶりを見せ付けてくれますし、ユーモアたっぷりでお洒落な会話もとても楽しかったです。私にとってお洒落な会話と言えば、デイヴィッド・ハンドラーのホーギーシリーズなのですが、それを思い出させるような雰囲気。やはりいい味を出していますね。

「氷の眠り」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ワシントン大学ポート・アンジェルス校での秋期授業が始まる1週間前。アラスカのグレイシャー・ベイ国定公園で行われる遭難救助研修に参加するジュリーに同行し、ギデオンもグレイシャー・ベイロッジに滞在していました。同じ時期、このロッジに滞在していたのは、丁度30年前にこの地で遭難した植物調査チームの関係者一行。ただ1人生き残ったM.オードリー・トリメイン教授が著作を出版するに当たり、当時チームのサブリーダーだったアンナ・ヘンケル博士と、亡くなった3人の若者の親族と共にこの地を訪れていたのです。そして氷河に出かけた教授たち一行は、犠牲者となった若者の骨らしき物を発見。丁度ロッジに居合わせたギデオンがその骨を鑑定することになるのですが、その骨に殺人の証拠らしきものがあるのに気付いて、事態は混乱することに。(「ICY CLUTCHES」嵯峨静江訳)

スケルトン探偵シリーズ5作目。
ギデオンが骨から思わぬ事実を見つけてしまったことから事態は混乱。ハワイ育ちで、寒いところが大嫌いなジョン・ロウがアラスカまでやって来ることになります。今回の謎解きに関しては少々どこかすっきりしなものを感じてしまったのですが、骨が見つかったと聞いた時のギデオンの反応が可愛いですね。ジュリーとジョンの爆笑に戸惑ったギデオンへの、ジュリーの説明がとても可笑しくて、想像して思わず笑ってしまいました。
そして今回は、ジュリーが説明した氷河のしくみがとても興味深かったです。ティアクーの流動率から計算した位置が現在の位置にぴたりとはまるところなど、理系ミステリな面白さ。そして新しいアイディアをどちらが先に発表するかという話において、進化論のダーウィンとウォレスが引き合いに出されていたのも説得力があり、とても興味深かったです。

「遺骨」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★★
第6回WAFA隔年会議、司法人類学西部連盟の会合が、オレゴンのホワイトバーク・ロッジにて行われることになります。その年の幹事は、セントラル・オレゴン自然史博物館人類学芸員ミランダ・グラス。ギデオン・オリヴァーもジュリーと共にオレゴンへと向かうことに。そしてFBI捜査官のジョン・ロウもまた、犯罪現場の注意事項についての講義を行うことになり、オレゴンへ。しかしその会議の初日、博物館の常設展示として新たに展示されることになった、前全米司法人類学協会会長のアルバート・エヴァン・ジャスパーの遺骨が何者かに盗まれてしまうのです。アルバート・ジャスパーは形質人類学の先駆者の1人。10年前に催された引退パーティが、WAFA発足のきっかけとなっていました。しかしジャスパー自身は、そのパーティの直後のバスの事故で死亡。そして会議の2日目、今度はギデオンが死体が埋まっていると思われる場所を発見して…。(「MAKE NO BONES」青木久恵訳)

スケルトン探偵シリーズ6作目。
今回面白かったのは、素人目にはごく普通に見えるであろう地面から、ギデオンが白骨死体が埋まっていることを推測すること、そしてその白骨死体の頭蓋骨を使ってギデオンが復顔法の実演をするところ。そしてそこで出来上がった顔から、あっと驚く事実が判明するところですね。専門家が一堂に会しているだけあって、場面描写にいつも以上の迫力が感じられました。それに土壌圧縮地などというものがあったとは全く知りませんでした。死体の埋め方1つに関しても気が抜けないものなのですね。死体が埋められている深さやその姿勢まで分かってしまうとは驚きです。よりによってこの場所が司法人類学者たちの会議の開催地に選ばれてしまうとは、犯人も気が気ではなかったでしょうね。最後まで読んでから、思わず遡って犯人の描写を探してしまいました。
地元の保安官事務所のファレル・ハニーマン警部補もなかなかいい味を出していますね。

「死者の心臓」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ホライズン財団は、フィラデルフィアに本部を置く非営利団体。この団体の理事・ブルーノ・グスタフスンの依頼で、ギデオン・オリヴァーは教育用ビデオのナレーターの1人としてエジプトを撮る撮影隊に参加することになります。気が向かないながらも、エイブ・ゴールドスタインの推薦があったと聞き、しぶしぶ引き受けるギデオン。しかしエジプトに到着したギデオンたちを待っていたのは、エジプト学研究所の裏庭の物置き場に棄てられていた人骨の謎。そしてエル・アマルナやデンデラ、その他古代エジプトの奇跡を撮影するためにナイル川遡っていた時、ハドン所長が謎の転落死を遂げて…。(「DEAD MEN'S HEARTS」青木久恵訳)

スケルトン探偵シリーズ7作目。
今回の舞台はエジプト。今回もエジプト人の気質はもちろん、エジプトの雰囲気が表から裏まで楽しめます。エジプトも一度行ってみたいと思う国ですが、昨日は存在しなかったし、明日はもう存在しないであろう規則が存在するとは、想像以上に大変そう。この他の描写もどれもとてもリアルなのですが、アーロン・エルキンズは実際にエジプトでこの作品に出てくるような経験をしたのでしょうか。羨ましくなってしまいます。(特に食べ歩き場面) しかし事件が起きるのがいつも以上に遅いですね。事件が起きる前からギデオンによる骨の鑑定があり、職業は書記だと鑑定したその骨が後半にまで繋がってきて、それが今回とても面白いところのですが、いかんせん少々間延びしているように感じられてしまいました。そのせいか、ギデオンが自分から事件に首を突っ込む部分も、少々やりすぎのような印象。そうでなくても危機一髪状態になることが多いのですから、行動はもう少し慎重にして欲しいところです。
フィルは普段はアメリカにいるようですが、アメリカにいる時とエジプトにいる時と、同じフィルなのにその能力の発揮され方が全く違うのが面白いですね。なんだかとても説得力がありました。それと、シリーズでお馴染みの人物が1人、知らない間に亡くなっていたのですね。これはとてもショックでした。

「楽園の骨」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
FBI捜査官・ジョン・ロウの親戚、ブライアン・スコットがキャンプをしていたライアテア島で死亡します。ブライアンは、ジョンの伯父・ニック・ドルーエットの娘のテレーズの内縁の夫。ニックが経営している<パラダイス・コーヒー>の業務責任者として仕事をしていました。事前に、ハワイのパークレンジャーをしている姉のブレンダ・ホウから、タヒチで妙なことが起きているらしいという連絡を受けていたジョンは、事故ではなく殺人なのではないか、過去にニックが恨みを買っているマフィアの仕業なのではないかと考えます。ブライアンが発見されたのが死亡から1週間も経った後であり、既に埋葬されたと聞いたジョンは、ギデオンに遺体を調べてもらおうと発案。一緒にタヒチへと飛ぶことに。しかしニックから保健所に出されているはずの遺体発掘の要請は、いつの間にか取り下げられていたのです。(「TWENTY BLUE DEVILS」青木久惠訳)

スケルトン探偵シリーズ8作目。
今回、物語はハワイ島の火山国立公園から始まりますが、主な舞台は南太平洋に浮かぶ島・タヒチ。そして「古い骨」以来の、愛妻・ジュリーとの別行動となります。
毎回のように、骨は古ければ古い方が好きだと公言しているギデオンですが、今回もかなり新しい骨を扱うことになります。それもまだまだ肉が残っている、掘り出し立ての骨。そんな苦手な肉付き骨を、食肉軟化剤や漂白剤でギデオン好みのさらさらの白い骨にすることになるのですが、この作業のためにギデオンがジョンに買い物を頼む場面がユーモラスでとても面白いですね。そして、事件の謎解き自体はそれほど意外でもなかったのですが、今回はジョン・ロウの親戚一同が総出演。現地の捜査担当・レオポール・ベルトー大佐や警察医のヴィエノも交えて、タヒチののんびりした雰囲気が十分堪能できました。ジョンの伯父がコーヒー農園を経営しているだけあって、コーヒーの描写はかなり美味しそうでそそられます。自分に味の違いが分かるかどうかはともかく(おそらく分からないでしょう)、テイスティングや乾燥度チェックなどしてみたくなってしまいます。それに今回、家庭内の対立や確執はあるのですが、それでも大家族というものはいいものだなと改めて思うような、暖かい雰囲気を持つ作品でした。

「洞窟の骨」ハヤカワ・ミステリアス・プレス(2005年4月読了)★★★★
ギデオンが<科学のフロンティア>シリーズの1冊を執筆することになり、その研究調査の都合に合わせて、ドイツのネアンダー渓谷からイギリスのオックスフォードとサセックス、そしてフランスのドルドーニュを見て回る予定を立てていたギデオンとジュリー。そこにフランスのルシアン・アナトール・ジョリ警部からの電話が入ります。フランスに入った時はジョリ警部とも会う約束。しかしレゼジーの旧石器時代の洞窟と思われた場所で骨が発見され、ドルドーニュ県の県庁所在地・ペリグーに転勤になっていたジョリ警部が事件の担当となったので、ギデオンにもっと早くフランスに来られないかというのです。骨と聞いたギデオンは、早速スケジュールを変更、フランスへと飛ぶことに。(「SKELETON DANCE」青木久惠訳)

スケルトン探偵シリーズ9作目。
「古い骨」で登場したジョリ警部が再登場。今回もいい味を出しています。特に、謹厳タイプのジョリ警部が自分のファースト・ネームを口にするたびに言う「あっはん」が可愛いですね。前回はあまり見えてこなかった、ジョリ警部の素顔や私生活が、今回色々と見えたのがとても楽しかったです。
舞台となっているドルドーニュのレゼジーは、クロマニヨン人やネアンデルタール人など先史時代の遺跡が多く残っている場所。「タヤックの老人」と呼ばれる捏造事件も現実の殺人事件に絡み、クロマニヨン人とネアンデルタール人に関する、なかなか面白い議論が進みます。たとえば、髭を剃ってジョギング・スーツを着たネアンデルタール人をニューヨークの地下鉄に乗せたらどうなるか。そしてそれがもしパリの地下鉄(メトロ)だったら… 思わず想像して笑ってしまいました。ギデオンの骨の鑑定も相変わらず冴えていますね。しかし生々しい死体が嫌いだと言う割に、何だかんだと解剖の場面に居合わせなくてはならなくなるギデオン。徐々に死体に関しても詳しくなっているようなのが可笑しいです。そしてそんなギデオンの講義を毎回聞かされることになるジュリーも、骨についてすっかり詳しくなっていますね。

P.70「分別のある人たちはそんなことはしません」「でも今話しているのは旧石器時代が専門の人類学者ですから。意見を一致させるのは主義に反するんです」
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