Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、デイヴィッド&リー・エディングスの本の感想のページです。

line
「予言の守護者-ベルガリアード物語1」ハヤカワ文庫FT(2005年7月読了)★★★★★お気に入り
センダリアのファルドー農園のポルおばさんの台所で育ち、農場にいる同じ年頃の子供たちと遊んでいたガリオンは、8歳になったその年も、農場に時々現れる語り部の老人の語る世界の始まりと神々の話、そしてアルダー神の球形の生ける宝石とカル=トラク神の物語、魔術師ベルガラスの物語に夢中になって聞き入っていました。そして5年後。ガリオンの14歳の誕生日となる<エラスタイド>の祭りの祝日に商売のためにファルドー農園を訪れたのは、5年前にガリオンが老人と一緒にアッパー・グラルトへ行った時に出会ったマーゴ人そっくりの男でした。男は祝宴の席で、白髪で白いあごひげのある老人とランドリグという少年がいないかと尋ねます。5年前にウルフと一緒にアッパーグラルトに出かけたその日、ガリオンは名前を尋ねたマーゴ人に対して、咄嗟に「ランドリグ」という名前を名乗っていたのです。(「PAWN OF PROPHECY」宇佐川晶子訳)

ベルガリアード物語の1巻。太古の昔、アルダー神によって作り出され、しかしトラクによって盗み出された<アルダーの珠>は、魔術師ベルガラスによって再び取り戻され、リヴァの王がその珠を守ることに… というのがプロローグ。この世界の成り立ちとなる神話がしっかりと描かれており、それがとても興味深いです。そして本編を読み始めると、どうやらそのリヴァの王の守る珠に何かがあったらしいことが分かります。
ガリオンと一緒に旅に出ることになるのは、ポルおばさんとミスターウルフ・そして朴訥な鍛冶屋のダーニク。途中で新たに小男のシルクや大男のバラクといった面々も加わることになります。アレンディア人は気位が高く勇敢だが頭の回転が鈍く、センダリア人は堅実で実際的、魔法や魔術といった目に見えないものには我慢できない、アンガラク人は1人残らず邪悪などと、種族ごとに性質を決め付けているような面が多少気になりましたが、それでもキャラクターはそれぞれ個性的で、そのやりとりも楽しい部分。数多くの種族の名前や地名が登場するので、まだまだ覚えきれずに混乱してしまう部分はあるのですが、これからますますその世界観を深めていってくれそうで楽しみです。
解説では「指輪物語」の流れであることやその類似が指摘されていましたが、読んでいて思い出したのは、ロイド・アリグザンダーのプリデイン物語シリーズ。少年・タランとガリオン少年の立場の相似からなのでしょうね。もちろんウルフが数年に一度定期的に村を訪れて回っているところや旅をする面々、その面々を追いかける存在、御前会議など、指輪物語的な部分も十分見られます。

アルダー(1人で住む神)、ベラー(アローン人の熊神)、チャルダン(アレンディア人の牡牛神)、イサ(ニーサ人の蛇神)、ネドラ(トルネドラ人)、マラ(失われたマラゴー人)、トラク(アンガラク人の竜神)

「蛇神の女王-ベルガリアード物語2」ハヤカワ文庫FT(2005年7月読了)★★★★★お気に入り
ボー・ワキューンの廃墟で一行に加わったのは、ワイルダンター男爵の息子・レルドリン。彼らはアルガリア王の息子・ヘターが来るのを待って出発します。しかしレルドリンは王に対する謀反を企てていました。ボー・ミンブルの戦いの後統一されたはずのアレンディアですが、実際にはミンブル人が全ての権力を握っており、アスター人に対する待遇は依然としてひどいものだというのです。しかしボー・ミンブルの農奴制度自体、自由な農園に生まれ育ったガリオンにとっては信じられないもの。それでも、レルドリンに対する友情のせいで、ガリオンはウルフにもポルおばさんにも、そのことを告げられなくなってしまうのです。(「QUEEN OF SORCERY」佐藤ひろみ訳)

ベルガリアード物語第2巻。
頭はあまり良くなくても人の良いレルドリンや、礼節を大切にする騎士の鑑のようなマルドラレンなど、旅には新たな仲間が加わります。その中でもトルネドラの王女・セ・ネドラは、明らかにキーパーソンとなる人物。どのような発展があるのかとても楽しみです。そして彼らが追う珠を持っているのがゼダーという男だということが分かり、旅の目的も徐々に具体的になっていきます。物語が進むにつれ、「指輪物語」的な部分が強くなってきたようです。彼らは旅の途中で様々な国を通り抜けていくことになるのですが、その中でもエルフの森のようなドリュアドの森や、東南アジア的な湿度の高さを感じるニーサの場面が印象的。
そしてこの物語では、魔法の扱いが面白いですね。誰かが魔法を使うと「音のようなもの」を発して、同じ能力を持つ他の人にも聞こえてしまうこと、そして全体は部分に従属して存在しているため、1つを抹消しようとすれば全体が消えてしまうこと。つまりこの物語の中における魔法とは、決して気軽にはかけられるものではないのです。これで剣と魔法の世界でありながら、主人公は1歩ずつ目的に向かって歩んでいかなければならない理由づけがされているのですね。「ものごとを魔法でかたづけるには、あなたたちが腕と背骨を使って処理するのと同じくらいのエネルギーが必要なのよ」というポルおばさんの言葉にもあるように、魔法はあまり使われません。しかしそのせいで、使われた時のインパクトはとても強くなっているように思います。そしてそれだけに、ガリオンのこれからの成長ぶりも気になるところです。

「竜神の高僧-ベルガリアード物語3」ハヤカワ文庫FT(2005年7月読了)★★★★★お気に入り
アルダーの珠は、ゼダーからトラクの高僧クトゥーチクの手に。そして一時的に一行から離れていたベルガラスとシルクが合流。一行は船で蛇の川をさかのぼり、それ以上船で進めなくなると、陸路マラゴーの谷へと向かいます。そして途中の金採掘キャンプで、ブリルを発見。ブリルがクトル・マーゴスの秘密組織・ダガシの一員であることが分かり、一行は動揺します。ブリルは単なる追いはぎなどではなく、クトゥーチクの直接の部下だったのです。一方、ガリオンの頭の中に響く「声」は、ガリオンとは全く異なる存在であることが分かり、しかもガリオンはベルガラスをも驚かせる力を発揮することに。(「MAGICIAN'S GAMBIT」佐藤ひろみ訳)

ベルガリアード物語第3巻。
今回も様々な土地を通ることになるのですが、その中でもマラの神が今でも嘆き悲しむマラゴーの地、そしてウルゴの洞窟が印象的でした。特にウルゴの洞窟での、宝石の花が壁や床面にまるで野生の花のように咲き乱れる秘密の洞窟や、純金の蔓がくるくると巻きながら天井から床までびっしりと這っている洞窟の壁の話などは、まるでC.S.ルイスのナルニア国シリーズ「銀のいす」で語られる地下の国の物語のようです。そして前巻ではイサだけでしたが、今回はマラ、アルダー、ウルといった3人の神が登場。この神の描き方も興味深いところです。そしてベルガリアード物語全5巻の各巻にプロローグがあるのですが、この神話の断片がその後の物語の展開に密接に関わってくることが分かってきただけに尚更、毎巻そのプロローグがどのように発展するかという興味が膨らみます。今回は「ウルゴの書」からの引用です。
ガリオンの成長物語ではありますが、他のキャラクターの変化も見所。生まれて初めて覚えた恐怖をコントロールできないでいるマルドラレンは朴訥なダーニクの言葉に目を見開かれる思いをしていますし、ウルグの民・レルグもまた少しずつ前進しているようです。しかし岩を通り抜けると風邪が治ってしまうというのには驚きました。面白いですね。そして岩を動かそうとして埋まってしまったガリオンを目の前にしたシルクとヘラーの会話が楽しいです。この巻ではクトゥーチクやブリルとの決着もつけられ、それが物語のクライマックスとなっています。予言を成就するためにベルガラスとポルガラの努力もすごいのですね。予言を成就するために必要な面々の配置なども良く考えられていて面白いです。

「魔術師の城塞-ベルガリアード物語4」ハヤカワ文庫FT(2005年7月読了)★★★★★お気に入り
クトゥーチクを倒した一行は、一路風の島・リヴァへと向かいます。途中アルダー谷ではヘラーが、そしてプロルグではセ・ネドラと合流し、ファルドー農園では、ガリオンやポルが改めてその地に別れを告げることに。そして辿り着いたリヴァには、アローン諸国の王が揃っていました。アルダーの珠は無事にリヴァ王の広間に戻され、リヴァ王も即位。15ヶ月に渡るガリオンたちの旅にも、一旦終止符が打たれることになります。しかしリヴァ王の復活は、同時にトラクの目覚めをも意味するものであったのです。(「CASTLE OF WIZARDRY」柿沼瑛子訳)

ベルガリアード物語第4巻。アルダーの珠は取り返しますが、物語はまだまだ中盤。
ベルガリオンのリヴァへの帰還、そして戴冠によって、これまで小出しにされてきた予言の概要や、ガリオンの出自に関する事柄がかなり明らかにされることになります。ガリオンが珠の守り手でありながら、これまで手を触れようとしなかったことには、きちんとした理由があったのですね。しかしずっと予言の文章をそのまま読んでみたいと思っていたので、それが書かれていなかったのは少々残念。最後の巻のプロローグに書かれるのではないかと期待していたのですが…。「二つの命を持つ男」であるダーニクだけは同じ顔が2つ重なって見えていたようですが、ガリオンの見た「恐ろしい熊」「馬の首長」「案内人」「盲目の男」「弓師」「護衛の騎士」「絶えた種族の母」「世界の女王」とは具体的にどのような顔だったのでしょうね。そしてガリオンの旅立ちを知ったセ・ネドラが立ち上がることになるのですが、彼女のこれまでの行動を考えると、この巻での名演説家ぶりがあまり結びついてくれませんでした。その辺りにもう少し裏づけや信憑性が欲しかったところ。しかし3人のことを知った後のポルガラの荒れ狂いぶりは、徹底していて逆に爽快感がありました。
ここまでは予言通りの展開だったようですが、これから先は2通りの運命が交錯することになります。

「勝負の終わり-ベルガリアード物語5」ハヤカワ文庫FT(2005年7月読了)★★★★★お気に入り
トラクと対決するべく、リヴァから密かに出発したガリオン、ベルガラス、シルクの3人は、未だトラクがまどろんでいる永遠の夜の都市、クトル・ミシュラクへ。一方、ポルガラ、セ・ネドラ、ダーニク、エランドもまた、知らず知らずのうちに予言に定められている通りに行動することになります。(「ENCHANTERS' END GAME」柿沼瑛子訳)

ベルガリアード物語第5巻。これが最終巻です。
ガリオンとベルガラス、シルクの3人の道中に関しては面白かったのですが、続く各国の王妃たちの場面は、微笑ましい奮闘振りだったものの少々冗長感。戦争の場面になってからはまた面白くなりましたが、ラメールとデットン、りんごの木の男爵の息子のエピソードなど、あまり細かい脇役たちの描写も不要に感じられてしまいました。やはり予言に登場する人々の活躍ぶりが一番面白かったです。
今まで地図にも載っていなかったクトル・ミシュラクの位置もこの巻でようやく分かりますし、その街の不気味な情景が印象的。そしてとうとうトラクとの対決が訪れます。ここが文句なしにクライマックス。神々のことについても、ようやくその真の姿がつかめたような気がします。ガリオンの頭の中の声のことなど明らかにされずに残ってしまった部分もありましたし、「予言」が絶対的なものとされている割に、ベルガリオンとトラクに関しては2つの行く末があり、しかもこれが到達点なのではなく、その後も予言は続いていくという部分には矛盾があるのではないかと思ってしまいましたが、それでもやはり全体の流れや世界観、そしてキャラクターが十分魅力的でした。
ダーニクに関しては、「二つの命を持つ男」という役割からその運命はほぼ予想できていましたが、物語の中の面々にとってはそうではなかったのでしょうか。ポルガラがそれほどダーニクのことを想っていたとは知らなかったので驚きましたが、この2人にしてもヘラーやアダーラ、レルグやタイバに関しても収まるところに収まってくれてほっとしましたし、シルクがシルクのままでいてくれるというのも良かったです。

「西方の守護者-マロリオン物語1」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★★★お気に入り
トラクとの戦いに勝利したベルガリオンは、セ・ネドラと結婚。リヴァの王としての日々を送ることになり、ベルガラスとポルガラ、ダーニクは、エランドを連れてアルダー谷へと戻ります。しかし谷に戻ったベルガラスを待ち構えていたのは、ベルディンによって知らされた「サルディオン」という言葉。それが一体何を意味する言葉なのかは分からないものの、ベルガラスは不穏な響きを感じ取ります。そして彼らがベルガリオンとセ・ネドラに会うために再びリヴァを訪問した時、ベルガリオンとエランドは普段の青から赤い色に変色したアルダーの珠によって「ザンドラマスに気をつけよ」という警告を受けることに。(「GURDIANS OF THE WEST」宇佐川晶子訳)

マロリオン物語全5冊のうちの1巻目。以前は2冊ずつ分冊で全10巻としてハヤカワ文庫FTから出ていたのが、復刊に当たって原書通りの全5冊に戻り、題名も変わりました。これは以前「西方の守護者」「熊神教徒の逆襲」として出ていた作品。
この1巻はまだまだ「ベルガリオン物語」の後日談的な部分が大きいので、「ベルガリオン物語」の細かい部分を忘れているような状態で読み始めても大丈夫。登場人物たちの会話の楽しさに、自然に思い出していくことができます。ダーニクの意外な釣り好きや、ベルガリオンの口から何度も出る「なんでぼくが?」という台詞にはにやりとさせられますし、基本的には自分の手で必要なものを作り出すダーニクが、魔法の力を借りて柵を作るようなところも楽しいです。ごくごく普通の登場人物たちの、ごくごく日常的な生活の描写の中に、魔法が自然に共存しているのがいいですね。そしてリヴァの国全体が深刻になっているという跡継ぎ問題は、意外な解決方法でした。ドリュアドについて、あの樽に詰められた壌土のことなどももう少し詳しく知りたかったところです。
しかしそんな平穏な日々にも、じわじわと不穏な兆しが…。
今回印象的な場面だったのは、ナブレク人のヴェラとセ・ネドラのシーン。本当に大人なのかと問うヴェラに対して「わたしはリヴァの王妃よ」と精一杯背筋を伸ばしたセ・ネドラ。それに対するヴェラの言葉は、「がんばったね、あんた」「出世した女を見ると、きまってうきうきしてくるんだよ」。セ・ネドラの肩をぽんとたたくヴェラがとても素敵です。

「砂漠の狂王-マロリオン物語2」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★★★お気に入り
「ムリンの書」などの城に保管されている大量の予言書を調べ、光と闇の戦いがトラクの死によって終わったのではなく、現在の闇の子・ザンドラマスと対決して倒さない限り終わりはこないことを知ることになったベルガリオンは、そのことをベルガラスに伝えるためにアルダー谷へ。しかしベルガリオンの留守中、リヴァの番人であるブランドが殺害されます。暗殺者が熊神教の信者であることを突き止めたベルガリオンたちは、ドラスニアのレオンに結集していた熊神教の軍やジャーヴィクショルムにある彼らの造船所を攻撃。しかしその間に、ベルガリオンとセ・ネドラの1人息子・ゲランが誘拐されていたのです。そして誘拐者たちの船がニーサに向かったという情報を得たベルガリオンたちの前に現れたのはケルの女予言者・シラディスでした。(「KING OF THE MURGOS」宇佐川晶子訳)

マロリオン物語2巻目。以前は「マーゴスの王」「禁じられた呪文」として出ていた作品です。
今回新たに仲間になるのは、「女狩人」「男ならぬ男」「からっぽの者」「見張り女」の4人。この中で一番分かりやすいのは「男ならぬ男」ですが、新たな登場人物に出会うたびに、それがその仲間なのかと考えるのも楽しいところ。しかしあまりに予言通りに動かなくてはならないことにベルガリオン自身苛立ちを感じていますし、そういった内容の会話をベルガラスと交わしています。予言に逆らおうとしても結局うまくいかず、最終的には予言の言う通りにしなければならない、とベルガリオンに説明するベルガラス。しかしシラディスが光の側も闇の側も操り、最後の対決をきちんと成就させようとしているというのは、読んでいてもどこかすっきりしません。やはりファンタジーにおける予言書の扱いというのは難しいのではないでしょうか。
これまで異教的で、「善」と「悪」で言えば単純に「悪」に区分けされていた南の国々が、この巻から順番に描かれていきます。その中でもマーゴスの王・ウルギットとその母・レディ・タマジンが登場する辺りは特に楽しいですね。マーゴ人の血を引いていないことを知った途端に見る目が変わるような部分はどうかと思いますが、単に善悪に分けられるわけではないと分かる部分も良いですし、それまで悪人という言葉だけで片付けられてきた人々の意外な一面が見られるのも楽しいところです。

「異形の道化師-マロリオン物語3」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★★★お気に入り
ゲランを連れ去ったザンドラマスを追うベルガリオンたちはさらに南下、アシャバのトラクの家への旅を続けます。しかしヴァーカト島の村で、シラディスの指示によって「いにしえの書」を受け取ったベルガリオンたちですが、森の中で皇帝カル=ザカーズの配下に捕らえられ、ザカーズのいるラク・ハッガへと連れて行かれることに。扱いこそ賓客扱いなものの、囚われの身となってしまった一行。しかし世界制覇を狙うザカーズは、ベルガリオン一行の旅の目的や今まで知らなかったことを次々と明かされてショックを受けることに。しかも何者かに毒まで盛られ、シラディスによって自分も光の子と闇の子の戦いに役割を持っていると知らされたザカーズは、一行と共にマル・ゼスへと向かうことに。(「DEMON LORD OF KARANDA」宇佐川晶子訳)

マロリオン物語3巻目。以前は「疫病帝国」「カランダの魔神」として出ていた作品。
この巻では、リセルとシルクの間に進展があったようなのですが… 肝心のところがぼかされてしまっているのがとても残念。その後も、本当にそういった出来事があったのかどうかと疑ってしまうほどあっさりしています。この辺りはもう少し書き込んでほしかったところです。
冷酷な支配者で世界征服を企み、ウルギットを殺そうと狙っていたザカーズは、案外猫好き。それ以外にも案外人間的な面が見えてくるのが面白いところ。ベルガリオンとも徐々に友情を育てていきます。そんなザカーズを騙すように帝国から脱出する場面などは、読んでいても少々心が痛んでしまいますね。
行程的にはザンドラマスを徐々に追い上げてはいるようですが、それでも全体的にはザンドラマスの方が優勢。シラディスも予言を成就させるためにベルガリオン一行を助けていますし、他にも予想しない助っ人が現れます。こういった辺りには、どうも不公平感を感じてしまうのですが…。

「闇に選ばれし魔女-マロリオン物語4」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★★★お気に入り
ヤーブレックとヴェラは、ドラスニアのポレン王妃の元へ。アローン会議が召集され、旅に加わらなかった面々もベルガリオン一行のために動き始めます。その頃、クトル・マーゴスではウルギット王が教会と高僧・アガチャクに表立って反旗を翻していました。一方、疫病に汚染されたマル・ゼスを脱出したベルガリオン一行は、アシャバのトラクの家に現れたザンドラマスとゲラン王子にあと一歩というところで及ばないのですが、ザンドラマスによって破壊された「アシャバの神託」の写しを求めてメルセネ大学へ。そこに「アシャバの神託」の完全な写しが存在するというのです。(「SORCERESS OF DARSHIVA」宇佐川晶子訳)

マロリオン物語4巻目。以前は「メルセネの錬金術師」「ダーシヴァの魔女」として出ていた作品。
そして今回の冒険のメンバーもこの巻で揃うことになるのですね。彼らがそれぞれ最終的にどのような役割を果たすのかとても楽しみになります。メンバーの中でもエリオンドの地味ぶりは徹底しているので、彼の役割だけは既に分かっているような気もするのですが、どうなのでしょう。
そしてこの巻では、ベルガリアード物語の主要な面々を始め、世界中に散らばる登場人物たちがそれぞれに動きだします。

「宿命の子ら-マロリオン物語5」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★★★お気に入り
ケルの町へと向かうベルガリオン一行。「もはや存在しない場所」がどこなのかを知る鍵が、ケルの町に存在するというのです。ケルの町にはグロリムが近寄れないよう呪いがかけられており、一行にとってはザンドラマスを出し抜く貴重なチャンスでした。そしてケルの町に保存されていた「マロリーの福音書」を読み、「もはや存在しない場所」に関する情報を得た一行は、その場所を示す地図を入手するために最果ての島国・ペリヴォーへと向かいます。(「THE SEERESS OF KELL」宇佐川晶子訳)

マロリオン物語5巻目。これが完結編です。以前は「ケルの女予言者」「宿命の戦い」として出ていた作品。
シラディスの予言が要求する行動があまりに細かいので、少々うんざりもしたのですが、無事に起こるべきことが起こり、予言されていた事柄は全て満たされたよう。ついにベルガリオン一行とザンドラマスの対決の場面となります。仲間の多い「光の子」に対して「闇の子」はたった1人であることも、ここで再確認されることに。こういったファンタジー作品で悪の帝王が独裁的だというのは良くあるパターンですが、実際に登場したザンドラマスは、悪の帝王というには少々役不足のような気もしますね。そして光と闇の対決についてはかなりの部分で予想通り。ただ1人死ぬ仲間、そして神になる人間についても、順当過ぎるほど順当な結末でした。しかし女予言者・シラディスには最後に驚かされました。私もベルガリオン同様、なぜその選択がそれほど難しいのか理解できないのですが…。
あまりに予言が重視されるので、こうなることもやはり予め決まっていたのではないかとしか思えなくなってしまう部分もありますし、シラディスがあまりに細かい部分まで行動を求めるのには少々引っかかるのですが(一言一句、一挙一動、定められた通りにしないと、次のイベントが発生しないのでしょうか)、この5冊の中で「ベルガリアード物語」との旅の類似が何度か指摘され、世界の運命が決するまで一連の同じ出来事を何度も何度も潜り抜けていかなければならないという考え方が登場していたのは面白かったです。
対決が済めば物語が終わりというわけではないく、その後にはかなり長いエピローグが続き、物語の収束はゆるやかに進みます。そのことが、その旅の間は特別な存在とされ、神とかなり近い場所に立っていたのが、普通の人間の日常へと戻る過程を描いているようにも感じられました。守るべき家庭を持つ人々はその家庭に戻り、そうでない人々もそれぞれに自分の守るべきものを手に入れ…。ベルディンに関しては十分予想していたので、それがどのような展開になるのか楽しみにしていましたが、予想以上の展開に大満足でした。
Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.