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このページは、キャスリーン・デマーコの本の感想のページです。

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「クランベリー・クイーン」ハヤカワepi文庫(2006年6月読了)★★★
ニューヨークの有名なインターネット企業でマーケティング・マネージャーとして働くダイアナ・ムーアは、付き合っていた男「モンスター」と別れて3年経っても、失恋の痛手が癒えない状態。しかし占星術師であり霊能力者であるマーガレットおばさんには、これから3年間は人生でも最高の時だと約束されており、ダイアナ自身も翌日のマリアとマイケルの結婚式を楽しみにしていました。その式には、今つきあっている女性“L”を連れたモンスターも招待されているのです。しかしその結婚式の日、ダイアナは結婚式ではなく、ニュージャージー州プリンストンにある両親の家にいました。両親と兄の乗った車が酔っ払い運転のトラックと激突し、3人を失ってしまったのです。どん底まで落ち込んだダイアナは仕事も辞め、周囲の心配を振り切って車でふらふらと旅に出ます。しかしニュージャージーのパインバレンズの田舎道で、バイクに乗った老女・ロージーをはねてしまい…。幸いロージーは無事で、ダイアナはロージーと彼女の孫・ルイーザの家に滞在することに。(「CRANBERRY QUEEN」大野晶子訳)

3年以上前の失恋を引きずっているほどのダイアナなので、両親と兄を一度に失うという現実にそうそう簡単に立ち直れるわけがありません。私にとってアメリカ人とは全体的にドライなイメージであり、しかもニューヨーク在住のアメリカ人は失恋などしても簡単には挫けないイメージがあるので、これほどウェットな人間がいるものなのかと少し驚きましたが、自分でも感情を持て余してしまうダイアナの姿はとても良く伝わってきました。そして、ルイーザがモンスターのことを当てこすった時ですら、ダイアナが自分の家族の事故のことを言わずにいた気持ちも、とても良く分かります。本当に悲しいことがあった時は、下手に同情を示されても困ってしまうもの。しかも、ロージーはとても素敵な人ですけれど、そのロージーにしても、ダイアナの両親や兄のことは直接知らないのですから。しかし家族のことを知らないにせよ、見るからに心の傷を負った状態のダイアナに対して、不機嫌なルイーザが投げつける大人気ない言動は傍から見ていても見苦しかったです。たとえいくら美人でも魅力的であっても、言葉の暴力というのは決して許されるべきことではないもの。とは言え、この時のダイアナに限って言えば、ルイーザの存在が逆に良かったような気もします。困ったお嬢さんであるルイーザの相手をして振り回されているうちに、ダイアナはいつの間にか元の自分を取り戻しつつあったのですから。
水面に浮かんだ何千何百というクランベリーの赤い実と水の青、紅葉した木々と長靴の黄色、コバルトブルーの空。この作品の文章だけでは、今ひとつその情景が思い浮かべられなかったのだけが残念。この情景が実際に見てみたいです。
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