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このページは、フランシス・H・バーネットの本の感想のページです。

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「秘密の花園」上下 岩波少年文庫(2005年10月読了)★★★★★
イギリス軍の士官の娘としてインドで生まれ育ったメアリ・レノックスは、病気がちで、いつも不機嫌そうな表情をした、見かけも中身もまるで可愛くない少女。父親はいつも忙しく病気がちで、美しい母親はパーティで過ごす楽しい時間にしか興味がなく、メアリはインド人のアーヤ(乳母)に任されっ放しとなっていました。しかし突然のコレラの流行によって両親は亡くなり、メアリは叔父であるアーチボルド・クレイヴンの住む、ヨークシャーのミスルスウェイト屋敷へと引き取られることに。しかしここでもまた、叔父はメアリには無関心。最愛の妻を失って以来、何事にも興味をもてない人間となっていたのです。ミスルスウェイト屋敷は広大な敷地に建てられた大きな屋敷ですが、百もある部屋は、そのほとんどが閉め切られていました。叔父の妻が存命の頃に丹精されていた美しい庭も、亡くなった時に鍵がかけられ、その鍵は土の中に埋められて、それ以来10年間閉め切ったままにされていました。何もすることがないメアリは、メイドのマーサに言われるがままに庭の散策をすることに。(「THE SECRET GARDEN」山内玲子訳)

メアリもコリンも我儘いっぱいに育った嫌な子供で、同じバーネットの「小公子」のセドリックや「小公女」のセーラとは大違い。自分以外の人間との付き合い方すらろくに知らず、自分の意思が通らなければ癇癪を起こすしかないような子供たちです。しかし彼らもまた、自分たちでそうとは知らなかっただけで身勝手な大人たちの被害者だったのですね。メアリがヨークシャーらしい率直さを持ったメイドのマーサや、メアリと同じように不機嫌な顔をした庭師のベン・ウェザスタッフや可愛いコマドリと出会い、動物や植物と心を通わせるディコンと知り合って少しずつ変わっていくと、そんなメアリと出会ったコリンもまた少しずつ変わっていきます。そして2人の子供たちの変化は、大人や屋敷全体をも変える力を持っていました。とても大きな「生きる力」を描いた物語だったのですね。
子供の頃読んだ時は、ムーアや広大な屋敷の情景に憧れ、庭、特に秘密の花園の情景にドキドキしたものですが、今回読んでいてとても印象的だったのがディコン。やはり動物や植物といった生きているものと心を通わせる人間に悪い人間はいないですよね。そしてマーサやディコンのお母さん・スーザン・サワビーの包み込むような愛情の暖かいこと。子供の頃に読んだ時ほどメアリが嫌な子に感じられず、逆にその生い立ちにしてはしっかりしているのに驚かされました。
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