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このページは、マイケル・バックリーの本の感想のページです。

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「グリム姉妹の事件簿1-事件のかげに巨人あり」創元ブックランド(2009年7月読了)★★★★

11歳のサブリナと7歳のダフネのグリム姉妹は、2年前に両親が失踪して以来孤児院暮らし。孤児院のミズ・スミートはグリム姉妹のことを毛嫌いしており、2人を孤児院から引き取ってくれる家庭を見つけることが、今や彼女の一大使命となっていました。今もまた祖母だと名乗る人物のところに連れて行かれるところ。しかしこれまで2人を送り込んだ先の人々は大抵意地悪で、時には頭がおかしいこともあり、2人をメイドや子守りとしてこきつかうか、ただ無視するばかり。しかも今回は、両親にずっと死んだと聞かされていた「祖母」のところなのです。サブリナは「祖母」の偽者の家からもすぐ脱走する心づもりにしていました。しかしダフネはすぐに「レルダおばあちゃん」に懐いてしまい…。(「THE SISTERS GRIMM THE FAIRLY-TALE DETECTIVE(Book One)」三辺律子訳)

本の案内に、かのグリム童話をまとめたグリム兄弟の子孫が、今はおとぎばなしの登場人物たちの見張りをしつつ、代々探偵業を営んでいるとあり、この時点で既に興味津々だったのですが、帯にはさらにジェイン・ヨーレンの「どうしてわたし自身で考えつかなかったんだろう! すっごいアイディア」という言葉が。ジェイン・ヨーレンにそんなことを言わせるとは、と読む前から期待が膨らみます。
そして実際に読んでみて。確かにこの設定は面白いですね。そもそもグリム兄弟がおとぎばなしを書き留めたのは、おとぎばなしの時代の終わりが近づいたことを悟ったから。昔々はおとぎばなしに出てくる生き物たち(エヴァーアフター)と人間は共に暮らしており、その頃は不思議なことが日常的に存在していたのに、両者は徐々にぶつかり合うようになってしまったのですね。魔法が禁止され、エヴァーアフターたちが迫害され始めたのを見たグリムは、できる限り沢山の物語を書き留め、親しくなったエヴァーアフターたちのアメリカ移住を手伝います。船を世話し、ハドソン川のほとりに土地を買い、エヴァーアフターたちがその土地に町を築くのを手伝うのです。しかし新大陸にも徐々に人間は増え、再びエヴァーアフターたちの身に危険が迫ります。バーバ・ヤーガに魔法をかけてもらうことによって、今の状態に落ち着くことになるのですが…。
その話がレルダおばあちゃんから出た時は、グリム一族がエヴァーアフターの後見人のような役割なのかと思っていたのですが、舞踏会での会話を聞いている限りでは、エヴァーアフター側にも様々な思いがあるようで... その辺りは読んでいて少々複雑になってしまうのですが、いずれにせよ、どちらか一辺倒の態度だけというわけではないのが良かったです。それに昔ながらの物語やファンタジー系の作品の登場人物が所狭しと歩き回っているのには、やはりわくわくしてしまいます。彼らの裏の素顔を覗き見るような楽しさがありますね。そして一番魅力的だったのは、レルダおばあちゃんの言う「世界一大きなウォークイン・クローゼット」。この中に入ってみたいです。
今回だけで解決することと、また次回以降に続くことと。まだまだ小手調べといった感じもありますし、登場人物たちの顔見世的な要素も強いので、彼らが落ち着くべきところに落ち着いた今、ますます面白くなりそうな予感です。次作も楽しみに待ちたいと思います。そして創元ブックランドの本は毎回挿絵も楽しみなのですが、今回は後藤啓介さんによる影絵調の挿絵で、これも物語の雰囲気によく似合っていて素敵です。

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