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このページは、ジョン・ベレアーズの本の感想のページです。

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「霜のなかの顔」ハヤカワ文庫FT(2007年1月読了)★★★
数世紀前のある8月の暑苦しい日のこと。背が高くて痩せっぽちで、みすぼらしい髭を生やしたプロスペロという名の魔法使いは、重苦しい空気に漂う漠然とした不安感を感じていました。何かがやって来るのは感じられるのですが、それが何なのか、プロスペロには分からなかったのです。そしてその日の夜、プロスペロの家を訪れたのは、プロスペロの親友の1人で、ひとかどの魔法使いでもあるロジャー・ベーコン。翌日、家が見知らぬ男たちに包囲されているのに気づいた2人は、魔法で隠された扉から脱出することに。(「THE FACE IN THE FROST」浅羽莢子訳)

プロスペロという名は、シェイクスピアの「あらし」に登場する魔法使いの名前と一緒ですが、わざわざ別人だという断り書きがありますね。ロジャー・ベーコンは13世紀のイギリスのカトリック司祭であり哲学者のロジャー・ベーコンと同じ人物のようです。
この作品で何が一番楽しいかといえば、昔ながらの童話に出てくる魔法使いらしい家が描かれていること。プロスペロの二階建ての大きな家には、「骨董屋の悪夢にでてきそうな」滑稽で安ぴか物でいっぱい。この家の中にある魔法の小物の説明を読んでいるだけでも楽しくなってしまう人は多いのではないでしょうか。これは想像力を刺激しますね。日本語版には版権の関係で入れられなかったそうなのですが、なんとも言えない雰囲気のある絵柄だというマリリン・フィッチェンの挿絵が見られなかったのがとても残念。私が特に気に入ったのは、プロスペロが旅先で使う、普段は小さな銀の嗅ぎタバコ入れの中に入っているヒマワリの形の灯りでした。
しかし物語自体は、少々説明不足で分かりにくかったようにも思います。あまり物語に入り込めないまま終わってしまったのがとても残念。作者はアメリカ人ですが、アメリカというよりもイギリス的な雰囲気とユーモアを持った作品なので、もしかしたらそれが合わなかったのかもしれませんが…。
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