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このページは、エドマンド・スペンサーの本の感想のページです。

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「妖精の女王」1〜4 ちくま文庫(2006年2月再読)★★★★

妖精の女王・グロリアーナの新年の祝宴に出席していた赤十字の騎士は、祝宴の最中に何か冒険が起きた時は、ぜひ自分に任せて欲しいとグロリアーナに申し出ていました。そこにやって来たのは、巨大な竜によって両親が長年真鍮の城に囚われの身となっているのを助けて欲しいと申し出たユーナ姫。ユーナ姫の両親を助けるべく、赤十字の騎士はユーナ姫と一緒に旅に出ることに。しかし途中で出会ったアーキメイゴーの姦計により、2人は離れ離れとなってしまい…。(「THE FAERIE QUEENE」和田勇一・福田昇八訳)

16世紀の英国の詩人、エドマンド・スペンサーの代表作となった長編叙事詩。アーサー王伝説に題材をとり、当時の女王・エリザベス1世に捧げた作品です。題名の「妖精の女王」とはエリザベス1世のこと。この4巻に、原書では全6巻+断篇が収録されています。本来は全12巻になる予定で、12ある徳を1巻で1つずつ描こうとしていたそうなのですが、結局全6巻ということで、半分しか書かれてません。1巻は神聖、2巻は節制、3巻は貞節、4巻は友情、5巻は正義、6巻は礼節。それでも近年ではこれで完結しているという見方が優勢になってきているのだそう。
「紳士、即ち身分ある人に立派な道徳的訓育を施す」のが主要な目的なだけあって、とてもアレゴリカルな作品。アーサー王伝説に題材を取っているとは言っても、きちんと元の設定通りに登場するのはアーサー王ぐらいですし、それも王子時代のアーサー。アーサー王伝説自体はほとんど知らなくても大丈夫です。アーサー王伝説の内容そのものよりも、その騎士道や探求といった形式をなぞらえた作品と言えると思います。むしろギリシャ・ローマ神話と聖書をあまり知らないと、少ししんどいかもしれませんね。詳しい註釈がついてるので大丈夫といえば大丈夫なのですが、やはりその辺りは英文学を読む上では必須と言えそうです。そして他にも色々な古典作品が引き合いに出されています。ホメロスの「イーリアス」「オデュッセイア」、ヴェルギリウス「アエネーイス」、アリオスト「狂えるオルランド」、マロリー「アーサー王の死」、チョーサーの「カンタベリー物語」など。
構成的な欠点も目につきますし、あからさまな女王賛美が鼻につく場面も。登場人物が非常に多いのに、その名前がなかなか判明しないことも多いですし、ようやく名前が分っても、「乙女」「騎士」と書かれているだけのことも多いため、少し気を抜くと誰の話なのか分からなくなることも。それでもやはり後世の文学や芸術に様々な影響を及ぼしているのも納得の大作。登場人物のアクレイジアやブリマートは、ベルギー象徴派の画家・フェルナン・クノップフによって描かれています。

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