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このページは、バーバラ・スレイの本の感想のページです。

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「黒ねこの王子カーボネル」岩波少年文庫(2009年10月再読)★★★★

ロージーがお母さんと一緒に住んでいるのは、アパートの一番上の階の家具付きの3部屋。お風呂を使えるのは週に2回、台所は共同。住み心地はあまり良くないのですが、ロージーのお父さんは既に亡くなり、お父さんの年金とお母さんの仕立て物の仕事では暮らしを立てるのが精一杯なので仕方ないのです。そして迎 えた夏休み。ロージーのお母さんは、パーカーおくさんの仕立て物の仕事のために、ロンドン郊外にあるお屋敷に3週間通うことになっていました。お母さんが留守の間に何か役立つことをしたいと考えたロージーは、掃くことと拭くこととお皿洗いならできると、フェアファックスの市場にほうきを買いに行きます。そしてそこで出会った黒ネコに連れて行かれるようにして1人のおばあさんと出会い、ほうきと黒ネコを買い取ることに。(「CARBONEL: The Prince of Cats」山本まつよ訳)

ロンドンに住む普通の女の子・ロージーがひょんなことから黒猫の王子・カーボネルと出会い、魔法のほうきを手に入れて、カーボネルにかけられている魔法を解くために奔走するという物語。実は小学校の頃に図書館で1度読んだことがある本です。その後また読みたいと思いつつ、題名を忘れてしまったこともあり、それっきりになっていた本。久しぶりに読んでみると、少し物足りない部分はあるものの、やはり可愛らしいエブリディ・マジックでした。
ロージーは、仕事が大変なお母さんのことを常に気遣うような思いやりのある女の子。お母さんとのやりとりでも、相手のことをまず考え、自分のやりたいことは二の次です。しかしそれが最終的に良い結果を生むことも多いのですね。そんな気持ちのいい女の子なのに、学校にあまり仲の良い友達がいないようなのは、なぜなのでしょう。貧しいロージーを馬鹿にするクラスメートが2名登場するだけだというのは少々寂しいのですが、お母さんの仕事先で知り合った少年・ジョンとは、あっという間に仲良くなり、一緒に冒険することになります。そんなロージーが博物館に行って陶器のコレクションを見た時の「使うためのものが、博物館のケースに入れられて、ただ見られてるだけって、かなしそうだって、あたし、いつも思うの。」という言葉がとても印象的。
ロージーとジョンとカーボネルの冒険は、一見日常の世界にすんなりと収まるもの。しかしロージーにとっては、それまでの子供だけの世界だけではなく、魔法のほうきから繋がる魔法の世界、必要なものを手に入れるために足を踏み入れる大人の世界、そしてカーボネルの猫の王国へと広がっているのです。そこがいいですね。大人の目から見ればごく平凡な日常のお楽しみなのですが、ロージーとジョンにとっては、異世界へ行くファンタジーにも匹敵するほどの大冒険です。
優しいロージーは、魔法が解ければカーボネルが自分の国に帰ってしまうのが分かっていながらも、自分にできる限りのことをしようと奔走します。その割に、カーボネルの態度が高飛車なのが可笑しいところ。そして子供の頃に読んだ時に、「呼び寄せの呪文」のせいで、目の前のご馳走を食べられずにロージーの元へと急がなくてはいけなくなったカーボネルの怒りぶり、そして正しく呪文を使った時のカーボネルの喜びぶりが印象的だったのですが、今回読んでもその辺りがやはり楽しかったです。

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