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このページは、アレックス・シアラーの本の感想のページです。

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「13ヶ月と13週と13日と満月の夜」求龍堂(2004年1月読了)★★★★

今年12歳になるカーリーの小学校のクラスに、転校生としてやって来たメレディス。綺麗で背が高くてすらっと大人っぽいメレディスは、しかし誰が話しかけても丁寧に断ってばかり。毎日のようにメレディスを見ていたカーリーは、ある時、メレディスの「おばあちゃん」がメレディスのことを怖がっているのに気付きます。おばあちゃんが授業の終了時間よりも早く学校に迎えに来たり、他の保護者と話したりしていると、メレディスは容赦なく叱り付けているのです。そんなある日、カーリーはこっそりおばあちゃんに話しかけます。するとおばあちゃんは驚くような話を始めます。なんとおばあちゃんの中身は若い女の子で、今のメレディスに身体を乗っ取られたというのです。(「THE STOLEN」金原瑞人訳)

魔女が登場するファンタジー。物語の前半は、カーリーの1人よがりな語り口が読み辛く感じられたのですが、カーリーが「おばあちゃん」に驚くような話を聞く辺りから、ぐいぐいと引き込まれていきました。身体を乗っ取られてしまうという、思いつきそうでいて、なかなか思いつかないような設定がいいですね。物語の中の魔女といえば、すっかり年をとって醜い姿をしていることが多いのですが、それはそれだけ長い間修行をしているということでしょうし、大抵はやろうと思えば、若い女性に化けられるのでは?しかしここに登場する魔女は、なんと若い女の子の身体によって、若さを保っているというのです。
おそらく、若さの持つ無限にも感じられる時間は実はそれほど無限ではなく、今を大切に生きなければいけないというメッセージが籠められているのでしょうね。最初は自分のことばかりだったカーリーも、おばあちゃんのために親身になって色々と考えるうちに、1人よがりな部分が消えていきます。最後の自分を取り戻そうと頑張る姿がなかなか良く、予想通りの展開ではありながらも、とても気持ちよく読み終えられました。


「魔法があるなら」PHP研究所(2005年9月読了)★★★

土曜日の夕方の6時ちょっと前、大きなスーツケースを持ってスコットレーズ・デパートに来たママとオリビア、そしてアンジェリーン。これまで買い物など一度もしたことのない高級デパート、世界一素敵なスコットレーズに「新しいベッドを買うため」に来たというママの説明を、リビーは全く信じていませんでした。そして6時5分前になり、閉店を知らせるアナウンスが流れた時にママが言ったのは、「ゲームをしましょう。“ベッドの下に隠れろ”ゲームよ」という言葉。その言葉を聞いた時、リビーはママがスコットレーズに自分たちを連れて来た理由が分かります。なんと3人でスコットレーズで暮らすためだったのです。(「THE GREATEST STORE IN THE WORLD」野津智子訳)

この物語を読み始めて真っ先に思い出したのが、E.L.カニグズバーグの「クローディアの秘密」。こちらはデパートではなくメトロポリタン美術館に家出をする話ですが、普通なら夜にはいてはいけない場所にこっそり忍び込むというワクワク感は一緒。しかもこちらの舞台は高級デパートなのです。日用品から食料品からおもちゃから電化製品まで、何でも揃っています。オリビアとアンジェリーンのような子供にとってどちらが楽しいかは一目瞭然ですね。
楽天的なママ、無邪気なアンジェリーンに挟まれて、1人しっかりしてしまうリビー。能天気なママの言動にヤキモキし通しです。しかも警備員に見つかりそうになったり、朝寝坊してしまったり、ドアマンの「口ひげさん」に睨まれたり… デパート暮らしはスリル満点。読んでいる私の方も一緒になってヤキモキしてしまいますし、これ以上続いたらリビーの神経がもたないのではないかと心配してしまうほど。最初から警察の取調室で話をさせられているというのが分かっているだけに、余計にドキドキしてしまいます。しかし、いくらしっかりしているように見えても、リビーもまだまだ女の子。おもちゃ売り場に行った時など、ふとした拍子に思わず夢中になってしまうところが、その年頃の女の子らしくてとても可愛いです。
ただ、「魔法があるなら」というタイトルは、この作品には似合わないですね。読む前に魔法が出てくるお話を期待してしまっていたので、そういう意味ではがっかりでした。原題通り「世界で一番素敵なお店」の方が、余程的確で素敵だったと思います。

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