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このページは、リチャード・ヒューズの本の感想のページです。

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「クモの宮殿」ハヤカワ文庫FT(2006年3月読了)★★★★
【ご招待】…目に見えない手紙は、お城のパーティへの招待状でした。
【電話旅行】…可哀想な女の子の唯一の楽しみは、電話線を通って相手の家に行くこと。
【魔法のガラス】…人間や動物をおもちゃに、おもちゃを本物に変えられる魔法のガラス。
【ガラス玉の中の国】…戦争が嫌いな炭焼きは、行商人がくれたガラス玉の中の国に隠れます。
【庭師と白いゾウ】…スイートピーの苗を食べてしまった犯人を追いかける庭師。
【三びきのヒツジ】…緑の草が生え、池がぶどう酒であふれている場所を探しに出たヒツジ。
【クモの宮殿】…深い森に1人で住む女の子は蛇が苦手。クモに宮殿に誘われます。
【なんにも無い】…女中は朝食のテーブルにある「無い」以外の物を全て片付けます。
【緑色の顔の男】…顔が緑色に輝く男はゾウと親友になり、サーカスから逃げ出します。
【馬車に乗って】…馬車に乗っていて道を行く途中、様々なものに出会います。
【あわてもののコック】…寝られなかった少年は、こっそり台所へ。
【<王さまの足屋>】…農業に飽きてしまったお百姓が、町に行って宿屋を始めます。
【暗やみをはなつ子ども】…村はずれに住む大家族には1人真っ黒な子供がいました。
【吸入】…2人の子供は散歩の途中、ばかでかいおまわりさんに出会います。
【ピンクと緑の…】…ある退屈な学校に通っていた狆は、宿題の詩をすっかり忘れて…。
【学校】…新しく学校を作った男の先生と女の先生は、生徒を探し始めます。
【クリスマス・ツリー】…クリスマス・イヴの晩、おもちゃたちが木から下りて隠れてしまいます。
【くじらでくらして】…ある女の子がシェパードと一緒にくじらのおなかに暮らし始めます。
【アリ】…2人の息子が森から帰って来ないため、農夫は森へ2人を探しに出かけます。
【年とったおきさきの話】… 王さまとおきさきさまは、教会の綱にぶら下がって妖精の国へ。
(「THE SPIDER'S PALACE AND OTHER STORIES」八木田宣子・鈴木昌子訳)

ヒューズは日本ではあまり知られていませんが、イギリスでは非常に有名な作家とのこと。これはヒューズの初めての児童書の全訳だそうで、ごくごく短い作品ばかり20編が収められた短編集。
常識に捉われない自由な発想、細かいところには拘わらないナンセンスぶりが楽しい作品群。これらの作品は、ヒューズが友人の子供相手に即興で話して聞かせた物語をそのまま活字にしたのだそうで、そのため最初に語った時のままの生き生きとした雰囲気を楽しむことができるのがいいですね。そして意外なブラック味も。例えば「電話旅行」は、電話線を通って相手の家に行ってしまうという発想がとても楽しい作品なのですが、ここに登場する女の子は、血の繋がらない厳しく冷たい両親に育てられているという少女。こういう少女が出てくると、当然読者は小公女的な良い子を想像すると思うのですが、この少女の意外な我儘ぶりには驚かされます。そしてラストも、両親が少女のことを心配していたのか、それとも全く心配してなかったのか良く分からないようなエンディング。「ただ、女の子の髪を何度も何度もとかしてやるのでした」という結びで読者は放り出されてしまいます。必ずしも決着が着かず、収拾がつかないことも多いところは、まるで夜見る夢のようでもあります。これらの話を聞かされた子供はさぞ楽しかったでしょうね。そして言葉遊びも多いようです。(「くじらでくらして」では、鯨「ホエール」と「ウェールズ」がかけられているのだそうです)、原書で読むと楽しいのでしょうね。
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