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このページは、ケビン・クロスリー=ホランドの本の感想のページです。

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「少年騎士アーサーの冒険-1予言の石」角川文庫(2007年4月読了)★★★
12世紀末のイギリス。ウェールズとの境近くにあるコルディコットの荘園領主・サー・ジョンの息子・アーサーは、今13歳。オリヴァー神父の元で読み書きを習っており、それ自体は楽しく好きなものの、今の夢は騎士に仕える従者としての修業をすること。しかし現在16歳の兄のサールは12歳の時にロード・スティーヴンの元に修業に出してもらえたにも関わらず、アーサーが修業に出してもらえる見込みはあまりないようなのです。長弓に比べて剣の腕もあまりよくなく、兄のサールにも毎回のようにいじわるなことを言われるアーサー。しかしそんなある日、アーサーはサー・ジョンの友人のマーリンに黒曜石の石を渡されます。その石はとても貴重なもので、持っていることを誰にも言ってはならないし、知られてもいけないというのです。その数日後、アーサーが自分の部屋で石を取り出して見ていると、そこには見知らぬ情景が映し出されてアーサーは驚きます。それは伝説のアーサー王にまつわる場面でした。(「ARTHUR THE SEEING STONE」亀井よし子訳)

ガーディアン賞 受賞という少年騎士アーサーの物語第1弾。
獅子心王リチャードからジョン王へと移り変わろうとしているイギリスが舞台。13歳のアーサーはとても正義感の強い少年。本当は禁じられているにも関わらず、時々小作人の娘・ガティの仕事を手伝ってやったり、彼女の父親からかばってやったり、オリヴァー神父に向かって人間の不平等について尋ねたりするような少年です。
アーサーの日記のような体裁で物語は進んでいくため1章ずつが非常に短く、1ページだけで終わるようなこともしばしば。この1冊で100章もあるのです。そしてアーサー少年にとっての現実と、マーリンにもらった石に映し出された場面について交互に語られていきます。しかしこの時代の人々は、アーサー王伝説を全く知らないのでしょうか。アーサーの両親も「ウーゼル王」という名前を聞いてアーサーが空想の中で作り出した名称だと思っていますし、読み書きのできるオリヴァー神父ですら、「ティンタジェル」が何なのか全く分からないのです。アーサーの祖母のナインが、アーサー王の物語とは知らずに、眠れる王様の物語をする程度。読んでいるこちらが不思議になってしまうほどです。しかし石が見せる出来事は、現実のアーサー少年の出来事とリンクしています。「はざまに生きる子供」というマーリンの言葉の意味もそのうちに明かされるのでしょう。アーサー王伝説がアーサー少年とどのような関係があるのか、その人生がどのように重なっていくのかはまだまだこれから。マーリンについてもまだまだ謎だらけです。

「少年騎士アーサーの冒険-2運命の十字」角川文庫(2007年4月読了)★★★
第4次十字軍への参加を決めたロード・スティーヴンに従者として仕えることになったアーサー。しかしその話が決まった時、サー・ジョンがアーサーに話して聞かせたのは、思いもかけない出生の秘密だったのです。1200年の初め、アーサーはコルディコット荘園を後にして、ロード・スティーヴンのホルト城へと向かいます。すぐにエルサレムに向かって発つことを期待するアーサー。しかしその前には武具や戦馬を用意したり、アーサー自身や馬の訓練など、やるべきことが沢山ありました。(「ARTHUR AT THE CROSSING-PLACE」亀井よし子訳)

実の両親だと思っていたサー・ジョンとレディ・ヘレンが実は叔父と叔母であり、いつの日か婚約したいと願っていたグレイスは腹違いの妹。従者になるためにコルディコット荘園を出ることもあり、アーサーの世界は180度様変わりします。コルディコット荘園にいた頃と同じように、ホルト城での日々の様子が事細かに描かれているのがいいですね。ウェンロックの小修道院の書写室の場面もとても興味深いです。そんな日々、少しずつ大人になるアーサー。彼の正義感の強さは、ユダヤ人の金貸し・ジェイコブが死んだ時にも発揮されていますが、ガティのことなど、悪気はないと思うのですが、どうも中途半端な行動が目に付きます。
アーサーの持つ黒曜石がアーサー王の世界を見せる意味についてはまだ分かっていません。イングランドの危機にはいつま眠れる王が目を覚ますという言い伝えを元にした、少年アーサーがアーサー王の生まれ変わりだという物語なのかと思って読んでいたのですが… どうやら違うような気がしてきました。マーリンがアーサーにこの石を与えた本当の理由、そして石の中のマーリンがニムエによって閉じ込められてしまった今、マーリンもこの物語から姿を消してしまったようで、この物語におけるマーリンの存在意義もとても気になります。
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