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このページは、ジェイムズ・ヘリオットの本の感想のページです。

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「Dr.ヘリオットのおかしな体験」集英社文庫(2005年9月読了)★★★★★お気に入り
第二次世界大戦が勃発し、ヨークシャーのダロビーで獣医をしているDr.ヘリオットは英国空軍に入隊することに。厳しい訓練の合間に思い出すのは、今まで診てきた患者の動物たちやその飼い主たちのこと、そして愛妻のヘレンのこと。そして訓練の最中に生まれるはずの子供のこと。(「ALL THING WISE AND WONDERFUL」池澤夏樹訳)

今まで読んだ「犬物語」や「猫物語」と違うのは、動物のことだけでなく、空軍に入ったDr.ヘリオット自身の生活についても書かれていくこと。厳しい訓練に音を上げそうになりながらも、徐々にその生活にも慣れていく様子が綴られていきます。戦時中という暗さを全く感じさせないどころか、臨月のヘレンに会いたくて宿舎を抜け出したことや、子供が生まれた報告を2週間も後になって出して、退院した母子と共に休暇をとることを画策したことなどが、面白可笑しく書かれ、ともすれば戦争のことなど忘れてしまいそうになります。
もちろん動物のエピソードもとても楽しいです。今回は犬や猫はそれほど登場せず、家畜中心。中心となっているのは馬や牛、豚の場面ですね。治療場面や飼い主とのやりとりには、Dr.ヘリオットのユーモラスで暖かい人柄が表れており、時には失敗しながらも、動物たちのことを大切に考え真摯に治療に当たるDr.ヘリオットの姿が本当に魅力的です。それにヨークシャーの人々とその動物たちの関係も、とても暖かいのですね。犬や猫といった小動物だけでなく、馬や牛、豚といった動物たちもすっかり家族の一員のような存在となっているのが分かります。それだけに、処分が決まった時の飼い主たちの悲しさやりきれなさは辛いのですが…。可笑しかったのは、想像妊娠する動物たちのエピソード。動物にも想像妊娠があるとは思ってもみませんでした。母親になりたいのになれなかった動物たちの気持ちが切なくもありますが、やはり可笑しいです。しかし重なる時は重なるものなのですね。いいところを見せたいDr.ヘリオットの気合いが空回りしているのも楽しいです。

「ドクター・ヘリオットの猫物語」集英社文庫(2005年8月読了)★★★★★お気に入り
イギリス在住、獣医歴50年のドクター・ヘリオット。北部ヨークシャーという田園地帯に住んでいるため、どうしても牛や馬などの大型の家畜が中心となるものの、その長い獣医人生の中で出会った猫たちは数知れず。お菓子屋の主人である飼い主をじっと見守るアルフレッド、人の集まる場所が大好きで、どこからともなく集会のことを聞きつけて出席してしまうオスカー、人に決して慣れようとしないオリーとジニー… そんな猫たちと飼い主の10のエピソードをまとめた作品集です。(「JAMES HERRIOT'S CAT STORIES」大熊榮訳)

とにかく誠実なお医者さまというのが、ドクター・ヘリオットのまず最初のイメージ。ペットを飼っている人間に、そしてペット自身にとって理想的なお医者さまですね。具合が悪そうな猫を診ては心を痛め、飼い主を慰め、時には手際良く患者をシーツでくるんで治療を敢行し、命を助けるために懸命になっています。動物たちもそんなドクター・ヘリオットの愛情を敏感に感じ取っている様子。
しかしそんなドクター・ヘリオットも、彼の家の裏に住み着いた2匹の山猫、オリーとジニーだけには苦戦することになります。ドクター・ヘリオットの豊富な猫体験でも一筋縄ではいきません。置いた餌は毎日食べ、薪小屋の中に作られた居場所を利用しながらも、なかなか人間に気を許そうとはしない2匹。毎日餌を置いてくれる妻のヘレンには徐々に馴染み、そのうち撫でさせるようにもなるのですが、無理矢理捕まえて去勢手術を施したドクター・ヘリオットのことは、姿を見るだけで逃げる始末。猫好きにとって、猫に毛嫌いされることほど堪らないものはないのですね。多少なりとも猫の扱いに馴れていると自負していたドクター・ヘリオットですから尚更。1匹の猫に嫌われただけで、心底傷つき、忙しい中で好かれるための努力を始めるドクター・ヘリオットは獣医である以前に、1人の猫好きの人間なのですね。
もちろん動物のことですから、時には死も訪れます。それでも全体に流れるほのぼのとした暖かさが素敵。レズリー・ホームズさんによる挿絵もとても可愛いですね。

「アルフレッド-お菓子屋の猫」「オスカー-社交家の猫」「ボリス-逃げ足が速い猫」「オリーとジニー-うちに来た二匹の子猫」「エミリー-紳士の家に住みついた猫」「オリーとジニー-住みつく」「モーゼス-灯心草の中で見つかった猫」「フリスク-死の淵から何度も甦った猫」「オリーとジニー-最大の勝利」「バスター-ボールを拾ってくる猫」

「ドクター・ヘリオットの犬物語」集英社文庫(2005年9月読了)★★★★
イギリスのヨークシャー地方に住む獣医・ドクター・ヘリオット。獣医になりたいと思った時に本当になりたかったのは犬の医者。しかし1930年代、グラスゴー獣医大学の教授たちが重要度に応じて動物につけられた等級は、馬、牛、羊、豚、そして犬の順番なのです。最初は上司であり、のちに共同経営者となるシーグフリード・ファーノンが馬を診るのを好んでいたことから、犬や猫はドクター・ヘリオットに任されることが多くなるのですが…。そんな犬たちと飼い主の10のエピソードをまとめた作品集です。(「JAMES HERRIOT'S FAVOURITE DOG STORIES」大熊榮訳)

10のエピソードのうち、3つはパンフリー夫人のトリッキー・ウーの話。過保護に育てられたペキニーズの話が面白いですし、やはり3つも登場するだけあって強く印象に残りますね。ドクター・ヘリオットはトリッキー・ウーの体重が多すぎることを心配し、パンフリー夫人にケーキは与えないよう再三注意するのですが、夫人の答は「せがまれると、あげないわけにはいかなくて」というもの。それが結果的に犬の寿命を短くすることになるというのは薄々分かってはいるのでしょうけれど… やはり目先の可愛らしさに負けてしまうのでしょうね。しかしこのトリッキー・ウー、ドクター・ヘリオットの機転ですっかり健康状態を取り戻すことになります。この過程と、パンフリー夫人がトリッキー・ウーを引き取る時の最後の言葉が可笑しいです。あと印象的だったのは、息子たちがいなくなって以前の調子を取り戻すジョックや、どんなに悲惨な扱いを受けても人間を敵視することのなかったロイ。ドクター・ヘリオット自身が飼い、往診などに連れていった犬たちのエピソードも良かったです。読んでいると以前飼っていた犬のことを思い出してしまって少しつらくなってしまったのですが、やはりドクター・ヘリオットは素敵なお医者さまですね。

「トリッキー・ウー-過保護な犬」「プリンス-心臓病を抱えた老犬」「ジョック-車と競争する犬」「トリッキー・ウー-医学の勝利」「ジェイク-乳母車に乗った犬」「ジップ-吠えない犬」「ロイ-大変身した犬」「トリッキー・ウー-美食犬」「ハーマン-ハッピーエンド」「ブランディ-ゴミ箱が好きな犬」
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