Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、ピーター・ディキンスンの本の感想のページです。

line
「魔術師マーリンの夢-アーサー王伝説物語」原書房(2007年4月読了)★★★★
ニムエという乙女にぞっこん惚れ込んでしまい、自分の知っている全てのことをニムエに教えたマーリン。しかしそれが仇となり、マーリンはニムエに荒野の岩の中に閉じ込められてしまうことに…。というのは、トーマス・マロリーの「アーサー王の死」に伝えられるエピソード。しかしマーリンが岩の中に入ったのは、実は自分の意志であり、ニムエはそれを手伝っただけ。岩の中で、マーリンは長い眠りについているだけなのです。そして時々目を覚まし、自分の生涯のことを追想し、またしても夢の世界に漂っていくことに。(「MERLIN DREAMS」山本史郎訳)
【さまよえる騎士】…ボーソレイユという町を救うため、初めて出会った騎士に助けを求めることになった少年デイ。デイはサー・トレマリンに頼むことになるのですが…。
【石】…コカトリスが入っているという箱を持ってその村にやって来たのはスライ。宿屋の酒場でカモを待つのですが、その村の老人にしてやられることに。
【剣】…戦うことが嫌いで敵をすり抜けるため、「韋駄天王子」という仇名を付けられたリオネス国のアレクザンダー王子。しかしある時、ドラゴンの正体に気づきます。
【隠者】…路傍の宿屋で、長年会わなかった幼馴染の漁夫と司祭が出会います。
【一角獣】…父が無実の罪で捕えられ、母はその食費を稼ぐためにグリム城へ。そのためリアノンは9歳の時から森のトリュフを採るのが役目となっていました。
【乙女】…祝祭の日に何か奇跡を見ないことには食事の席に着こうとしない王のために、その日冒険の旅に出たのは、まだとても若い騎士・サー・ヒュー・ド・ラ・モットでした。
【王さま】…家族が兵隊に追い立てられ、1人残されたセリ。王さまを探しに城へと旅立つのですが、ようやく見えた城は廃墟。泣き出したセリに緑色のマントの男が声をかけます。
【スキオポド】…ヘルノ村のディッキーとドーリンが雪山の中で見つけたのは、こげ茶色の生き物。旅芸人の一座から逃げ出したその生き物にはラルと名付けられ、ヘルノで暮らし始めます。
【魔女】…森の中に住む「あの女」に子供をとられないため、長くて覚えづらい名前をつける人々。しかし子供たちは14歳ぐらいになると、森の中の城に魅きつけられてしまうのです。

マーリンのみる夢の物語にアラン・リーの挿画をふんだんに使った一冊。
アーサー王伝説物語とはありますが、アーサー王はもちろんのこと伝説に登場するような騎士も登場しないので、直接的な繋がりはありません。冒頭にはマーリンが岩の中に入るくだりがありますが、マーリンとニムエのはっきりとしたエピソードもその部分のみ。それでも中世の騎士たちの時代を彷彿とさせる雰囲気はたっぷりです。1つ1つの物語は短く、夢らしく断片的なのですが、どの物語にも幻想的。そして叙情的。特に「さまよえる騎士」で活躍するサー・トレマリンなどは中年の酒飲みで、特に勇気があるわけでもなく、高潔という言葉からは程遠いところにいる騎士。「王さま」に登場する王もそうですね。それでもなぜか特別な空気に包まれているような印象があるのです。私が特に気に入ったのは「乙女」と「王さま」。「乙女」での犬の描写はあまりにリアルで、それだけでも別世界にさまよい込んだような錯覚を覚えますし、「王さま」では、ここに登場する緑のマントの男がとても不思議で魅力的です。
Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.